キヤノン/Canon F-1

1971年3月から1976年まで生産されたキヤノンのマニュアルフォーカス一眼レフカメラでした。撮影条件に応じてさまざまなアクセサリーに対応したキヤノン初のプロ用一眼レフカメラシステムであり、最高の画質性能を発揮する新FD交換レンズ群、マウントを変えずにあらゆる測光露出制御方式に対応できる各種の連動・自動補正機構を装備し新開発FDマウントが実装されました。44軸式金属幕横走行フォーカルプレーン式シャッターであり、シャッタースピードは1/2000秒から1秒まで変更可能です。また、バルブ式シャッターも選択できます。ペンタ部は着脱可能アイレベル式ファインダーであり、倍率は0.77倍です。視野率は97%であり、スクリーンは中央にマイクロプリズム式距離計をもつフレネルマット式ですが、他にも交換スクリーン8種が完備されていました。露出制御にCdS素子使用とTTL開放追針合致中央部分測光式/TTL絞り込み定点合致中央部分測光式(中央12%部分)を採用しています。また、露出制御モードとしてシャッタースピード優先式AE(サーボEEファインダー装着時)があります。フィルム装填・給送にロックク機機構付き裏裏蓋開閉スプール差し込み式を採用しており、上部レバー180度回転可能です。また、予備角15度(小刻み巻き上げ可能)があります。フィルムカウンターとして裏裏蓋開放に連動して自動復帰する順算式を採用しており、0~40目盛りが可能です。また、フィルム巻き戻しも折り畳み回転クランク式で行えます。使用電源として1.3VのHD型水水銀電池(MR9)を採用していますが、現在ではSR43(MR-9アダプター併用推奨)で代用することもできます。大きさと質量は147×99×43mm(ボディ)、820gです。

キヤノン初代F-1の造形的美しさは、その官能的な魅力により、カメラ愛好家たちを魅了し続けています。その美しさは、単なる機能性だけでなく、感性に訴えかける芸術的な要素を持っています。まず、初代F-1のボディは、一見すると無骨で堅牢な印象を与えますが、その中にも洗練された美しさがあります。その角ばった形状は、力強さと安定感を感じさせ、同時に精密さと高度な技術を象徴しています。また、そのピアノブラックで塗装されたボディは、深みのある色合いと独特の質感で、視覚的な魅力を引き立てています。個人的には、新F-1(New F-1)と比較して、初代F-1(前期F-1、後期F-1N共に)のデザインに好感を持っています。操作部分は、その配置と形状が官能的な魅力を放っています。各ダイヤル、ボタン、レバーは、手に馴染む形状をしており、それぞれが最適な位置に配置されています。これらの部分は、見るだけでなく触れることでその魅力を感じることができます。操作するたびに、その滑らかさと確かさが手に伝わり、撮影の喜びを高めてくれます。私が所有する初代F-1の個体のシャッター音は、その響きが官能的な魅力を醸し出しています。シャッターを切る瞬間の「パシャ」という音は、成功した撮影の証であり、フィルムを装填していなくとも、その音が響くたびに私の心を満たします。

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