15階にいる
今。15階にいる。
避難しろと言われて県をまたいでここまできた。
今の社会情勢から宿泊者がほとんどいないホテルの最上階の部屋に通してもらった。
夜景が綺麗な部屋の出窓で体育座りをしてみている。
私はここにいる。
外出自粛のこの世の中で、最上階の夜景の綺麗なホテルにいることが、これから先の見えない未来について考えることが、それから君がここにいないことが悔しくて泣いた。
私は君に会いたい。
眼下に広がる世界で片っ端から1人ずつ確認したとして、世界中の全員を確認し終えても君にはもう2度と会えない。こんなことがあっていいのか?
私はこんなにも君に執着心があるならば、どうでもいい相手と結婚なんてしなければよかった。
君だけを想って生きていけばよかった。
でも、できなかった。
君の死に向き合うことができなかった。
君だって逃げたんだから、私も逃げさせてくれ。と思っていた。
君の死を受け止め切れなかった。
私は物凄い早さで逃げた。
君のご家族に合わせる顔が見当たらない。ごめん。
結局「こんなはずじゃなかったと」思い続けた結婚生活は泥沼。
生きる気力もなかった私は一転。逃げなければならない程の相手のおかげで人らしさは取り戻せたのかもしれない。
けど。私たちはなんのために生きてる?
私はまだこの答えが分からない。
未来に命を繋げる意味があるのか。
こんな世界の未来へ子孫を残す理由はどこにあるの。
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