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デューラー【メレンコリアⅠ】 解釈の迷宮

ハルトムート・ベーメ著/加藤淳夫訳/三元社

1994年に初版刊行されたこのシリーズには他にレンブラントの【聖家族】、クラーナハの【ルター】、ピカソの【アヴィニョンの娘たち】などがある。画家のひとつの作品を中心にして、作品の生み出された意味、作品が成立した時代的背景や作家の思想的背景などを解き明かす。

特にこの銅版画【メレンコリアⅠ】は、そこに描かれたコンパスを持つ有翼のメランコリア、石臼に座しひたすら何かを記録しているようなプットー、身体を丸めて眠る犬、不可思議な多面体と球、測量道具や窓のない建物には秤と砂時計と縦横、斜めの総和が必ず34になる魔法陣。そして、背景には「MELENCOLIAⅠ」と書かれた翼を広げる蝙蝠と半円の虹、今にも水没しそうな海岸の都市に向かって落ちていく彗星などなど。

これらを図像学的に解釈し、マルシリオ・フィチーノの新プラトン主義に沿って【メレンコリアⅠ】の哲学的意味を探る。この辺りは素人には少し難解だけれど、ベーメの”中世から近代へのラディカルな転換を読み込もうとしており”、”中世の宗教的束縛から解放されて、自らの思考力によって世界を構成しようとする”(訳者あとがきより)デューラー の生きた時代を表しているという解釈は納得できるものだ。

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