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20240428 『LAWSON presents 高垣彩陽&豊崎愛生 2マンライブ2024 “twinklux”』の感想

開演前の話

今回のライブ、これまで参加してきた中でも、一番曲を聴き込んだり、気持ちを作ったりせずに参加することになったライブだったかもしれない。

本日は開演1時間前くらいまで仕事をしており、会場に向かう電車の中では、付け焼き刃で予習しても仕方ないと思って銀杏BOYZを聴いていた。

立川、地元にほど近いこともあって、文字通り自分のほとんど全部を豊崎愛生さんへの感情と、彼女の歌う音楽が占めていた高校3年生の頃のことを思い出す。

当時の俺からみたら今の俺はファンとして不誠実に見えるのかもしれない。

それでも、今の俺は今の方が好きだと確信していて、当時の俺もそれを譲れないことは変わらないと思うので、ジャックナイフを持った当時の俺と対峙したら、敬意を表してステゴロでお相手せねばならない……。(何の話?)

開演時間20分前に友人と合流する。

彼とは高校時代からの長い付き合いなのだけど、本当に仲が良くなったのは高校を卒業した後のことで、卒業後に『けいおん!』にハマった彼が、俺が豊崎愛生さんが好きだったことを覚えていてくれて、一番くじを引きに行こうと立川で遊んだことがキッカケで、様々なライブを共にするようになった仲だった。

20代の頃は始発で物販に並んで、会場に入る頃には寝不足とライブに対するテンションでおかしくなっていて、まだ始まってもいないのに連番者への感謝の気持ちを告げ始めたり、あたふたして飲み物をこぼしたりするのを友人にたしなめられるのが定番のやりとりになっていた。

お互い32歳になり、先日結婚した彼は「指輪見せようと思ってたのに」と結婚指輪を付け忘れてきたことを悔いていたり、どうみてもファンの高齢化が進んでいるという話が完全にブーメランとして自分たちにも突き刺さったりしていると、すぐに開演時間となる。

かつて熱く燃え滾っていた感情は穏やかに凪いでいて、彼にとっても俺にとっても、それぞれに豊崎愛生さんやスフィアに対する感情は変化していた。

それでも、彼女への想いが繋げてくれた関係性は、14年経ってもここに在り続けていて、それが何よりも嬉しいことに思えた。

豊崎愛生さんのパート

ライフコレオグラファーからライブは始まる。

愛生さんはライブタイトルの通り、衣装には色とりどりの宝石があしらわれ、大人っぽい手袋をした出で立ちで登場する。

転んじゃうかもだけど
リスタートしてみようかな

ライフコレオグラファー - 豊崎愛生

1曲目に選ばれたのは、このライブがリスタートを決意するステージだったからだと思っている。

立川ステージガーデンでこの二人のライブをするのであれば、かつてを思えば争奪戦になっておかしくないキャパシティの箱だと思うが、今回3階席は使われておらず、お世辞にも超満員というわけではなかったと思う。

会社の方針や、演者・ファンそれぞれの生活や環境の変化も当然あるとはいえ、ライブや新曲リリースのペースが落ちているのは、どうしても集客や売上といったシビアな問題がついてきているからなのだろうとも思う。

それでも、だからこそ、リスクを背負ってステージの上に立ち、ライブをすること以外に現状を打破する方法はないともずっと思っていた。

大人になればなるほど痛みを知って、転ぶこと自体を避けるために動かなくなってしまう。

かつてとの様々なギャップを受け入れた上で、それでもステージの上で歌うことを選んだ先にあるライフコレオグラファーのように感じた。

豊崎愛生さん自身のリスタートへの覚悟を歌ったからこそ、ライブ全体の1曲目に相応しい意味を持ち、ツーマンの相手である高垣彩陽さんへのメッセージにも成りうる1曲目だと感じた。

2曲目はCheers!

Cheers!はなんぼ聴いてもイイ曲ですからね……。(好きな豊崎愛生さんの楽曲暫定一位)

ライブという場所での再会を祝しての乾杯。大人っぽい衣装とも良くマッチしていて、観客席との再会と、高垣彩陽さんとの再会との二つの意味があったのではないかと思う。

3曲目のはtrue blue。

事前から、ライブとしては久しぶりな曲を歌うという宣言があったけど、まさかこう来るとは思っていなかった……。

大人になるほど
どうしてだろう
畏れてしまうんだ
失ってはじめて
ほんとの「たいせつ」に
気がついてしまうんだ
碧く 深く どこまでも…

true blue - 豊崎愛生

俺個人の話をすると、大学4年生の頃に発売された2ndアルバム『Love letters』に収録されている1曲で、土日が休みではない企業に就職が決まった後に、この曲を聴いて「これまで通りではいられないかもしれない……」ということに初めて気づいて、本気で落ち込んでしまった記憶と結びついている。

今思えば就職前に気づくべきめちゃくちゃ当たり前のことだし、会えなくなったわけではなかったのだけど、そのくらいの変化も恐ろしいほど、当時は豊崎愛生さんへの感情が危ういものだったのだ。

ただ、この日のtrue blueは、10年越しで初めて自分とは切り離したところで聴くことが出来た気がする。

その会社で働いて、半休取って来たライブだからね……。

でも、あの時の悲しさは、あの時の俺にとって何よりも切実なもので、これもどれだけ時間を重ねても失われることなく残る青春の痛みだったのだと、今だから感じる。

自分から離れたところから聴いたら、こんなにいい曲だったんだな……と10年越しに改めて気づかせてもらった。

4曲目は銀河ステーション

大人になって、ようやく自分自身と強烈に結び付けるライブの観方が変わったみたいな話になりそうだったのだけど、ちょっと銀河ステーションが来ちゃったので無理だった……。

俺自身もこの曲をCheers!とかtrue blueほど強烈な結びつきがあった自覚がなくて、なんで、なんでこんなに大好きという気持ちが溢れてしまうのだろうと思っていたのだけど『RE:cycle of the PENGUINDRUM』を経て初めての銀河ステーションだったからかもしれない。

あの映画で、サソリの炎に身を焦がした少女が10年越しに伝えてくれた「きっと何者かになれる」という言葉に、俺は大きく背中を押されていた。

寂しさを胸に締まいながら、強い意志を持って踏み出す一歩の歌でもあり、先ほどのtrue blueに感じたこととの繋がりにも思うところがあったのかもしれない。

直近にたくさん聴いていたわけではないのに、いつのまにか生活の中に溶け込んでいて、己の人生と急に重なる瞬間がある。

これまでも、俺がライブで勝手に受け取ってきた一番大切なものの一つで、それが変わったわけでは無かったのだなと思う。

5曲目叶えたまえ……。叶えたまえなんすよね……。(これも全く予想していなくて崩れ落ちた)(最近は大体何でも崩れ落ちているという説もs瑠。

スフィアの4人の中で、唯一どんな状況でもソロのライブを絶やさず続けてくれていたのが豊崎愛生さんだった。

そんな今の豊崎愛生さんだからこそ、伝えることを諦めないこの曲のメッセージが、これまで以上に説得力を持って響き渡っていたように思う。

新しい夢を探しに来たのよ
気が付いてるでしょう?

叶えたまえ - 豊崎愛生

同時に「新しい夢」を探し、見つけに行く、ライフコレオグラファーから流れているリスタートというテーマ性の中にある曲でもある。

それを受けて歌われたのが、豊崎愛生さんパート最後の6曲目一千年の散歩中

この曲を歌う前のMCで、愛生さんは我々に向けてと共に大切な友人へのエールとしてこの曲を選んだと話していた。

「さあ僕らは何もない
だからこの手にはこれからもなんでも出来る」
とあなたが教えてくれた
あなたに会いに行こう
約束も何もないけれど
私の手には道で集めた花束がある

一千年の散歩中 - 豊崎愛生

「僕らは何もない」と。何もないからこそ、これからなんでも出来るのだと、自らの楽曲に込められた想いでエールを送る。

新たな始まりを祝福して、青く深い悲しさも胸にしまい込み、伝わる時が来ると信じて“あなた”に会いに行く。

彼女が積み重ねてきた人生が、立ち続けてきたステージが、言葉以上に雄弁な想いを届ける。

俺はそんな彼女の姿が大好きで、憧れで、届けられたたくさんの言葉を、いつか返せるようになりたいと思ったから、創作を始めたことを思い出した。

長い時間が経ち、形や熱量は変わっても、もがき、苦しみ、叫びながら、その瞬間の全てをぶつけてきた感情は、変わりが利くものでもなければ、簡単になくなるものでもない。

心の中で今もなお光り続けている大切な感情を、宝石箱を開けるように思いださせてくれるような、そんな素晴らしいステージでした。

高垣彩陽さんのパート

一千年の散歩中のエールを受けて、デビューシングルの「君がいる場所」2ndシングルの「光のフィルメント」で、高垣彩陽さんが5年半ぶりのソロのステージに戻ってくる。

君がいるから どこでだって
何度転んでも 笑える

君がいる場所 - 高垣彩陽

光のフィルメント
全てをこの身体に刻み
歩き出すここから

光のフィルメント - 高垣彩陽

スフィアのソロの時間、その歌唱力で圧倒してきたあやひー。

第一声を聴いて、鳥肌が立つ感覚。戻って来たんだなと嬉しくなってしまう。

もともと、スフィアのソロライブでもあやひーの歌唱パートでサイリウムを振ることはほとんどなかった(歌をしっかり受け止めたいと思っていたから)し、最近は声優さんのライブに参加してもサイリウム自体を振ることが少なくなっていた。

だけど、この日ばかりは、ずっと待っていたことを、またステージで歌を聴くことができて嬉しかったことを何としても伝えたくて、思いっきりピンクのサイリウムを振っていたし、周りもそうだったように感じる。

言葉では伝わり切らない感情を観客席から何とかして伝える術として、改めて助けられたような気がする。

3曲目は、その歌唱力がいかんなく発揮される愛の陽。

もし私にほんの少しでも
何かが残せるのだとしたら
今を生きる時間のペンで
魂に綴られた歌

愛の陽 - 高垣彩陽

技巧が求められるこの曲の堂々たるパフォーマンスは、改めて歌を歌い続けるという力強い宣誓のようにも思えて、そのことがすごく嬉しかった。

左隣の人が恐らく高垣彩陽さんのファンの方で、感極まって涙しているのをみて、俺もあやひーの曲たちに少なからず心を震わされてきたものとして、分かる……分かるよ……とお兄さんに共鳴して涙してしまっていた。(何?)

シンフォギアメドレー、Lasting Songで爆発的な盛り上がりを見せた後に、リリースから約3年が経って、ようやくあやひーの作詞曲Dear Oneがライブでの初披露される。

自分自身についての歌詞を書くというのは、すごく難しかったです。自分のイヤな部分を掘り下げなければいけないし、言葉にしないままでいたぼんやりとした感情や、ぐちゃぐちゃにからみ合っていた悩みを全部ほどいて歌詞にしていかなければいけなくて。書けない時期がずっと続いて、社会人としてあるまじきことなんですけど、2回締め切りを破りました(笑)。

【インタビュー】高垣彩陽がソロデビュー10周年を記念して、ベストアルバム「Radiant Memories」をリリー

リリース当初から、本当に苦悩の末に生み出された歌詞であることを話していた1曲。

だからこそ、これまでのあやひーの楽曲の中でも異質と言っていいくらい泥臭く、譲れないものと逃げられないものに溢れていて、俺は大好きな曲の一つでもあった。

この曲を歌う前にも、ここまでのパフォーマンスに対して悔しいこともたくさんあったと話していた。

お願い
挫けそうになっても
諦めずに信じ続けて
紡いだかけがえのない日々を

Dear One - 高垣彩陽

何もないところの真っ白なところからの再出発。

俺自身、年齢を重ねるごとに、もう一度新しく始めることが何よりも難しいことがわかるようになってきた。

常に俺よりもお姉さんであり続けている二人なら、尚のことだろうと思う。

5年半という大きなブランクが空いたにも関わらず、出来る出来ないことも全てさらけ出して、ステージに立つことを選んでくれた。

そして「必ずまた会いましょう」という約束をくれた。

Dear Oneをライブで披露して、自身の最後の曲に据えたのは、この先にまた絶対に会える日が来ると、諦めずに信じ続けているからこそなのだとも思った。

二人での歌唱パート

アンコール後は二人での歌唱となり、1曲目はletter writer

letter writer!?

豊崎愛生さんの代名詞の一つでもあるこの曲を誰かとデュエットで歌う日が来るとは全く想像していなかったので膝から崩れ落ちてしまった。(全曲崩れ落ちている2)

2ndアルバム『Love letters』のリード曲で、アルバムを締めくくる曲でもあるのだけど、曲順としてはtrue blueの直後という位置関係でもあって、この曲があったから俺は「大丈夫」だと思えたお守りのような曲でもあった。

あやひーの歌が重なることの貴重さ、面白さもありつつ、あやひーの歌唱力があるからこそ「やっぱり豊崎愛生さんの曲なんだな」という想いもあった。

これまでにリリースされた楽曲を聴く中で、ファンそれぞれが楽曲と過ごした時間や景色を思いだすようなライブだったように思うので「幸せは街と息をして歌になる」という歌詞がすごく響くパフォーマンスだった。

2曲目は夢のとなり

夢のとなり!?

letter writeと同じく、この曲はこの曲であやひーの声でしか想像できず、一番美味しいところであり、技巧が求められるパートはあやひーが請け負うような歌割りだったのが印象的だった。

愛生さんの歌声で「夢に届くまで どれくらいですか?」と、優しくささやくように歌うところでウッ……となってしまった。

あやひーの楽曲の中でも、特に好きで大切に聴いていた曲の一つだったので、このデュエットは聴き逃していたら墓場まで後悔する案件だったかもしれない。black hole / 豊崎愛生の悪夢を繰り返さなくて良かった……。

3曲目はクラムボンのミトさんがサプライズゲストで出演されて、ライブタイトルでもあるトゥインクルクスが披露される。

ミトさんが話していた「豊崎さんや高垣さんが紡いできた人と人との繋がりが重要だと思ったから、riyaさんに声をかけた」というエピソードが印象的だった。

隣にいる友人も、会場にいるファンの皆さんも、それぞれの事情でここに来れなかったファンの人たちも、それぞれの生活の中で、音楽を聴く中で想いを繋げることが出来る。

ミトさんがベースを弾き、クラップで音楽が生まれていく。その繋がりこそがトゥインクルクスという楽曲が持つ意味で、宝石の輝きなのだと思った時、この曲のことがもっと好きになった気がする。

そういう繋がりを大事にした楽曲だからこそ、ちゃんと物として残る盤として発売されることが発表されたのがとても嬉しかった。

最近気づいたんですけど、配信という形だと、誰かに教えることはできても、受け渡すことが出来なくて、俺はその差は結構大きいものだと思っている。

しかも、カップリングが『See You Tomorrow』『私の時計』「See You Tomorrowと私の時計!?!?!?!?!?!?」って目をひん剥いてしまった。

特に、私の時計を豊崎愛生さんが歌う日が来るとは思っていなかった…………。一番好きなあやひーの曲なので、あまりにも嬉しすぎる…………。

ライブの最後を飾ったのは春風 SHUN PU。

ピンクと緑の楽曲でもあり、この曲が歌われないことはないだろうなとも思っていた。

豊崎愛生さん、前回の寿美菜子さんのツーマンと同じく、久しぶりにソロのステージに立つ二人へのお膳立ての意味も込めて「私のステージは前座だから」と謙遜気味に話していた。

でも、両ライブとも豊崎愛生さんの楽曲のデュエットで締めたのは決して偶然ではなくて、ここまで誰よりもステージを守り続けてきた豊崎愛生さんの楽曲が一番の共通言語になっているからだと思っている。

君と願い待ちわびた日に
咲いた咲いた桜の花が
ひとつふたつみっつよっつと
幸せ祈って春が舞う

春風 SHUN PU - 豊崎愛生

今年もまたこの曲を歌って再会することが出来た。

CDのリリースという未来の話が聞けたことも嬉しい。

想いの形は変わっていて、熱量も当時とは違う。

それを認めた上で、俺はただ何となくここにいるのではなくて、その瞬間、その瞬間に、自分の意志で、ここにいることを選び続けたのだと思った。

かつてジャックナイフだった頃の俺はファン歴が何年ということをアピールしたり、されたりするのが一番嫌いだった(時間そのものに意味はないから)のだけど、受け取ってきたいくつもの文脈が重なりあった今回のライブくらいは、15年もここに居続けることを選んだ自分のご褒美のように受け取ってもいいのではないかと思った。

同時に、そうあれたのはかなり危ういバランスだった俺と一緒にライブに行って想いを共有してくれた友人たちであったり、言葉をみつけて見出してくれた人たちであったり、何よりも15年間この場所に立ち続けている豊崎愛生さんであり、高垣彩陽さんのおかげなのだとも強く思った。

そう気づいた時に、これまで受け取ってきたものとはまた少し違う形で、今も持ち続けている自分の夢に向けて、もっと頑張りたいと思えた気がする。

想いの形は変わっていて、熱量も当時とは違うけれど、この場所が今でも俺の青春なのだと思いました。

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