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ジャンピンジャックフラッシュのスピードについて考察

GW最終日、いかがお過ごしでしょうか?

ところでもう観ました?YouTubeで上がってる5月2日のニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェスティバル2024のストーンズのステージ。

いやあヤバいですね。ミック80歳ですよ80歳!このキレのある動きと衰えない歌唱力、彼は本当に人類なのでしょうか。我々が想像する80歳像とあまりにも乖離していますね。

これをポストしたところ、多くの反響をいただきました。「ミック若い」(若くはない笑)、「超人」などの反応と共に「遅なったんちゃう?」

はい、間違いなく遅くなっていますね。今回は、同曲のライブにおける演奏スピードについて考えてみたいと思います。

ジャンピンジャックフラッシュとは

言わずと知れたローリングストーンズの代表曲の1つ。サイケに彩られたフラワームーブメントを越えて、本来の持ち味であったブルースに根差したロックサウンドへと回帰した作品…とよく解説されるが、単純にカッコいいロックナンバーの一つとして語られることが多い。

中1の時、友人に連れられてストーンズのライブ映画を観に行ったが、宙に舞う大量の風船とゴム人形のようなミックジャガーだけが印象に残り、曲が全く刺さらなかった。ビートルズが好きだったあの頃の私の基準から言って「ストーンズ雑でつまらん」

中2で初めてストーンズの新曲「アンダーカバー」を聴くが、危険な香りはするものの「これがストーンズ?」

翌年、レーベル移籍以降のベスト盤「リワインド」がリリースされ、実質初めてストーンズを聴くことに。細かいことはわからんが「ストーンズカッコいいやん」
その後すぐにそれ以前のストーンズが聴きたくなり、デッカ時代のベスト盤をレンタル(「ゴールデンプライズ」というもっさいジャケットのやつ)。ここでジャンピンジャックフラッシュ(以下「JJF」)に出会う。頭を「ジャカジャーン!」とぶん殴られた。

その時からJJFは、私の中でカッコいい曲の象徴であり続けているのだ。

JJFスピードの歴史

JJFは、リリース以降ステージでは欠かさず演奏される人気曲である。そして、そのライブバージョンのスピードは時代と共に変わる。

この記事を書く前提としてJJFのライブバージョンの速度(BPM)を調べる必要がある。私はDJをしていないので曲のBPMを積極的に意識することはあまりない。ネットを見ると、曲単位でBPMを記載したサイトは見つかるが、同じ曲の10曲以上のライブバージョンのBPMを調べて記載している変人はいないようだ。そこで自分で調べることに。

今回使ったツールは2つ。1つ目はSort Your Music

Spotifyのプレイリストを読み込むと、BPMなどのデータを表示してくれるのだ。便利なものがあるね。早速JJFだけでプレイリストを作り、読み込んでみる。ほー、便利だわこれ。私のような変人にはお誂え向きのツール。

ただ1つ大きな問題が。
SpotifyにJJFのライブバージョンが全部揃ってないやないかーい。
仕方ないので残りはYouTubeを使ってBPM Finderなるサイトで調べることに。

その結果を年代順に並べたのがこのスプレッドシート。

ほほう。数値化するとその変化の歴史が明らか。L&Gで10上がったBPMは、ライブ活動最盛期である1973年から1982年にそのピークを迎える。ナスティ、サムガールズ、ハンプトン・リーズは全て同じ156で最高速。何度も聴いていた感覚からこれは納得。

久々にライブ現場に復帰したスティールホイールズでは150を下回り、だんだん速度を落としながら、BTBで遂にスタジオバージョンのBPM137を下回ってしまう。

その後、何度か速度は回復するものの、先日のニューオリンズ、BPMは最低速度タイ記録の126に。

スピードとアレンジの違いがもたらす印象

JJFは、スピードの違いはもちろんだが、アレンジの違いで印象がかなり異なる。

スタジオバージョンと1969ライブバージョンのBPMの差はたった1だが、全く印象が違う。

最大の違いはビルワイマンのベース。ライブでビルはギターリフと同じラインを弾いている。これがJJFぽさを強調しているといえばそうなんだけど、デフォルメされた雰囲気が個人的には戴けないのよね。

ギターに関しても違う。スタジオバージョンはオープンEの半音下げであるところ、ライブではレギュラーチューニングでプレイされている。キースがステージで頻繁にギターを取り替えてるのあまり見たことないし、単純に面倒なんだろうね。然程変わらないようにも思うけど、オープン半音下げのほうがダークな感じ聴こえるし、何か好きなのだ。

ライブ活動がノリに乗っていた1973年、BPMは遂に最高速の156をマーク。いやあ、速い速い。

ギター2がテイラーからロニーにチェンジし、長年にわたるライブ最盛期を迎えたストーンズは最高速をキープ。

ラブユーではパーカッションがのんびりした雰囲気を醸し出すものの、やっぱり最高速で突っ走る。

サムガールズやリーズではチャーリーのドラムがスッタカタカタカと忙しないことこの上ない。

ミックとキースのドンパチを経て仲直りしたスティールホイールズでは、最高速から7落とすものの、体感ではかなり速く思えたし、チャーリーのドラムの入り方が前のめりで疾走感としては個人的にピカイチ。それにエンディングが全バージョン通して一番カッコいい。しかもこれ、初来日の東京ドーム公演を収録、燃えたなあ。

ビルの脱退後、ダリルジョーンズが加入し、JJFのアレンジに最大の変化が現れる。ベースラインがギターリフに追従しないオリジナルスタジオバージョン風にプレイされるのだ。印象が全く違う。こっちのほうが動きのあるサビのベースラインが映えるし、曲にメリハリが出て好みなのよね。

バビロンでは、126と速度が急に下がる。おいおい、まだまだ行けるやろ、と言いたいところだが、まあこれはこれでアリなのよね。このライブから10年も前にそれに気づいてはいたんだけど、それは後述。

ビガバンでは142まで速度が回復。ストーンズ、まだまだいけるぞ。

しかし、GRRRで最低速度までは行かないものの、かなりスローな131をマーク。まあ体力的に仕方ないことではある。でも遅いのは遅いのでカッコいいんだぜ。いや、もっと遅くてもいいぐらいだ。2年後の東京ドームではこのJJFがオープニング。私が行ったストーンズのライブオープニングで一番鳥肌だった。

そして先日のニューオリンズ。ロックは死なないということを現実に目の当たりにした素晴らしいステージだった。BPMは126。

JJF、速くないといけないのか?

では、JJFは果たして速くないといけないのか。その答えは1986年、レディソウルにより出されている。

ソウルの女王アレサフランクリンは、ロックの王者ローリングストーンズ最強のトラックを映画のために録音する。それもキースとロニーと一緒に。BPMはストーンズの全バージョンを含めても最低速度の123。

アレサのカバー、オリジナルのような疾走感は全くないが、速度を落とし地を這うようなドッシリとしたグルーヴが無敵感を醸し出し、JJFに新たな命を吹き込んでいる。なんならオリジナルよりもこのアレサのカバーが好きかもしれない。遅いJJF、痺れるほどカッコいいではないか。

先日の私のポストしたJJFに関して「ジャンピンジャックブルース」と表現された方がいた。その通りだ。
JJFはサイケに塗れたストーンズを再びブルースに回帰させ、80年代にはアレサフランクリンからブルースの命を注入された作品。80歳になったミックの貫禄のステージ、最高にブルースを感じた。

おわりに

JJF、カッコいいですね。たぶん個人的にこれを超えるカッコいい曲は出てこないと思いますね。

ここでストーンズのトリビアを一つ。
上でストーンズのライブ映画で宙に舞う大量の風船が印象に残ったという話を書きましたが、これをモチーフにしたヒット曲があります。ネーナの「ロックバルーンは99」。

メンバーの一人がストーンズのドイツ公演を見に行った時に、宙に舞う風船を見て「これが東ドイツに飛んでいったら爆弾と勘違いされるかも」と想像したことから生まれたらしいです。それだけのインパクトがありますね。

当のストーンズもなかなか凄い。あの夥しい風船の中、キースはステージに上がった不審者をギターで殴り倒し、その後平然と演奏を続けるというね。

来年の来日公演が待ち遠しいですね。それではまた。

2024.5.10.加筆

アレサのJJF、ドラムがスティーヴジョーダンだったの全く触れずに記事を書き終えてしまった。アレサと演った当時のグルーヴではなくなってるんだろうけど、先日のニューオリンズでの安定感と安心感はここから来てるのね…と思いきや、年末のNYCのシークレットはスティーヴを感じるグルーヴだったわ。改めてスティーヴ、グッジョブ。

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