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匠の手

【近未来予想図 2021年3月未来予想イベント向け記事】

1. はじめに

3月の未来予想イベントテーマは「夢のある人機一体と、実現した未来を予想する」です。

「人馬一体」は聞いたことありましたが、「人機一体」は無く、さっそくGoogle先生に聞いてみると、「株式会社 人機一体」というロボットを開発している会社の記事が見つかりました。

記事1 日本経済新聞「動き繊細 ロボは分身 人機一体の人型重機」より

操縦者は、ロボットの頭部カメラの映像をVRゴーグルで見ることで、自分がロボットになったような感覚になります。さらに左右のレバーを動かすと、ロボットの腕が動き、同時に検知した反力が操縦者にフィードバックされるため、操縦者は自分の体の様に直感的にロボットを動かせるみたいです(記事中の動画を4:05あたりからご覧ください)。ガンダムよりライディーンに近い操作感なのでしょう?どちらも乗ったことはありませんが。

この「人機一体」を生み出しているのは、映像も重要ですが、レバーにフィードバックされる反力の影響が大きいと思います。特に手に伝わる感覚は重要で、かなりの情報が脳に伝えられているはずです。

今回は「手に伝わる感覚」について夢想・妄想し、未来想像したいと思います。

2. 人馬一体

近未来予想図サロン内には、今回もブレスト用スレッドが立てられ、テーマについて色々な意見が交わされていました。その中でメンバーのかちさんより、こんなご意見が。

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そう、人馬一体といったらマツダロードスター、間違いありませんキリ

何を隠そう、私もロードスター乗りでした。この動画は2009年頃にNA8ロードスターで筑波サーキットのコース2000を走った時の車載動画です。

動画1 筑波サーキット コース2000 第2ヘアピン NA8 ロードスター

サーキットを限界で走らせるときは、味覚以外の全ての感覚を使って走るわけですが、動画でも忙しく手が動いている通り、「手に伝わる感覚」は非常に重要です。

コーナー手前でブレーキングし、ヒールアンドトゥ※1を使い、4速→3速→2速と素早くシフトダウンするのですが、実は4速→(待ち)→3速→(待ち)→2速と一瞬の待ちが入っています。変速する際、エンジンの回転数と次のギアの回転が同じにならないと変速できません。ヒールアンドトゥでアクセルをあおり回転を積極的に合わせますが、自動車のトランスミッションには、変速時にギアの回転を同期させる「シンクロメッシュ」という仕組みが入っています。※2

先ほどの「待ち」はシンクロメッシュが回転を同期させる時間で、シフトレバーを次のギアゲートに軽く当てて待っていると、すっと引き込まれる感覚が手に伝わり、その瞬間にギアを入れると素早くスムースに変速することができます。この「待ち」を無理して、キアを無理やり叩き込むと「ギャン」という音がしたり、ギアが入らずはじかれ、トランスミッションを痛めたり、最悪壊します。

シフトダウンが終わると、次はステアリングを切り始めます。この時もステアリングから手に伝わる感覚で、フロントタイヤのグリップを探りながら、じわーっとステアリングを切り込んでいきます。このステアリングの切り込み始めでは、まだブレーキは踏んだままでフロントタイヤに荷重を掛け、リアタイヤの荷重を抜いて、旋回力を上げるようにしています。手でステアリングに伝わるグリップの高まりを感じながら、足はブレーキを徐々に抜いていきます。動画ではステアリングを最大に切り込んだあたりでブレーキから右足を離してすぐにアクセルに右足を乗せて踏み始めます。

ここからコーナーからの立ち上がりです。リアの動きに注意しながらアクセルを徐々に開けつつ、手でフロントの動きを感じながらステアリングを徐々に戻していきます。動画では途中でアクセルを開け過ぎた為、オーバーステアーが出てリアが流れています。この時、手に感じるフロントの動きからオーバーステアが出ることを察して、スキール音が出る前にカウンターを当てています。そしてオーバーステアーが収まり、ステアリングを真っすぐにしてアクセル全開で立ち上がっています。

ロードスターの「人馬一体」とは、視覚、聴覚、嗅覚に加え、触覚である手で車からのフィードバックを感じながら自分の意思を車に伝え走らせることと思います。

なお、ロードスターの前は、AE111レビンでサーキットを走っていました。このころはまだ車からのフィードバックを受け取れず、強引に走らせていました。その結果がこれです(2005年頃)。「人壁一体」となりました😅

動画2 筑波サーキット コース1000 最終コーナ入り口 AE111レビン

※1 シフトダウン時のギアの回転合わせの為、つま先でブレーキングをしながら踵でアクセルをあおるスポーツ走行のテクニック。これが上手にできないとマニュアル車でサーキットを早く走れませんし、回転合わせないシフトダウン繰り返してトランスミッションを壊します(壊しました)。

※2 レースカーではドグクラッチを使ったノンシンクロメッシュのトランスミッションが使われます。クラッチを切らずに素早くシフトできるらしいですがシフトダウン時はもちろんシフトダウン時も完璧な回転合わせが必要になります。自分はそんな恐ろしいもの使ったことありません。

3. 鍵開け師

「人馬一体」の例は、所詮素人ドライバーの例でしたが、次はプロの方の例です。先日あるテレビを見ていたら、手の感覚だけで金庫を開ける「鍵開け師」の方が出演されていました。以下は、YouTubeにアップされていた金庫ダイヤル解錠の動画です。

動画3 生活救急車ちゃんねる「【内部映像あり】金庫のダイヤル解錠(手探り)【家庭用金庫】」より

ダイアル錠の構造は、下記の動画の通り、ダイアルに直接つながっているのは一枚目のプレートのみで、他のプレートはピンで押されて回っている構造です。決まった回数、決まった角度、決まった方向に回すと、プレート同士がピンで押し回され、最後は切り込みがそろって解錠されます。

動画4 こーじチャンネル「ダイヤルキーの仕組み、内部構造を解説する【物理エンジン】」より

この切り込みを揃える回し方を、動画3では特別な道具は使わず、手の感覚だけで開けているようです。詳しい方法の説明はありませんが、おそらく左手でレバーを動かし、右手でダイヤルを回しながらプレートの切り欠き位置を、両手に伝わる感覚だけで探っているようです。

金庫の設計者も、簡単には切り欠き位置がわからないように色々対策をしているようです。例えば、一枚だけ他のプレートより直径を大きくして切り欠きの当たりをわかり難くする、レバーの遊びを極力なくして感覚が伝わらない様にする等です。

それでも動画の「鍵開け師」の方は、極わずかに手に伝わる感覚から、鍵の構造を理解して開けてしまうみたいです。まさに「匠の手」だと思います。

4. 匠の手

他にも「匠の手」の例を探してみると、金属加工もミクロンオーダになると、機械加工では精度が出せず職人の手の感覚頼りになるようです。

記事2 株式会社ジートライズ社ホームページより

2.の解錠技術や記事2の加工技術などの高度な技術は、後継者の育成には時間が掛かりますし、後継者の資質・センスにも依存すると思います。また、1.の純ガソリンエンジンのマニュアル車によるスポーツドライビング技術も、純ガソリンエンジンのマニュアル車が絶滅危惧種となっている今、保存していくべき技術と考えます。

そこでVerandar-Kは短期間で確実に技術を記録し保存するための装置を考案しました。

触覚学習装置「匠の手」です。

匠の手

写真1 触覚学習装置「匠の手」(試作品)

技術を記録する職人の方に「触覚検知グローブ」「ヘッドギアー」を付けて作業を行って頂きます。「触覚検知グローブ」は、一見普通のニトリルグローブに見えますが、非常に高感度の触覚検知センサーが組み込まれており、職人の方が感じる触覚情報を余すところなく収集することができます。「ヘッドギアー」はこれまたヘッドマッサージ器に見えますが、職人の方の脳波情報を検出することができます。特に触覚情報を処理する脳の頭頂葉の情報を高感度に収集します。

収集された触覚情報や脳波情報は「AIコントロールユニット」に送られます。「AIコントロールユニット」は、送られてきた大量の情報をリアルタイムにストリーム処理し「匠クラウド」に蓄積していきます。

学習の度合いは「学習ブースト計」で示されます。最低でもブースト0.85までの学習は必要で、できればブースト1.2以上であることが望ましいです。そこまでの学習度合いに達するには、技術の難易度により違いはありますが、30から50時間程度必要です。

このように「匠の手」を使えば、非常に簡単かつ短期間で職人の技術を学習することはできますが、問題はその「再生」です。「匠の手」には記録した技術の「再生」機能はありません。

技術の「再生」には、繊細な手や指の動きを再現できる「ロボット」が必要です。また、視覚、聴覚、嗅覚センサーも備え、記録・学習された触覚情報と融合させながら作業を行う高度な制御も必要となります。このような「ロボット」はまだ世の中にありませんが、将来開発される可能性はあると思います。

更に未来では記録した技術を、直接人間の脳に送り込み「匠」になってしまう事もできるかもしれません。スマホアプリみたいに「レーサー」とか「鍵開け師」とか選んで、自分の脳にダウンロードし「再生」させるわけです。映画「マトリックス」に「カンフー」技術をダウンロードして、主人公が対戦するシーンありましたね。

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「カンフー」技術をダウンロードした人のイメージ(いらすとや https://www.irasutoya.com/より)

「再生」技術が実現できる未来に備えて、高度な技術を記録・学習させて蓄積しておくことは非常に重要です。

Verandar-Kは、失われていく職人の技術を後世に残すべく、触覚学習装置「匠の手」の開発を進めており、β版を2021年4月1日(木)より提供開始予定です😁(ちょっと早いか?)

以上

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