音楽ライブ配信のための映像撮影(必要な機材)

コロナウィルス感染防止のための自粛が続き、音楽ライブの活動も制限される中、当然のようにネット配信の活動が広まってきました。

とりあえず、手元にある機材を持ち寄って配信を開始した方も多いんじゃないかと思います。当座はそれで良いとしても、これからコロナウィルスのリスク状態が長く続くようであれば、ネット配信でも収益を得て行く必要があり、そのために配信するコンテンツの質も向上して行く必要があると思います。

音楽配信は、音楽がメインなんだから、映像にはそう拘らないという考えもあるかと思います。しかし、良い映像は、配信コンテンツに臨場感を与え、ネットを通じていても、演奏者と観客の距離を近づけてくれるものです。

音楽活動をされている多くの皆様が、ネット配信に必要な機材やソフトウェアなどについて、急いで勉強されていると思いますが、音楽の追求を続ける傍らでできることは限られてくると思います。これから音楽のライブ配信に力を入れたいという方々に向けて、私の撮影経験から、参考になりそうな情報をお伝えできればと思います。

撮影にあまり詳しくなく、予算も限られている方向けの情報ですので、詳しい方や資金の潤沢な方は、笑って通り過ぎてください。

ネット配信は、大きく次の2つの方式に分けられます。

1.リアルタイム配信
2.録画編集した映像データの公開

どちらにするかによって、必要な機材の種類や条件が異なってきます。ここでは、これから重要になりそうな、リアルタイム配信の話しから始めたいと思います。

パソコンを使ってリアルタイム配信を行う場合、最低限次の機材が必要となります。

・ 撮影用のカメラ
・ カメラの固定器具(スタンド等)
・ HDMI出力をUSBに変換するビデオキャプチャーボックス
・ 機器間を接続するケーブル類
・ 機器に電力を供給するACアダプターやバッテリー
・ オーディオインターフェース
・ 配信用パソコン
・ 配信用ソフトウェア


もし、複数のカメラの画像を切り換えて配信する場合は、追加で次の機材が必要となります。

・ 複数のカメラの映像を切り替えるビデオスイッチャー
・ 各カメラの映像を確認するためのプレビューモニター

その他、必須ではありませんが、次の機器もあると便利です。

・ 配信画像を確認するためのモニター
・ 配信画像を記録するレコーダー

この他、オーディオ関連の機材が必要になりますが、その事は皆さん詳しいとして、ここでは映像関係の話しを中心にさせていただきます。

良い映像を追求すれば、果てしなくお金がかかってきます。しかし現実的には、できるだけ安価な機材で配信を始めたいものです。

程度の良い中古機材を使う前提で、コストパフォーマンスの良い水準として、シングルカメラの場合でパソコンを除いて10万円弱、カメラ3台のマルチカメラの場合は、パソコンを除いて30万円程度が当面の目安になると思います。

配信用機材は、一部入手困難だったり、中古品の価格が高騰したりしていますが、このノートを書いている今の時点で、比較的容易に入手できる機材を前提にして書かせていただきます。


1. カメラ選び

先ずは、撮影用のカメラ選びから始めたいと思います。

今は、スマホやタブレットPCにもカメラが付いていますので、それで済ませてしまっているケースも多いかと思います。あるいは、たまたま家にあったカメラを使っている場合や、USB接続のWEBカメラを使っている場合もあるかと思います。

他に足りないものが色々あるので、カメラの事は後回しになりがちですが、映像の良し悪しを決める最初の出発点がカメラになります。

(1)カメラの条件

私がリアルタイム配信に向いていると思うカメラの条件をご紹介すると、次のようになります。

・ FHD(1980x1080)30P以上の画質で動画を撮影できる
・ HDMIで映像を出力できる
・ 暗い所の撮影に強い
・ フォーカスと露出をマニュアル操作できる
・ WiFiかBluetoothで接続し、リモート操作ができる
・ 外部電力により長時間連続して映像を出力できる
・ ステージに設置しても目障りにならない
・ 安価で入手しやすい

これらの条件については、いずれ機会を見て詳しくお話ししたいと思いますが、今は少し先を急ぎます。

良い配信を行うためには、できるだけ良いカメラを使いたい所ですが、予算も限られますので、レンズや付属品も含めて、5万円以内で考えたいと思います。


(2) お勧めのカメラ

これからカメラのカタログを見比べて、条件に合うカメラを探すのは大変な事です。ましてや、販売の終了したモデルまで候補にすると、途方もない時間がかかりますので、私のお勧めのカメラをご紹介しておきます。

私は、パナソニック製のLUMIX GX7MK2の中古品を良く使います。十分使える中古品が、現状3万円前後(但しレンズを含まず)で入手できます。

この機種は、実際にライブ撮影を始めた頃から使っていますし、特に大きな問題を感じる事無く今も使っています。Panasonicのカメラは、ユーチューバーによく使われていて、機能と操作性が動画撮影に向いています。GX7MK2は、どちらかというと写真向きというレポートが多いですが、動画関連機能はしっかりしており、ライブ撮影に向いたカメラだと思います。

標準のズームレンズは、音楽ライブの撮影には暗くてあまり向きませんので、ボディーだけを買ってレンズは別に購入しましょう。

カメラを固定して撮影する事を前提としますので、手振れ補正機能は無くても問題ありません。

(3)お勧めのレンズ

GX7MK2はマイクロフォーサーズ規格レンズ交換式で、レンズは別に買わないといけません。ここでは、カメラ本体に3万円程度使いますので、レンズは1万円~2万円以内に抑えたい所です。

動画撮影の場合、シャッター速度の下限(通常1/30秒)があって、写真より多くの光が必要です。したがって、できるだけF値の小さい明るいレンズを使いたいのですが、明るいズームレンズはとても高価なので、ここでは、固定焦点で明るいレンズを探します。

レンズは、写したい画角に応じて選びますが、次の4種類から選べば良いと思います。

広角  :LUMIX 14mm F2.5 旧型(中古で1万円前後)
標準  :LUMIX 20㎜ F1.7 旧型(中古で1.5万円前後)
標準  :LUMIX 25㎜ F1.7 (中古で1.5万円前後)
中望遠 :M.ZUIKO 45㎜ F1.8 オリンパス製(中古で1.5万円前後)

マイクロフォーサーズ用ですので、フルサイズ換算の焦点距離は2倍になります。動画撮影時には、静止画と比べて画角が少し狭くなりますので、写真の場合より少し焦点距離が大きくなったように感じます。

最初に買うレンズは広角、次は標準、最後が中望遠と考えると良いと思います。中望遠は、大きなステージでなければ、あまり使いません。客席の後ろから全体を写す場合は、20㎜か25㎜が良いと思います。

(4)中古品の購入方法

中古品の購入方法は色々あると思いますが、不具合のある物を買ってしまわないよう気を付けなければなりません。中古ですので当然リスクはある訳ですが、私が良く買う購入先をご紹介します。

・ マップカメラ
商品の手入れが良く、状態もよく検査されていますので、信頼できます。価格は少しだけ高めになりますが、不良品を買って泣くよりは良いと思います。

・ Amazonで評価の高い業者
マップカメラより価格が安い場合が多く、また、時にはヤフオクよりも安い事も多いので、良く利用します。Amazonも比較的失敗の少ないルートだと考えています。

・ ヤフオク
出品数も多く、相場も安定していますが、時々異常な高値で出品している人もいるので、気を付けましょう。商品の状態説明がしっかりしていて、出品数の多い業者的な人は信用して良いと思います。

・ フリマサイト
基本的に相場より価格が高いのですが、時々相場を知らない人が結構安く出品したりします。ただし、不具合に気付かずに良品として出品している人も多いので、なるべく避けた方が良いと思います。


2. カメラスタンド

カメラが決まったとして、次は、ステージ近辺にカメラを固定方法を考える必要があります。無観客ライブであれば、テーブルに箱を載せて、その上にカメラを置くだけでも良い場合がありますが、色々なケースに対応するためには、カメラ用のスタンドを用意したいものです。

カメラスタンドは、目立たなく、場所を取らないものが良いと思いますので、一般の三脚ではなく、シングルポールのものを使いましょう。ベルボンのPole Podシリーズなんかが良いと思います。

スタンドには、カメラを固定する雲台が必要です。カメラを固定するライブ撮影の場合は、ビデオ用雲台は必要ありません。特にシングルポールの場合は、傾き調整のできる雲台が必要ですので、カメラ用の雲台(ボールヘッド)の付いたもの(Pole Pod EX や Pole Pod Light FREE など)にするか、雲台の無いものを買って、別途小型のボール雲台を買いましょう。

スマホ用自撮り棒でも、ボール雲台が付いていれば、ミニ三脚を付けて使えるものがあります。


3. クイックリリースクランプ&プレート

機材を頻繁に移動する場合には、スタンドにクイックリリースクランプ&プレートというものを使って、スタンドとカメラを簡単に付けたり外したりする事ができるようにすると便利です。特に慣れていない場所でセッティングする場合は、急いでカメラを交換したりしますので、必需品になってきます。

一般的に、アルカスイス互換というクイックリリースクランプ&プレートが使われるようですが、ちょっと重くて大きい物が多いのと、互換と言っているのにうまくセットできないものがあったりします。私は、ベルボンのQRA-4というセットを使っています。

ベルボンのスタンドや雲台にはこれが付いていますし、必要に応じてベースのみやプレートのみを単品で購入する事が可能です。


4.ビデオキャプチャーボックス

動画配信に必須となるパーツが、ビデオキャプチャーボックスになります。カメラからHDMIで出力される映像データを、USBインターフェースに変換する目的で使用します。次のような接続になります。

カメラ <--HDMI--> ビデオキャプチャーボックス <--USB--> パソコン

キャプチャーボックスは、結構高価ですが、ケチって変なものを買わないように気を付けましょう。安いものには、USB出力が無く、メモリーに録画する事しかできないものもあります。

HDMI FHD(1980x1080)以上の入力に対応していて、映像をUSB出力できる事が最低条件になります。その他、入力HDMIをモニター用にパススルー出力できたり、音声を一緒に入力できたり、メモリーに録画したりといった機能が付いているものもあります。

エンコードディングがハードウェア方式でないと、映像のDelayが大きくなる可能性がありますが、Amazon等で評価を見ながら、配信ソフトOBSと組み合わせて使われた実績を確認して買えば大丈夫だと思います。

私は、I/OデータのGV-US2C/HDという機種を使っていますが、今は入手困難なようです。中古品も恐ろしい価格になっていますので、他を探す必要がありますが、HSV321という機種が、ゲームプレイ配信などで良く使われているようです。

実は、このHSV321は、GX7MK2などのパナソニックのカメラと相性が良くありません。カメラのHDMI出力を認識できない事がありますが、その場合は、カメラとHSV321の中間にHDMIスプリッターを入れる事で問題を回避する事ができます。


5.HDMIケーブル

カメラとビデオキャプチャーボックスの接続には、HDMIケーブルを使用します。

HDMIケーブルは、カメラの配置に応じて必要な長さのものを用意しますが、原則は10mまでで考える必要があります。10mを大きく超えるようでしたら、途中にリピーターを入れる事を考えましょう。

3mとか5mあたりのケーブルを、延長コネクターで接続して使うようにすると、色々な場面に対応できます。

HDMIケーブルの太さは色々で、細い方が取り回しが楽ですが、安いケーブルの中には、実用に耐えないものもありますので注意しましょう。

FHDまでしか対応していないものは、実際に使うと不具合が生じる事があります。

4Kビデオ対応で、柔らかいものが良いのですが、私が使って問題無かったのは、このケーブルです。


カメラ側のHDMIコネクターは、カメラによって色々ですので、注意してください。お勧めのGX7MK2は、micro HDMIのコネクターになりますので、カメラには短いケーブルを接続し、延長コネクターで長いケーブルに接続します。

※ 最近HDMIケーブルのトラブルが多いので、原因を調べていったら、HDMIの延長コネクターに不良が多い事に気づきました。これまでご紹介していた延長コネクターではなく、もう少しちゃんとしたものを探さないといけません。(良い物が見つかったらご紹介します。)


6.電源

カメラの電源は、リハーサルでセットアップしてしてから、本番が終わるまで、ずっと電源を入れておく事をお勧めします。一度電源を切ると、せっかくセットしたフォーカスがリセットされてしまって、本番直前に慌てる事があります。

長時間連続して使用するためには、カメラ内臓バッテリーではお話しになりませんので、外部からの給電が前提となります。給電方法は、カメラによって異なりますが、主に2つの方式があります。

(1) カメラのUSBポートから給電する。
(2) 給電用の仮想電池をバッテリーボックスに入れて、外部から給電する。

残念ながら、お勧めのGX7MK2はUSB給電での撮影ができませんので、私は、仮想電池にモバイルバッテリーを接続して使っています。予定する使用時間にもよりますが、10,000mAh程度のものだと数時間使用できて使いやすいと思います。

GX7MK2には、Amazonなどで売られているGCC11という仮想電池が使えます。大抵のカメラは、バッテリーの蓋を閉めた状態でも仮想電池用のケーブルを通せるようになっています。


7.オーディオインターフェース

ここでは、オーディオの詳しいお話しはできませんが、音楽の配信ですから、音は重要ですので、少しだけ触れさせていただきます。

音については、YAMAHA AG03/06など、USBでパソコンと接続できるオーディオインターフェースで入力する形が一般的だと思います。しかし今現在は、オーディオインターフェースが入手困難で、中古でもちょっと手が出せない価格になっていたりします。

これからライブ配信をやって行こうと思うと、ここで困ってしまいますが、お店やスタジオの機材の出力をパソコンに入力するのでしたら、レベル調整機能だけのシンプルなオーディオインターフェースを探しても良いかと思います。(何れにしても、だんだん入手するのが難しくなって行く雰囲気ですが...)

もしどうしてもオーディオインターフェースが入手できないようでしたら、インターフェース変換だけの単純なキャプチャーボックスを使ったり、パソコンやビデオキャプチャーボックスにあるマイク入力を使う事も考えましょう。

配信ソフト側で、各音声入力のバランスを調整したり、ノイズを少なくしたりする事もできます。


8.配信用パソコンとソフト

配信用ソフトは色々あると思いますし、ビデオキャプチャーボックスに付いてきたりもしますが、OBS STUDIO(以降単にOBSと呼びます。)が一般的だと思います。

OBSは、Windows, Mac, Linuxで動作するオープンソースのソフトで、無料で使用できます。パソコンの選択肢も広くなりますので、ここは、時間の節約のために、OBSを前提にしてしまいましょう。

配信用のパソコンとして、どの程度のスペックが必要なのか、あまり情報が無くて悩むところです。Core i7でないと駄目だなんて情報を聞いたりしますが、実際は、そんなに良いパソコンでなくても配信はできます。

高画質で同時録画したり、画質の調整をソフト側で行ったりといった事をしなければ、古いパソコンでも結構使えると思いますので、パソコンの買い替えは様子を見てからにしましょう。

かなり古い数年前のノートパソコン(Core i5、メモリー4GB)でも普通に使えました。

私としては、パソコンよりカメラにお金をかけていただきたい気持ちです。

もし、使えそうなパソコンが無く、これから調達しようという事でしたら、Core i5以上で、メモリー8GB以上、USBポートの多いものが良いと思います。

9.USBハブとケーブル

USBケーブルは、ビデオキャプチャーボックスやオーディオインターフェースとパソコンを接続します。各機器とパソコンとの距離に合わせて、必要な長さのものを用意します。

購入した機器に付属されているケーブルが使えれば良いのですが、長さやタイプが合わない場合は、別途購入する必要があります。パソコンや各機器のコネクタータイプは色々ですので、良く見て合うものを用意してください。USBのコネクターは、TypeA/B/C、Mini/Microと色々あります。


パソコンのUSBには、マウスなども接続しますので、ポートが足りなくなる場合もあります。その場合は、USBハブを使ってポートを増やしますが、USBのパスパワーによる電力供給には注意が必要です。

インターフェース機器には、USBで電力を供給するものがありますが、パソコンの1ポートにUSBハブを使って複数の機器を接続すると、供給電力が足りなくて、接続した機器が動作しない事があります。

USB3.0のポートであれば、供給電力の事はあまり問題にならないと思いますが、USB2.0のポートにUSBハブで複数機器を接続する場合は、電源付きのUSBハブを使うと安心です。


ここまでご紹介した機材が用意できたら、ライブ配信に必要なものは一通り揃った事になります。電源タップなど、環境によってまだ少し足りないものがあるかもしれませんが、今回はこれで終わりにさせていただきます。

実際にライブ配信を行う際のカメラやソフトの設定や操作などについては、次回以降お話ししたいと思います。また、ビデオスイッチャーやOBSを使って複数のカメラの画像を切り替えながら配信する方法についても、別途お話しできればと思います。



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