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危ない写真集246 飯沢耕太郎

”写真という表現媒体が孕んでいる、最もいかがわしくスキャンダラスでありながら、どうしようもなく魅力的なあり方を示している”

僕がこの本を手に取ったのは、もう10年以上前にある会社の営業マンだった頃、都内のとある喫茶店(日中だったし、薄暗く、緊縛写真集やその他怪しい置物ばかりのテーブルではなくソファしかない、頭髪がパーマの綿菓子のようになっていたレオノール・フィニとゾンネンシュターンとスワンベルクを足して3で割ったようなおばあちゃんが奥に鎮座していた店、と記憶している)の片隅で売っていたのを見つけたからだ。

著者の飯沢耕太郎氏を詩人の飯島耕一氏と間違えるほど疲れていたと今では言い訳をしているが、とにかく飯沢氏秘蔵の内外の「危ない写真集」が246点紹介されている。この内容を詳細にわたってここに記することに迷いがあるので、とりあえず目次を拾い並べてみる。

写真集BEST38からは、「スリーピング・ビューティ」、「巨人、こびと、見世物」、「ルイス・キャロル子供の写真家」、「明治裸体写真帖」、「残酷な奥方たちの遊戯」、「ピエール・モリニエ」、「狂気」、ジャンル別として、屍体のある風景、ボンテージの愉しみと恐怖、セックス&ボディ、グロテスクの劇場、人間人形時代、などなど。勿論、日本の刺青や責め絵もある。マン・レイやハンス・ベルメールやクリスチャン・ボルタンスキー、団鬼六/篠山紀信、ロバート・メイプルソープ、森村泰昌、荒木経惟、マルセル・デュシャン、ゲルハルト・リヒター、アンゼルム・キーファーなどの写真集もちゃんと紹介されている。

本文の天地と小口を真っ赤に染めて、赤と黒を主調に装丁デザインされたこの一冊を眺めていると、これほどエロティックに残酷に不気味にいかがわしく、タブーに満ちて、血の通った人間の肉体、身体を全否定しながら”私たちの存在原理を揺さぶり、危うくする”ことにどんな意義を見出せるのか、と考えてしまう。それでも、1ページ1ページをじっと来いるように見つめる自分を発見するのだ。

あえてことわるが、自分にはこういう⁈趣味はない、こう言う世界に馴染みもない、と思う。10数年前にたまたま疲れた身体を休ませようと入った喫茶店で名前を勘違いし購入してしまっただけの本だ。ただ、こんな危ないいかがわしい写真集を情熱?を込めて収集する、この写真評論家に驚いてしまったことを思い出した。

ステュディオ・パラボリカ 2005年8月発行

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