音楽ライブ配信のための映像撮影(カメラの使い方)

このテーマの初回は、シングルカメラで音楽ライブ配信をするために必要な機材の説明をし、2回目は、撮影にあたって考えておく事などを中心にお話ししました。

機材を揃えたから、もう配信を始めてるよという方も多いかと思いますし、ついでにビデオスイッチャーも入手したから、もうマルチカメラだよという方も多いと思います。

まあ、そういった方々は先に行っていただいて、今回は、配信を始める人たちが恐らく後回しにしそうなカメラの話しをしたいと思います。はっきり言って、拘らなくてもそこそこの映像は撮れますし、現在の配信プラットフォームの画質では、それで良いのかもしれません。

映像も音楽と同じで、この位で良いと思えばそれで良いのです。ただ、音楽を追求してきた人なら、その先に進んだところに別の世界がある事もご存じだと思います。


1.カメラ設定の前提

さて、最初から話が少しずれてしまいましたが、先ず買ってきたカメラの設定の話しをしたいと思います。

最初に考えておくべき事は、リアルタイム配信では、撮影した映像が、殆ど補正無しに配信されるという事です。

一般的に、録画編集の場合は、撮影した後からポストプロダクションと言って、明るさや色の調整(カラーグレーディング)や、映像効果(イフェクト)を加えたりといった調整・加工を行います。したがって、カメラの使い方も、ポストプロダクションを前提とした形になります。

一般的に、ポストプロダクションを前提とする場合、彩度を下げたりコントラストを下げたりして、情報損失の少ない撮影をします。少し動画撮影を勉強すると、Log撮影という言葉を聞くことがあるかもしれませんが、こういった対数カーブの階調表現を使って、光の表現域(ダイナミックレンジ)を大きくするような撮影も、ポストプロダクションを前提としたものになります。

リアルタイム配信の場合も、ビデオスイッチャーや配信ソフトのOBSで、ある程度リアルタイムに調整できるのですが、ポストプロダクションほどの自由度はありません。したがって、リアルタイム配信時には、カメラ側でそのまま配信できる映像になるよう調整しておく必要があります。

2.マニュアルの入手

カメラを中古で入手した場合、マニュアルが付いていないケースが多いと思います。新品で買ってもマニュアルを丹念に読む人は稀かと思いますが、時としてマニュアルが悩みを解決してくれる事がありますので、入手はしておきましょう。GX7MK2のマニュアルは、次の場所からダウンロードできます。


3.電池の入手

購入したカメラに電池が付属していない場合、先ず電池を入手しなければなりません。ライブ撮影には仮想電池を使いますが、せっかくのカメラで写真を撮ったりもするでしょうから、通常のバッテリーも購入しておきましょう。バッテリーは純正品でなくても問題なく使えます。


4.バージョンアップ

カメラのファームウェアは時々バージョンアップされ、新しい機能が追加されていたりします。

GX7MK2のファームウェアの現時点の最新バージョンは、V1.3になります。GX7MK2の「セットアップ」メニューの中に、「バージョン表示」という項目がありますので、現在のバージョンを確認してみてください。もし古いようでしたら、バージョンアップしておきましょう。


5.SDカード

配信の撮影には、SDカードは必要ありませんが、これも電池と同じく、写真を撮ったり、撮影した動画を録画したりする場合は、SDカードが必要になります。

GX7MK2は、4K動画を録画する事ができます。4K撮影の場合でも時間無制限で撮影できますので、もし録画する機会があるようでしたら、少し大きめのSDカードがあると安心です。
4K撮影の場合、1時間の撮影で約60GBのメモリーが必要になります。FHD撮影の場合は、1時間で15GBが目安となります。

SDカードには、スピードクラスがありますが、4K撮影の場合は、UHS Speed Class3(通称U3クラス)が必要になります。


6.カメラの基本的な設定

カメラの使い方は人それぞれではありますが、GX7MK2を例にして基本的な設定をして行きます。Panasonicのミラーレス一眼カメラであれば、他の機種でも殆ど同じです。他社のカメラでも、似たような設定機能があると思いますので、参考にしてください。

(1) 設定のリセット

中古で買ったカメラは、設定がリセットされていない事があるので、先ず設定をリセットします。カメラ背面のMENU/SETボタンを押すとメニューが表示されますので、「セットアップ」メニューの中から「設定リセット」を選択し、全ての設定をリセットします。

設定をリセットしたら一旦電源を切ります。再び電源を入れると、「ホームエリアを設定してください」と表示されますので、日本の地域(GMT+9:00)が選択されている事を確認し、MENU/SETボタンを押します。

(2)モードダイヤル

GX7MK2などのパナソニックのカメラには、動画専用の撮影モードがありますので、まずカメラ上部のモードダイヤル(M,S,A,Pなどと書いてあるダイヤル)を動画専用のモード(ビデオカメラのような絵のある位置)にします。

パナソニックのカメラは、動画撮影時にセンサーの一部の画素しか使いませんので、写真と動画では撮影時の画角が異なります。動画用のモードだと、カメラの液晶画面が動画撮影用の画角で表示されますので、撮影前の映像確認が楽になります。

基本的に配信撮影のカメラはこの動画モードで使用します。ただし、一部、写真モードにしないと設定できない機能がありますので、その設定変更時だけ写真のモードに切り替えます。

必ずこうしなければならないという訳ではありませんが、設定をリセットした状態をベースとして、お勧めの設定を書いておきます。書いていないものは、初期状態のまま触らないでおきます。

(3) 動画モードでの設定

「動画」メニュー

・ 動画露出設定 --- M(マニュアルモード)にします。
・ AF連続動作 --- OFFにします。

「カスタム」メニュー

・ AF補助光 --- OFFにします。
・ 常時プレビュー(Mモード) --- ONにします。
・ アイセンサー --- LVF/モニター切換をMONにします。

「セットアップ」メニュー

・ 電子音 --- 電子音音量と、電子シャッター音音量を、OFF(一番下の×のマーク)にします。
・ エコモード  ---   スリープモード、スリープモード(Wi-Fi)共にOFFにします。
・ テレビ接続設定 --- HDMI情報表示(撮影時)をOFFにします。

(4) 写真モードでの設定(モードダイヤルをM,S,A,Pの何れかに移動)

動画撮影時にも有効な設定ですが、写真モードにしないと設定できないものがありますので、一時的にモードダイヤルを、M,S,A,Pなどの写真モードに回し、次の設定をしておきます。

「撮影」メニュー

・ ISO感度ステップ --- 1/3EVにします。

設定が終わったら、モードダイヤルを動画モードに戻しておいてください。写真を撮る時には写真モードにしますが、使い終わったら、なるべくモードダイヤルを動画モードにしておきましょう。

(5) オートフォーカスエリアの設定

カメラ背面にある十字キーの左側のボタンを押すと、オートフォーカスモードのメニューが出ますので、右から2番目の「1点」を選択します。

画面左下に「AFエリア」というボタンがありますので、それをタップすると、カメラ背面のダイヤルを使ってAFエリアのサイズを変更できます。通常は、一番小さなエリアにしておく事をお勧めします。サイズを変更したら、「決定」をタップします。


以上で、カメラを買ってきた時にする設定は終わりです。もうお気付きかもしれませんが、カメラが勝手に余計な事をしないよう設定しています。

さあ、これでカメラを使う準備はできました。早速ライブ会場で使ってみましょう。


7. カメラの配置

カメラを配置する際、カメラは基本的に後ろ側からしか操作できない事を頭に入れておく必要があります。笑い話のようですが、狭いステージの隅にやっと置き場所を見つけて、さあ電源を入れたら、後ろが狭くて何も操作できない事に気付いたりします。

どうしても、壁際などに設置しなければならない場合も多いので、その場合のカメラの操作は、WiFiで接続したスマホで行う事になります。Wi-Fi接続での操作については、後で説明します。

ライブ会場の環境にもよりますが、一般的に、カメラは演奏中に近づけない場所に設置する事が多くなります。演奏が始まる前に撮影を開始したら、演奏が終わるまで、カメラを直接操作する事はできない事を想定しておく必要があります。


8.レンズの選択

ミラーレス一眼で一番悩むのがレンズの選択でしょう。レンズの選択が良くなければ、結局ビデオカメラのような映像になってしまう事もありますし、映像の良し悪しを決めるのがレンズ選択だと思います。

「レンズ沼」なんて言葉がありますが、レンズを買いだすと底なし沼にはまります。それくらい、良いレンズの映像は魅力的です。

まあ、いつか余裕ができたら高価なレンズを揃えるとして、とりあえず、以前ご紹介した中古レンズから見てみましょう。(1つSIGMA30㎜を追加しました。)

広角 :LUMIX 14mm F2.5(中古で1万円前後)
標準 :LUMIX 20㎜ F1.7 旧型(中古で1.5万円前後)
標準 :LUMIX 25㎜ F1.7 (中古で1.5万円前後)
標準 :SIGMA 30㎜ F2.8 (中古で1万円前後)
中望遠:M.ZUIKO 45㎜ F1.8 オリンパス製(中古で1.5万円前後)

マイクロフォーサーズ用ですので、フルサイズ換算の焦点距離は2倍になります。また、動画の場合には、クロップと言ってセンサーの一部だけ切り出して使いますので、実質的な焦点距離は、少し大きくなります。

まあ、焦点距離と言っても、ピンとこない方も多いでしょうから、大体14㎜のレンズが、スマホの動画モードと同じ位の画角だと考えてください。

(1) 客席の後ろから撮影するレンズ

お店の広さにもよりますが、客席の後ろ(ステージから5m位後ろ)からステージ全体を撮影する場合は、20㎜か30㎜が合います。あまり奥行きの無い横に広いお店であれば、14㎜が良いでしょう。

(2) 客席の脇から撮影するレンズ

客席の脇にカメラを設置する場合、ステージの近くに設置する事が多いと思います。一般的な楽器の配置で、右のドラム側から撮影する場合は、14㎜が合うと思います。少し絞りを強くして、パンフォーカス的に使うと、ステージ全体の雰囲気を写すことができます。

(3) ピアノを撮影するレンズ

ピアノから2~3m離れて、ピアノとピアニストを写す場合は、20㎜か25㎜を使います。また、すごくピアノに近付いて、鍵盤を強調する場合は、14㎜を使うと良い雰囲気になります。

これは好みになりますが、私は、ピアニストを斜め前から撮影するのが好きです。鍵盤は写りませんが、演奏の情感が良く表現できるように思います。この場合、ピアノの前となるステージの端あたりにカメラを設置し、45㎜F1.8で撮影すると、ちょっとビデオカメラには真似のできない映像となります。

(4) フロントを撮影するレンズ

ボーカルや、フロントの管楽器等を少しアップで撮影する場合は、25㎜~45㎜を使います。対象との距離を5m位とれる場合は、45㎜、それほど離れられない場合は、25㎜か30㎜を使います。30㎜は、F2.8ですので、できれば、F1.7の25㎜を使って少し近付いて撮影したいものです。

もし、20㎜しかないという場合は、ピアノの下あたりの目だたない場所にカメラを置いて横から中央方向を撮影しても良い映像となります。


9.ズームレンズ

そもそも、固定焦点のレンズを使うから面倒になるのであって、ビデオカメラのようにズームレンズを使えば良いじゃないかという考えもあると思います。

これも、どういうレベルの映像を撮りたいかによりますが、ミラーレス一眼にも、カメラ本体とセットで売られている標準ズームレンズというものがあり、中古なら1.5万円~2万円程度と、そう高価ではありません。

私がこの標準ズームを使わない最大の理由は、レンズが暗すぎるからです。標準ズームは広角でF3.2、少しズームすると、F5.6まで暗くなります。このレンズで一般的なジャズライブを撮影しようとすると、少し明るい店内でもISO感度を1600以上にする必要があり、ノイズリダクションにより画質がかなり落ちてきます。

ISO感度を上げても、1600~2000位までなら、そこそこの画質は得られると思いますので、最初はそれで良いかもしれません。ただ、いずれ良いレンズが欲しくなるのであれば、不便でも単焦点を買う方が良いのではないかと思います。まあ、その辺は各自の判断でしょう。

ズームレンズにも、ちょっと高級なものがあり、LUMIXの場合は、12-35mm 全域F2.8というレンズがあります。これだと、ISO感度800以内で撮影でき、レンズの精度も格段に良いので、なんとも色気のある映像を撮る事ができます。私も、大きなステージの時などには、よくこのレンズを使います。

12-35mm F2.8の中古の相場は、5万円前後ですので、予算に余裕があれば、買っておいても損はないと思います。ただ、F2.8ですので、F1.7のレンズほどの表現力は得られないと思ってください。

オリンパスにも12-40mm F2.8というプロ用のズームレンズがありますが、やはりお値段もそれなりになります。こうして、段々レンズの「沼」にはまってゆく訳です。

レンズについては、永遠のテーマという事で、今回はこの辺にしておきます。


10. 電源の接続

レンズと、カメラの位置が決まったら、電源を接続してカメラを撮影用に設定します。電源は、仮想電池を使い、モバイルバッテリーか、USBのACアダプターに接続します。
設定開始から、撮影の終了まで、カメラの電源を切らないでおく事をお勧めします。特にGX7MK2は、フォーカス位置を記憶できないので、一旦電源を切ると、フォーカスの再設定が必要になります。


11.撮影時の設定

特にリアルタイム配信の撮影の場合、カメラは無人で撮影する事も多く、その場合、撮影前の設定が映像の出来映えを決めてしまいます。

カメラのメニューを見ると、色々な設定項目がありますが、特に重要なポイントをご説明します。

すごく高価な最新式のカメラは別として、まあ普通というレベルのカメラの場合、ほとんどの自動機能は、音楽ライブ撮影では役に立ちません。これは私のやり方で、そうでなければならないという訳ではありませんが、参考にしてください。

(1) 露出

動画というのは、沢山の写真を連続して撮影し、それをパラパラ漫画のように連続して再生するようなものだと考えてください。動画の画質を指定する場合、画素数(4KとかFHDなど)と同時に、30Pとか60Pとかいう表現が付くと思います。

この30Pとか60Pとかの数字の部分は、フレームレートを表し、1秒間に何枚の写真を撮ってつなげるかという事を示します。30Pであれば、1秒間に30枚の写真を撮ってつなげて動画にする訳です。Pというのは、プログレッシブという意味で、この他にI(インターレース)もありますが、今はあまり気にしないでおきましょう。

さて、動画の露出を考える時にこのフレームレートが重要になります。30Pであれば、1秒間に30枚の写真を撮りたい訳ですから、シャッター速度の下限は1/30秒になります。それより遅いシャッター速度だと、1秒間に30枚の写真を撮る事ができません。

この点が、写真と根本的に違う点で、特に光の足りないライブ撮影で露出を決める場合、シャッター速度をフレームレートに応じた値に決め、それを前提に絞りとISO感度を決めて行きます。

GX7MK2の最初の設定で、動画撮影時の露出設定を自動ではなくM(マニュアル設定)にしていますので、それを前提にして説明します。露出は、シャッター速度、絞り、ISO感度の3つの要素で決まります。

・ シャッター速度

GX7MK2の標準設定では、カメラ背面の水平方向のダイヤルがシャッター速度を変化させます。ダイヤルを回して、液晶パネル下側左から2番目の数字を30に合わせます。一般的なライブの環境では、60Pで撮影できるほど光がありませんので、60Pの場合でも、シャッター速度は30にします。

・ 絞り

絞りを決めますが、これは被写界深度をコントロールする事となって映像表現の重要なポイントになります。ライブ撮影の場合は、開放(レンズの最も低い値)か、少し絞った値(F2.8程度)に設定します。絞りは、カメラ前面(上面)のダイヤルで変化させます。液晶パネル下側左から1番目の数字が絞りを示します。

カメラの画角の中で広い範囲に焦点を合わせたい場合は、F4.0位まで絞る事がありますが、通常の環境では光が足りなくなりますので、ISO感度との兼ね合いで妥協点を見つける事になります。

・ ISO感度

これで丁度良い明るさになれば良いのですが、そういう場面は少ないでしょう。最後に明るさを調整する要素は、ISO感度になります。

シャッター速度と絞りを固定した状態で、ISO感度を変化させ、明るさを調整します。一般的なライブの環境ですと、F1.7のレンズで絞り開放した場合で、ISO感度320~800位になると思います。F2.8だと、ISO感度が640~1600位でしょうか。F2.8でISO感度が1600を超える場合は、かなり暗い店内ですので、F1.7かF1.8のレンズにしたいところです。

ISO感度は、カメラ背面の十字キーの上側のボタンを押して設定します。十字キーの上側を押した後は、十字キーの左右のボタンを押して値を変化させます。

ISO感度は画質に大きく影響し、低いほど画質が良くなります。ISO感度400と800ではだいぶ印象が変わり、ISO感度1600だとちょっと苦しい画質になります。まあそれでもスマホよりは遥かに良い画質ですので、許容範囲なのかと思いますが、1600より上は、極力避けたい所です。

もし、昼間のライブ等で光が十分にある場合には、先ずISO感度を200まで下げます。それでも明るいようでしたら、シャッター速度を少し上げます。絞りは、映像の雰囲気を左右しますので、基本的に固定しておきましょう。すごく明るい環境で、シャッター速度が早くなり過ぎる場合は、サングラスのようなNDフィルターを使って光を減らしますが、室内の音楽ライブでNDフィルターを使う事は殆ど無いと思います。

(2) カラーバランス

恐らく、露出の次に重要なのが、カラーバランスになると思います。カラーバランスが映像の印象を大きく変えますので、良く調整したいところです。

GX7MK2の場合、カラーバランスは、ホワイトバランス機能で設定します。カメラ背面の十字キーの右側のボタンを押すと、画面下部にAWBや太陽、雲などのアイコンでホワイトバランスを選択できます。

AWBがオートホワイトバランスですので、最初はそれを使っても良いと思いますが、もし、細かく調整したくなったら、次のように設定して行きます。

・ カスタムホワイトバランスの設定

ホワイトバランスのアイコンを右に進んで行くと、1~4の番号の付いたアイコンが出てきます。これらがカスタムのホワイトバランスを設定できるアイコンになります。

先ずは、1番のカスタムホワイトバランスを設定してみましょう。設定には、白い紙や白い服など、純白に近いものが必要になります。

1番のカスタムホワイトバランスを選択した状態で、十字キーの上側のボタンを押します。すると、画面に「ホワイトセット」と表示され、中央に四角い枠が表示されますので、この枠の中に純白のものが入るようにして、MENUI/SETボタンを押します。

これで、その光の状態で白い物が白く写るように設定されましたので、再度十字キーの右側のボタンを押して1番のカスタムホワイトバランスを選択した状態にし、今度は下側のボタンを押します。すると、色合いを微調整できるようになりますので、十字キーを使って、好みの色合いになるよう微調整してください。

・ 色温度での設定

ホワイトバランスをもう少し簡単に設定する場合は、色温度で指定します。ホワイトバランスのアイコンを右端まで進むと、「K」の付いたアイコンがありますので、それを選択した状態で十字キーの上側のボタンを押すと、照明の色温度を直接指定できます。光の色温度と逆に、色温度を大きくすると映像が黄色く、小さくすると映像が青くなります。白熱電球やハロゲンライトの照明の場合は、3000Kあたりが目安になるかと思います。

色温度で指定する場合も、指定した後に再びアイコンを選択し、十字キーの下側のボタンを押すと、色合いを微調整できるようになります。

(3) 彩度

彩度は、フォトスタイルという機能で設定します。

動画メニューの中に、「フォトスタイル」という項目がありますので、それでプリセットされた映像の雰囲気を選択します。メニューで「フォトスタイル」を選択すると、左右キーでフォトスタイルを変えられるようになります。

ライブ撮影の場合、フォトスタイルは、スタンダードかナチュラルをベースにすると良いでしょう。彩度はそのままで良い場合も多いですが、彩度を直接変えたい場合には、十字キーの下側を4回押すと、左右キーで彩度を調整できるようになります。

(4) コントラスト

コントラストは、次の2種類の方法で設定する事ができます。

・ フォトスタイルでのコントラスト設定

彩度のところで説明した「フォトスタイル」でコントラストも指定する事ができます。フォトスタイルを選択した後、コントラストを直接変えたい場合には、十字キーの下側を押すと、左右キーでコントラストを調整できるようになります。

明暗の差の小さいライブ会場の場合は、フォトスタイルでの微調整が無難だと思います。

会場全体が暗くてスポットライトが強く、明暗の差の大きい会場の場合は、次の「ハイライトシャドウ」を使ったほうがやり易いと思います。

・ ハイライトシャドウでのコントラスト設定

動画メニューの中に、「ハイライトシャドウ」という項目がありますので、そこを選択すると、トーンカーブでコントラストを設定できるようになります。「ハイライトシャドウ」の場合、ハイライト部分とシャドウ部分を別々に設定する事が可能です。

明暗の差の大きい会場の場合、スポットライトでハイライトが明るいので、ハイライトが飛ばないように露出を決めると、シャドウ部分が暗すぎる事があります。そのような場合、シャドウ部分のコントラストだけ弱くすると、ハイライトの露出を維持したままシャドウ部分を少し明るくする事ができます。

「ハイライトシャドウ」を選択すると、プリセットされたコントラストが4種類あって、その次にカスタムのコントラストを設定できるアイコンがあります。カメラ背面の水平ダイヤルと前面の水平ダイヤルでハイライトとシャドウをそれぞれ変化させ、十字キーの上側を押すと、カスタム設定を登録できます。

どちらの方法を使うにしても、コントラストの設定は、映像の雰囲気を大きく変えてしまいますので、あくまで微調整のレベルで設定するようにしてください。

(5) その他

もうお気付きかと思いますが、フォトスタイル機能では、シャープネスとノイズリダクションの設定も変える事ができます。通常、これらの設定を変える必要は無いかと思いますが、特定の雰囲気を表現したいような時のために、覚えておくと良いと思います。

・ シャープネスの設定

言葉の通り、シャープネスを強くすると、映像の中で人や物のエッジが強調されて少しきつい印象の映像になります。逆にシャープネスを弱くすると、全体に柔らかくて優しい感じの映像になります。
女性のお肌を美しく見せたい時は、シャープネスを弱めたりしますが、化粧品のコマーシャルじゃないので、あまり意識しなくても良いと思います。そもそも皆さん十分美しいですし...

・ ノイズリダクションの設定

デジタルカメラは、基本的にセンサーの感度を上げると、光が無いのに不規則に光を感じてしまって、それがノイズとして映像に現れます。カメラのソフトウェアが、リアルタイムにノイズを判断して異常な光を消してくれるのですが、その処理をノイズリダクションと呼びます。

ノイズリダクションは、簡単に言うと、周りとかけ離れた明るさのピクセルを、ノイズだと思って周りと同じ感じに合わせる処理です。

これを強くしすぎると、本来は、別々の色や明るさだった筈のピクセルまで均一化されてしまい、細かい凹凸などが表現できなくなってきます。極端な例では、遠くの布の目が消えて紙のように写ってしまい、人間の顔も細かい陰影が消えて、お面のように平坦な感じになってしまいます。暗い所をスマホで撮影すると、この感じが少し分かると思います。

逆にノイズリダクションを弱くすると、細かい凹凸のある物の質感が良く表現できるのですが、高感度ノイズによって、映像全体がざらついた感じになり、じっと見ると、細かいノイズがうにょうにょ動いているように見えてきます。

ノイズリダクションを強くすると、多少の美肌効果がありますが、同時に表情も薄れてきますので、大抵のライブシーンでは、標準のままでよいかと思います。

ノイズリダクションを弱くすると、物の質感が良く表現できますので、写真などでは、意図的にノイズリダクションを弱くして表現する事がありますが、動画の場合は、ノイズが動いて見えますので、ほどほどにするべきかと思います。本当に必要な時以外は、標準のままにしておきましょう。


12. フォーカス設定

さあ、これでやっと撮影できる設定となりました。最後にフォーカス(ピント)を合わせて、HDMIケーブルを接続すれば、カメラは準備完了です。フォーカスを設定したら、基本的に撮影中は変化させませんので、本当はマニュアルフォーカスのモードで設定したい所です。しかし、ライブ前の短時間で、多い時は7台のカメラを扱いますので、私は、適宜オートフォーカスを使っています。

どちらにしても、重要なのは、フォーカスを合わせる時には、対象の人が演奏する場所に居なければならないという事です。当たり前の事なんですが、カメラ持ち込みで撮影する場合は、これがなかなか難しい事になります。

大抵の場合、カメラの準備とライブのリハーサルは平行して行われます。そして、大抵の場合、カメラの配置やレンズを決め、ケーブル配線をし、映像の設定をしている最中にリハーサルは終わってしまいます。

演奏者は、リハーサルの後の僅かな時間で、食事をしたり、本番に備えた最後の準備をしたりしますから、フォーカス設定のために定位置に戻ってもらう事は避けたいところです。

要するに、人の居なくなったステージでフォーカスを設定しなければならないという状況がとても多いのです。

だれかサポートしてくれる人が居れば、その人に立ってもらう事もできますが、演奏者としては、本番前に他人がドラムやピアノに座る事は嫌でしょうし、ベーシストの立ち位置にはウッドベースが置いてあったりして、そう簡単にはいかないものです。

毎回それなりに苦労するのですが、私は、人が立てない場所のフォーカス設定は、次のようにしています。

・ ピアノは、鍵盤の中央にセット
・ ドラムは、ドラマーの頭の位置と大体同じ距離になるシンバル等にセット
・ ベースは、立ち位置と同じ程度の距離にある楽器の部分にセット

その他のパートは、実際に誰かに立ってもらいますが、サポートしてくれる人が居ない場合は、自分がその位置に立ち、Wi-Fiでカメラをリモート操作してフォーカスをセットします。

撮影のミスで、一番残念なのは、フォーカスのずれです。セットしたつもりでも、少しずれていると台無しになってしまいます。被写界深度の浅いレンズの場合は、特にフォーカスはシビアですので、風船に棒を付けて、演奏者の位置に置いたりできないか、真剣に考えている所です。

管楽器の場合は、演奏者と楽器が離れますので、どちらにフォーカスをセットするか、迷う事もあります。通常は管楽器の上部(顔に近い部分)にセットしますが、アップで撮影する場合は、楽器の中央あたりにセットして、顔を少しぼかしても良い感じになります。演奏中フォーカスを固定する場合は、無難な顔優先のフォーカス設定にします。

女性のボーカリストを撮影する時は、ほんの僅かだけフォーカスをずらしてセットする事があります。3m位離れた場所から撮影する場合であれば、マイク辺りにフォーカスをセットすると、肌が少しふんわりして、美肌効果があったりします。


13. Wi-Fi接続でのリモート操作

無人ライブ撮影をする場合、カメラはどうしても壁際に配置する事が多くなります。また、無人とは言っても、ライブ途中でリモートからフォーカスや露出を変更したくなる場合もあるかと思います。

Panasonicのミラーレス一眼は、スマホをWi-Fiで接続し、スマホのアプリから動画撮影に必要な操作を行う事ができます。リモート操作を行う場合、スマホにImage APPというアプリを導入しておく必要があります。

接続する手順は、次のようになります。

(1)カメラの「セットアップ」メニューから、Wi-Fiを選択します。
(2)次のメニューで「Wi-Fi機能」を選択します。
(3)次のメニューで「新規に接続する」を選択します。
(4)次のメニューで「スマートフォンとつないで使う」を選択します。
(5)カメラの影響にIDが表示されますので、スマホの側で、Wi-Fiをカメラに接続します。
(6)スマホのImage Appを起動します。
(7)初回は、カメラ側に承認の画面が表示されますので、「はい」を選択します。次回からは、承認は必要なくなります。
(8)スマホのImage Appで「リモート操作」をタップします。
(9)スマホ側にカメラの映像が表示され、操作が可能になります。

環境にもよりますが、Wi-Fiで接続するカメラの台数は、4台位が限界と考えてください。カメラの台数が多いと、Wi-Fiのチャンネル競合(干渉)がおきて、リモート操作が殆ど機能しなくなります。

エコモードで、Wi-Fiの接続時間を無制限にしていますので、スマホ側が切断しても、カメラ側はWi-Fiのチャンネルを使用し続けます。もうWi-Fi接続の必要が無くなったら、次の手順でカメラ側のWi-Fiを停止しておいてください。

(1)カメラの「セットアップ」メニューから、Wi-Fiを選択します。
(2)次のメニューで「Wi-Fi機能」を選択します。
(3)カメラに、「Wi-Fi接続を終了しますか?」と表示されますので、「はい」を選択してください。

Wi-Fi機能をFnキーに割り当てておくと、もっと手軽にWi-FiをON/OFFできるようになります。

Wi-Fi接続し、カメラのフォーカスモードがマニュアルフォーカスになっている場合、スマホの液晶画面でフォーカスの送り操作をする事ができます。ドラマの撮影のような滑らかなフォーカス送りはできませんが、手前の人物から、奥の人物に、フォーカスエリアを移動すると、フォーカスがそちらに合うようになります。

カメラの後ろ側から操作できなかったり、ライブ前にフォーカスをセットできなかったりする場合は、Wi-Fi接続を使って、リモートからカメラを操作するようにしましょう。


だいぶ長くなりましたが、ライブ撮影に最低限必要と思われるカメラの扱いや設定等をまとめてみました。

この後、パソコンやビデオスイッチャーとのケーブル接続や、オーディオオフセットの測定等、配信までにやる事がまだありますが、カメラはこれで使える状態になったと思います。

次回は、ビデオスイッチャーの事などを簡単に書いてみたいと思います。


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