音楽ライブ配信のための映像撮影(事前に考えておく事)

前回のnote(必要な機材)を書いてから、さあカメラや撮影の話しをしようかと思っていたのですが、ライブ配信の撮影や、新規配信環境の立ち上げなどを少しお手伝いさせていただいていて、すっかり間が空いてしまいました。

その間にも、ライブ配信に取り組むお店がどんどん増え、ビデオスイッチャーも普及してきて、マルチカメラの撮影が一般的になってきました。

私も、実際のライブ配信をお手伝いしながら、色々な経験をさせていただいておりますが、お店の規模や環境も様々であり、出演者も様々である中で、単にライブ配信と一括りには語れないなあと感じています。

環境や予算に限りがある中で、なんでも出来るという訳ではありませんから、ある程度自分の考えをまとめてから、配信に取り掛からなければなりません。そこで、具体的な撮影の話しに進む前に、ライブ配信や撮影について、色々な考慮点をご紹介しておきたいと思います。

ある程度しっかり自分のスタンスを決めておく事もありますし、その日の状況に合わせて決める事もあります。今は、あまり深く考えなくても良いのかもしれませんが、今後何か気になる事ができた時に参考にしていただければと思います。

なお、今回もリアルタイム配信(俗にいう「生配信」)を中心にさせていただきます。

1.そもそも配信するべきか

ライブ配信が活発になり、それが当たり前のように流れておりますが、ライブ配信に否定的な考えもあると思います。演奏を直接聴いてほしいという考えもあるでしょうし、ビジネス的なメリットがあるのか懐疑的な考えもあると思います。

昨今の社会情勢の中で、あまり深く考えてみる時間も無く、ライブ配信を始めたケースも多いと思いますし、まだ結論を出せるほど実績が積みあがった訳でもないと思います。

私も、このテーマについて何か明確な答えを持っている訳ではありませんが、ソーシャルディスタンスが叫ばれ、お店の席数も半減している状況の中で、観客数を確保するためには、ライブ配信によってリモートの観客を増やす工夫が必要になってきていると考えています。

一律な考えではなく、それぞれのライブ演奏の出演者や演奏内容を考慮し、ライブ配信が商業的に満足できるValueを提供できるよう、色々工夫して取り組む姿勢が大切だと思います。


2.リアルタイムである意味

音楽の演奏を鑑賞するのであれば、別に録画編集したビデオでも良い訳です。なぜリアルタイムで配信するのか、録画編集した昨日のビデオと何が違うのか、という事は、最初に考えておかなければならない事だと思います。

単に録画した動画を後で編集するのが大変だからという理由なのかもしれませんし、時間に限りがあれば、それはとても重要な事だったりします。(ライブと同時に撮影も完了するというのは、撮影者としては、とても有り難い事です。)

でも、それは、配信する側の事情であって、リモートの観客(あえて視聴者とは言いません。)にとってのメリットは何でしょうか?

・ コメントでリアルタイムに出演者とコミュニケーションできる

リアルタイムで鑑賞している観客からすると、コメントでリアルタイムに出演者とコミュニケーションできるというメリットがあります。これは、ライブ配信の1つの楽しみ方だろうと思います。

・ その場にいて生で聴いていた雰囲気を体験できる

もしライブの会場に居たならば、ちょっと上手くいかなかった事などを含めて、その場で起きた事を全て体験します。演奏者の細かい表情や仕草も、隠さずそのまま見るわけですし、場合によっては、ちょっと見ちゃいけないアクシデントを見ちゃったりする事もあったりする訳です。(ステージの脇でつまずいて転びかけたなんて位の事ですが...)

リアルタイム配信は、撮影も即興ですから、その場で起きた事を隠す余裕もなくそのまま伝えてしまいます。映像関係でも色々小さな問題が起きますが、逆にそういった事が、録画編集とは異なる臨場感を提供できているように思います。

あまり整い過ぎないのがリアルタイム配信の良さであり、過度に撮影を意識して美しくまとまったものは、かえって臨場感を削いでしまうように思います。


3.映像の役割り

ライブ配信は、音楽と映像がセットになる訳ですが、音楽のための映像なのか、映像のための音楽なのか、スタンスを決めておく必要があります。

そんなの、音楽がメインに決まっているだろうと思われるかもしれませんが、映像に凝り始めると、映像側から演奏者に色々注文を付けてしまう事があります。

プロモーションビデオを作成する場合であれば、映像的な演出のために演奏者にも立ち位置やカメラ目線など、色々と注文が付くと思います。この感覚でライブ配信に取り組むと、つい映像を作りに行ってしまいますが、ライブ配信は、その日その場で起きている事を、リモートの観客にも体験していただく事が目的ですので、映像に演出感が出てしまうとリアリティーが薄れてしまいます。

ベーシストが、カメラをじっと見つめてソロパートを演奏していたら、それはちょっと嘘っぽく感じるのではないでしょうか。

私は、事前の準備や打ち合わせも含めて、なるべく演奏者に撮影の事を意識させないようにしています。カメラの位置の説明はしますが、MCの時を除いて、カメラ目線は意識しないで、カメラの無いライブと同じように客席を見ていただくようにしています。

カメラの配置も、観客の邪魔にならないよう、客席の後ろか左右の端に置きますので、演奏者の横顔しか写せない事も多いのですが、実際の客席から見た情景も大抵そうなのですから、それがライブ感じゃないかと考えています。

映像は映像で、多少の演出はするのですが、私は、演奏者がその事に一切関わらないようにする事が理想ではないかと考えています。


4.カメラの台数

カメラの台数といっても、一台しか持っていないという状況もあると思います。カメラが多ければ色々な撮影ができますが、ビデオスイッチャーも必要になってきますので、本当にそこまでするのか、最初によく考えて見る必要があります。

私は、時として6~7台のカメラを使って撮影しますが、それでも時々、カメラ1台だけで撮影された映像に心を惹かれる事があります。1枚の絵のような背景の中で、素敵な演奏シーンが映し出されると、「やっぱり凝った映像は要らないな」なんて思ったりします。

できるだけ映像はシンプルに心掛けたいものです。ただ、カメラの台数が少ないほど、カメラの良さが、配信全体の印象に大きな影響を与えてきます。

最初は、ちょっと良いカメラを1台、その後徐々にカメラを増やして行ければ良いと思います。カメラが2台になると、1台で撮影中にもう1台を動かしたりできますので、撮影の幅が大きく広がってきます。

5. 撮影体制

撮影を何人かで行えれば、カメラの操作をリアルタイムで行えますので、少ないカメラの台数で、色々変化のある撮影を行う事ができます。一般的に、プロチームはそういう考え方で活動していると思いますが、人数が多い分、費用もかかってくると思います。

撮影側の都合を言えば、ライブ会場は無観客で、撮影スタジオのように正面に撮影機材を並べて撮影できるのは理想的です。しかし、現実のライブ撮影では、そういう状況は稀だろうと思います。客席に観客が居る場合もありますので、基本的に撮影は無人で行い、一人だけでビデオスイッチャーを操作するスタイルのほうが、様々な状況に対応できると思います。

無人撮影では、ライブ中にカメラの向きを変えたり、ズームレンズを操作したりできませんので、カメラの台数が必要となります。人件費がかからない分、カメラに費用がかかってきますが、どのような環境でも撮影できる柔軟性があります。

6. カメラの種類

ライブの撮影にあたって、使用するカメラを決めなければなりません。選ぶほどたくさんカメラを持っている訳ではないかもしれませんが、将来的な事も含めて、使うカメラの特性は把握しておく必要があります。

細かい機種などは置いておいて、次の3種類のカメラの特性と使い分けは考えておきましょう。

(1) アクションカメラやスマホのカメラ

手軽で、あまり何も考えずに自動で撮影できます。特にアクションカメラは広角で撮影がでますので、便利なカメラです。ただ、これらのカメラは、センサーサイズが小さく、レンズも小さいので、暗い場所はちょっと苦手です。

日中のように光が十分ある場合には、思いのほか綺麗な画像が撮れますが、夜のライブのように、暗い場所で撮影した場合、映像の質はあまり良くありません。無理やりセンサー感度を上げて撮影しますので、高感度ノイズの多いざらついた画像になったり、強いノイズリダクション処理の結果、平面的な(俗にいう塗り絵のような)映像になったりします。


(2) ビデオカメラ

動画を撮影するのだから、ビデオカメラでしょうと思いがちですが、民生用のビデオカメラは、夜のライブの撮影はちょっと苦手です。

良い映像を撮影するためには、思ったより多くの光が必要ですが、民生用ビデオカメラはセンサーのサイズが小さく、見た目よりレンズの実質的な口径が小さいので、十分な光を集められません。スマホのカメラよりはずっと良い映像が撮れますが、やはり高感度ノイズが目立ったり、立体感の薄い平面的な映像になりがちです。

一方、ビデオカメラは、後で説明する被写界深度が人間の目に近いので、リアリティーのある映像を撮りたい時には有効です。ドキュメンタリータッチの映像にしたい場合は、あえてビデオカメラを使うのも一つの手だと思います。

また、ビデオカメラには、高倍率の電動ズームがあり、演奏中に人が操作できる状況では、1台で色々な撮影が可能になります。


(3) 一眼レフカメラ(ミラーレス一眼など)

センサーが大きく、大口径レンズと組み合わせれば、他のカメラとは別格の映像を写します。レンズを変える事で、どのカメラの代わりにもなる万能のカメラですが、次のような欠点があります。

・ 動画撮影で実用になる電動ズームが殆ど無い
・ 手持ちの撮影がやりにくい

要するに、ライブ中に人が操作して撮影するのにはあまり向かないカメラですので、カメラを固定するか、ジンバルを使って安定させる事が前提となります。

大口径レンズで絞りを開けて撮影すると、一般的なビデオカメラでは絶対撮れない印象深い映像を撮る事ができますので、一度これをやってしまうと、深みにはまって行きます。


7.映像の方針

方針と言うと大げさですが、どういう映像を作って行くのか、方向性を決めて撮影に取り組む必要があると思います。

映像の決め事は沢山あると思いますが、映像の方向性を決めるのに重要と思われる要素をいくつか挙げておきます。

(1) 被写界深度

被写界深度とは、写真の焦点が合っているように見える被写体側の距離の範囲のことです。被写界深度が深ければ、広い距離の範囲で焦点が合い、被写界深度が浅ければ、狭い距離の範囲だけで焦点が合います。

映像の例で言えば、映画やドラマの映像は、一般的に被写界深度を浅く撮影します。主人公だけがはっきり写り、背景がぼけている映像が被写界深度の浅い映像です。このような映像は、奥行き感があり、主題を浮き上がらせて、迫力を感じさせます。普段人間の目でみる光景と違いますので、ちょっと非日常的で印象の深い映像になります。

一方、被写界深度の深い映像は、近くも遠くも、どこにでも焦点の合った映像になります。人間の目の被写界深度は深く、視界に入るものは大抵焦点が合っているように感じます。よく、パンフォーカスなんて言葉を使いますが、この言葉も、どこにでも焦点の合うた被写界深度の深い状態を意味しています。

被写界深度の深い映像は、人間の目で見たような映像となり、現実味の強い映像になります。ニュースやドキュメンタリーなどの表現は、被写界深度の深い映像が多くなります。

ライブの映像も、被写界深度によって印象が変わってきます。私は、その場の状況をドキュメンタリータッチで忠実に伝える時は被写界深度を少し深く、夢の世界に誘いたい時は、被写界深度を浅くしています。

さて、この被写界深度ですが、配信用のカメラを選ぶ時に重要なポイントとなります。被写界深度を深くするのは、光学的に簡単な事で、原始的な針孔写真機などが良い例です。アクションカメラや、一般的なスマホのカメラも、被写界深度は深い(逆に浅くできない)カメラです。(ソフトで背景をぼかして疑似的に被写界深度を浅くするスマホはあるようですが...)

業務用の高価なものは別として、一般のビデオカメラも被写界深度の深いカメラです。被写界深度を浅くするためには、大きなセンサーと、大口径で精度の高いレンズが必要で、一般的なビデオカメラの形状では無理があります。

私が、ライブ撮影にビデオカメラを使わず、ミラーレス一眼を使うのは、主にこの被写界深度の柔軟性を求めたためです。ミラーレス一眼に明るい大口径のレンズを付けると、絞り(F値)で被写界深度を柔軟にコントロールできます。一眼レフカメラの優位性が発揮される領域です。

この被写界深度が、映像の印象を左右するポイントになりますので、カメラやレンズの選択も含めて、どうして行くのか、ある程度方向性を決めて取り組む必要があります。


(2) 色合い(カラーバランス)

映像の色合いを示す表現として、カラーバランス、ホワイトバランス、色温度など色々な呼び方を使いますが、すごく大雑把に言えば、映像を黄色っぽくするか、青っぽくするかの方向性になります。(緑と赤もありますが、一旦忘れましょう。)

色温度で表現するのが分かり易いと思いますが、炎の色と温度との関係と同じように、色温度が高ければ、青っぽく、色温度が低いと黄色っぽくなります。

ただし、カメラを設定する時の色温度と色合いの関係は、これと逆になっていますので注意が必要です。カメラの色温度は、「その色温度の光のときに、自然な色になる」数値を表しているので、数値が大きいと黄色っぽく、数値が低いと青っぽくなります。

カメラによって多少違うと思いますが、一般的にカメラの標準のホワイトバランスで撮影すると、実際に目で見た色合いより少し黄色っぽく、色温度が低い(設定値が高い)ように写ります。色合いの調整方法はカメラによって色々ですが、前回私がお勧めしたGX7MK2は、カスタムのホワイトバランスを4つ定義できますし、色温度で調整する事もできます。

さて、これも私の勝手な解釈ですが、青っぽい映像は、現実感、不幸感を表現し、黄色っぽい映像は、希望感、幸福感を表現します。

北野武監督の映画作品には、「キタノブルー」と称される程青っぽい映像がありますが、強烈なリアリティー感を表現するのに役立っているのだと思います。

色合いに大きな表現力がある事は常に意識して、その日のライブに合わせて調整します。色合いの表現には、ライブ会場の照明や、演奏者の衣装なども、大きく影響しますので、毎回すごく悩みます。何度やってもなかなか答えの出ない事ですが、映像の印象を決める重要なポイントですので、研究を惜しまないようにしましょう。


(3) 色の濃さ(彩度)

色のもう一つの要素は、色の濃さ(彩度)ですが、すごく勝手で乱暴なまとめ方をしてしまうと、彩度は、対象と自分との距離を表現すると考えています。

彩度下げて薄めの色合いにすると、遠い過去や遠い未来、簡単に行けないような遠い場所などの印象が強くなります。音楽で言えば、懐メロや、もう会えない恋人などの表現には、彩度下げた映像が合うように思います。モノクロ映像は、彩度を極端に下げた状態です。

逆に彩度の高い映像は、時間的、距離的に近い印象を与えます。昨日楽しかった事、来週会う恋人の事などを表現する場合は、彩度の高い映像が合うと思います。

また、彩度は願望を表現する効果もあります。避けたいものは、彩度を低く、望んでいるものは、彩度を高くすると合うように思います。彩度を極端に高めた映像が、躍動感溢れるビビッドな映像となるのは、皆さん良くご存じでしょう。

さて、ライブ配信では、通常殆どのカメラは無人で撮影しますので、曲ごとに彩度を調整する訳には行きません。ビデオスイッチャーで全体の彩度をコントロールできますが、リアルタイム配信で、途中で映像の彩度が変化するのは、見る側の印象が良くないと思います。

その日のライブのセットリストを見て、その日のライブの全体の選曲から映像の方針を決めることになると思いますが、強いテーマがあるライブ以外は、彩度をあまり大きくいじる必要は無いかと思います。基本的にはカメラの標準設定にしておき、そのライブの方向性がはっきりしている場合にだけ少し変化させる位が無難だと思います。

(4) 明るさとコントラスト

明るさとコントラストも映像の印象を左右する要素です。

特に、コントラストは、被写界深度と同様に、リアリティーに寄せるか、夢の世界に寄せるかという方向性に影響を与えます。これもすごく乱暴に考えれば、コントラストの低い映像は、現実や事実を表現し、コントラストの高い映像は、想像や予測を表現すると思います。

この問題を考える時、次の事を意識しておく必要があります。

・人間の目は夜行性である
・人間は目で見た映像と異なる映像を脳で感じる

人間の目は、暗い所が良く見えるようにできていて、光の強さに対してリニアに感度が変化する訳ではありません。暗い所が良く見えますので、私たちが普段自分の目で見ている映像は、明暗の感度の違いが小さい(コントラストの低い)映像です。

ところが、私たちの脳は、実際より明るい所はより明るく、暗い所はより暗く記憶します。簡単に言えば、脳が見る映像は、目が感じた映像よりコントラストの強い映像になります。

明るさについても、脳が感じる時に、情景を強調するように変化します。たとえば夜のライブであれば、実際より少し暗い記憶になっていると思います。

ちょっと話題と異なる例ですが、満月がとても大きくて美しいので写真に撮ってみたら、すごく小さく写っていてがっかりしたという経験は無いでしょうか。写真に写った大きさが正しい大きさで、月は物理的に大きくなったりしていないのですが、その時の情景が、脳に月を大きく見せています。

これと同じような事が明るさとコントラストにも起きている訳で、標準設定のカメラは、センサーの情報を映像化する際、人間の脳に合わせるよう、少しコントラストを強めたりしているように思います。

ところが、画像や映像の場合はどうでしょうか。美しい満月の写真を見ても、実際より月を大きく感じる事はありません。画像や映像を見た場合は、脳はそれをさらに印象付ける修正をせず、そのまま感じるようです。つまり、ライブ会場にいる人と、配信された映像を見る人で、光の感じ方が異なるという事になります。

配信の画像は、ライブ会場にいる人の脳が感じる映像を送るべきで、そのため、現場の目で見た明るさとコントラストではなく、観客の脳が感じているであろう明るさとコントラストに調整すべきだと考えます。

カメラの液晶モニターを見て、目で見えるコントラストと同じに調整するべきではありません。夜のライブであれば、目で見たコントラストより少し強いコントラストの映像に調整するのが良いと思います。

明るさについては好みもあって難しい所ですが、ハイライトが白飛びしないようにするのは当然として、ステージの足元のテープや配線があまり気にならないようにしたいものです。

1つ注意が必要なのですが、配信ソフトのOBSのエンコーダーは、映像を少し暗く、コントラストを強くして配信します。これも脳の感じる映像にしようという親切なのかもしれませんが、撮影のモニターの映像がそのまま配信される訳ではありませんので、その変化も加味して画像を調整する必要があります。

長々と書きましたが、ステージ前の短い準備時間の中で、ライブのリハーサルを聴きながら、こんな事を色々と考えてカメラの設定を決める訳です。この映像作りが撮影者の楽しい所でもあり、苦しい所でもあります。


8.映像の演奏?

マルチカメラでライブ配信の撮影をしていると、自分がその日のバンドのメンバーになったように感じる時があります。特にジャズは即興的な面がありますし、リアルタイム配信の撮影も即興的なものですので、映像のスイッチングで先読みしたり、追いかけたり、一緒に演奏しているような気になってしまいます。

このような感覚は、こちらの勝手な思い込みなんですが、映像のスイッチングが、音楽に追加の表現を与えてしまっている事には常に注意が必要です。

映像が、ピアノやドラムなど特定のパートを写せば、観客の意識もそのパートに向きます。映像のスイッチングが、音楽の演奏とかみ合えば、その音楽の表現をより印象的にできますし、もしかみ合わなければ、観客に違和感を与えて、音楽の表現を邪魔してしまう恐れもあります。

事前に演奏者と綿密に打ち合わせし、計画にしたがってスイッチングできればあまり心配はないのかもしれません。しかし、実際の現場ではそんな綿密な打ち合わせなどできませんし、打ち合わせしたところで、即興性のある演奏は、計画した通りに進行するものでもありません。結局、映像のスイッチングは出たとこ勝負であり、演奏を聴きながら即興で行動して行く事になります。

ライブ配信の撮影が終了すると、その日の映像やスイッチングが演奏に合っていたのかどうかが、一番気になります。演奏者は、その日の映像を見ないで帰ってしまいますので、はっきり確認できない事ではありますが、自分が、演奏に勝手な表現を追加しているのだという自覚を持って、常に研究し続ける姿勢を忘れないようにしたいものです。


さて、書き始めたら、撮影前の能書きがすごく長くなってしまいました。まだ書き漏らした事がありそうですが、一旦この位にして、次回からは、カメラやビデオスイッチャーの具体的な使い方などを書いて行きたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?