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【CHC】鉄腕”Happy Hector”~ノースシカゴを幸せにするために~

お疲れ様です、イサシキです。

1000年ぶりくらいに飲みの席へと顔を出し、気持ちよくなって帰ってきた28日午前0時過ぎ、ESPNのインサイダーであるジェフ・パッサン氏よりこんなポストが投稿されました。

昨年アストロズとの2年1700万ドルに付与されていた1年850万ドルのプレイヤーオプションを破棄してFAとなっていたベテランリリーバー:ヘクター・ネリスが、カブスと1年900万ドル+900万ドルのべスティングオプション+αの合計2325万ドルで契約合意に達しました。

カブスのFA選手補強は先日の今永昇太投手に続いて2人目ハイレバレッジで登板できる投手が限られてシーズン後半に大失速する要因の一つになってしまったリリーフ投手駒不足の解消に一役買うのみならず、後述するタフさ年齢を重ねてもなお進化をし続けるボールカブスのブルペン陣を支える存在になってくれるだろうとのファーストインプレッションをイサシキは残しています(他人事)

今回はそんなネリスに関するあれこれです。

Hector Nerisという男

ネリスはドミニカ共和国出身の34歳で、今季6月で35歳になるメジャー11年目のベテランリリーバー。フィリーズ時代の2018年には8月の月間最優秀リリーバー、そして記憶に新しい2022年にはWS制覇を成し遂げたアストロズのブルペンをセットアップとして支えました。

投球の約半分を占めるフォーシーム右打者のインコースをズバズバ抉るツーシーム、そして打者の目線を変えて沈ませるスプリットを武器に、ここまで通算546試合に登板。通算ERAは3.24と優秀で、イニング数541.1回に対して676奪三振をマークするドミネートぶりも魅力と言えるでしょう。

このネリスの代名詞ともいえるスプリッターは、球速こそ82MPH前後ではあるものの、打者の膝元ギリギリからストンと落ちるフォークボールのような軌道を描きます。左右関係なく空振りを奪う能力に長けており、昨季のWhiff%42.2はMLB全体7位の好成績球速だけではないこの投球術は、昨季スプリッターに活路を見出して勝ちパに入ったマーク・ライター・ジュニアにも通ずるところがあるかもしれません。

近年では投球の約40%強を占めていたスプリットを30%台まで減少させ、代わりに5%前後スライダーの割合を増やすなど、投球幅を広げてスプリッターの宿命でもある抜け球の痛打に対するリスクヘッジに努めている印象も受けられます。現に昨季のERAはキャリアハイの1.71ベテランになっても一線級のリリーバーでいられる所以かもしれませんね。

また、3年連続70試合登板などといった登板数の多さやハイパフォーマンスを誇りながら、MLBでIL入りしたのは短縮シーズンとなった2020年の1回のみと、そのタフネスぶり彼への信頼度を上げる大きな要素です。

とはいえBABIP.219インプレー打率のことLOB%90.5残塁率のことはかなりの劇場型フォーシームの球速が1MPHほど低下し、BB%もフィリーズ時代に逆戻りしたかのような水準となっており、昨季の活躍がこれらの危ない綱渡りによって成し遂げられたものである可能性も否めません。先程紹介した昨季ERA1.71と比較してFIPが3.83というものですから、昨季の上振れ分が従来の実力だと期待してしまうと「アレ?」となってしまうかもしれません。

ただ長年MLBでハイレバレッジでの登板を経験した百戦錬磨の存在は、今のカブスにはない貴重すぎる代物。素晴らしい経歴を持つリリーバーの補強は文句のつけようがないものだと感じています。

「3年5000万ドル」からの急転直下劇

ネリスジョシュ・ヘイダー(アストロズ)アロルディス・チャップマン(パイレーツ)デービット・ロバートソン(レンジャーズ)らが名を連ねたFA市場でもトップTierに位置する選手として挙げられており、いずれもAAV1000万ドル以上の契約を勝ち取ったメンツです。そしてネリス本人(代理人)も、今月中旬には3年5000万ドルを求めているとの報道もあり、少なくとも複数年契約は確実という雰囲気は漂っていたでしょう。

当初はヤンキースを中心にネリス獲得に興味を示していましたが、35歳で不安要素も少なくないリリーバーにこの額を要求されてしまうとどの球団も獲得に二の足を踏んでしまうのはよもや当たり前の感情でしょう。そもそもあの報道そのものが飛ばしのような気もしますが…。

そんな中で、仮にあの報道が事実だったとしたら、大幅なディスカウントを引き出したジェド・ホイヤー氏の粘り勝ちと言っても過言ではないでしょう。

<契約詳細>

まずは先述の通り、市場予想から大幅なディスカウント価格で獲得できたこと、そして2025年のクラブオプション60試合登板でプレイヤーオプションへと変更できるようにしたべスティング方式により、ネリスの年齢と不安要素を包括した契約になったんじゃないでしょうか。

実質2年契約と捉えている方もいると思いますが。個人的には現状のカブスリリーフ陣であれば、「意図的な操作カウンセルはしないはず」がないとネリスの登板は60試合を超える可能性が高く、なおかつ良い成績を残せばプレイヤーオプションでのオプトアウトは必須でしょうし、たとえ球団側としても60試合登板に到達しなければその成績に応じてネリスの処遇を決めれば良いだけなので、リスクヘッジに富んだ内容とも言えそうです。リリーバーだけでなく、どれだけデュラブルな選手でさえもどこかでケガを負うリスクはありますしね。

ノースシカゴでのポジションは

ネリス獲得後のFanGraphsによるデプスチャートでは、セットアップのポジションにネリスの名前があり、クローザーは昨季同ポジションを務めたアドバート・アルゾライがそのままの状態となっていました。

個人的にもネリス8回、アルゾライ9回は賛成です。確かにクローザーを務めてきた実績はネリスに軍配が上がりますが、ここ数年はセットアップの立ち位置に配置転換されているわけですし、何より四死球も多いタイプなので安定感のある9回を実現させたいのであればアルゾライの方が良いのかなあと。そしていざピンチの場面でスクランブル起用されるとなれば、やはりその「火消し」に向いているのはより支配的な投球を期待できるネリスだと思うので、昨季ブレイクしたジュリアン・メリーウェザーと共にブルペンを支える役割を期待したいと思います。

ベテランリリーバーはカブスの要

再建に入った2022年以来、カブスはベテランリリーバーをFA市場から安価に獲得して再生させ、TDLで他球団に売って良い見返りを得てきた過去があります。ここ数年では、それこそロバートソンをフィリーズにトレードしてベン・ブラウン(2023年MLBプロスペクトランク全体86位)を獲得したり、ヤンキースにトレードされた変則右腕のスコット・エフロスの見返りとして、昨季開幕ローテを勝ち取ったヘイデン・ウェズネスキを獲得したりと、このあたりのムーブメントは非常に優秀と言えますし、ブルペン運用もそのような形でベテランと若手を融合させる手法をとってきました。

今季も大車輪の活躍を期待したいアルゾライメリーウェザーライターJr.に加え、注目のプロスペクトであるルーク・リトルダニエル・パレンシアらを束ねる存在が必要だったカブスにとって、昨季のマイケル・フルマーブラッド・ボックスバーガー以上にインパクトのある存在を獲得できたのは僥倖。カウンセル監督にとってもブルペンオプションが増えたのはその采配を十分に生かすためのものとなるのではないでしょうか。

本人のXも既にカブス仕様となっており、ネリスの獲得に現地ファン含めて非常に盛り上がっている状態です。

タイトルにもあるHappy Hectorネリスのニックネーム(アメリカの絵本の名前でもあるらしい)。そのニックネームのように頼れるピッチングをカブスでも披露し、ファンを幸せにしてくれる存在になれるか注目しましょう!


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