【CHC】Hoyerのやりたいことが見えてきた件について(4月時点)
お疲れ様です、イサシキです。
最近はリビルドモードの試合ばっかり視聴していて正直うんざりしていたシカゴカブスさんも、ここまでは格上とみなされる相手に互角以上の戦いを繰り広げており、久しぶりに観るのが楽しいと思えるシーズンが帰ってきています。
そんな中、シーズンオフから燻っていたNico Hoerner、Ian Happとのエクステンションがシーズン開幕後に発表されるなど、カブスファンにとって嬉しいニュースも続いている状況。オフシーズンから続く怒涛のトランザクションは、編成総責任者のJed Hoyer氏が目指すチームビジョンを透かしているように思います。
今回はそのような動きと彼らの発言を踏まえつつ、自分なりに考察してみたことなどを述べる回となります。
トレンドに逆行したFA補強とエクステンション
オフに大量のFA選手を補強したカブスですが、その大半が1~2年契約となっており、5年以上の長期契約を結んだのはDansby Swansonのみという結果になりました。
しかもそのSwansonですら同じショートでFAイヤーを迎えたCarlos CorreaやTrea Turner、Xander BogaertsよりもAAVが若干見劣りするというコントラクトです。もちろんこの4人の中ではSwansonが最も安い契約に落ち着く予想であったことを考慮しなくてはなりませんが…。
2022シーズンオフの特徴として、契約年数を長くしてAAVを抑える(一種のぜいたく税対策)という契約、またはエクステンションが乱発されたことを挙げるMLBファンも多いでしょう。先に挙げたショートの市場はその最たる例で、TurnerやBogaertsは40歳を超える年齢までの雇用となっており、実質終身契約と言っても過言ではありません。また6年契約に落ち付いたCorreaでさえも、フィジカルの問題をクリアしていれば少なくとも10~13年程度の契約を手に入れていたわけなので、このオフのトレンドは終身契約型のぜいたく税対策といっていいでしょう。
しかし今オフ最多の10選手をFAで獲得したカブスは、ハイクオリティの選手を破格の契約で迎え入れるのではなく、短期的な契約+高AAVでバウンスバック狙いの選手(EX:Cody Bellinger、Trey Mancini、Eric Hosmerなど)ばかりをかき集める手段に打って出ました。
さらにこの間エクステンションしたHoernerのAAVは$11.6MMと、FAを1年だけ買い取っただけの小規模な契約でありながら、ハイフロアタイプのアベレージヒッターに対して割と高めな契約で囲み、Happに至っては3年$61MMとAVVが$20MMを超えてくる大盤振る舞いぶり。もちろんそれに伴って2024年以降のペイロールは増加していくのでチーム運営的にもロースターロックが起こりやすい状況を作り出しているともいえます。
ここ数年の球場周辺の再開発やCovid-19による収益の大幅減などで世界一に導いてくれたコアプレイヤーとのエクステンションに失敗して流出させたフロントが、なぜここへきてフランチャイズプレーヤーの囲い込みや積極的な補強に乗り出し始めたのでしょうか。
そのひとつの理由として、次の章で挙げられる事象が関係しているのではないかと考えています。それは、
Hoyerの見据える先は2026年?
ということです。
現在複数年の契約を結んでいるのは、3年のエクステンションに応じたHoernerとHappに加え、2022年からの5年契約を結んでいる鈴木誠也。2023年から7年契約を結んでいるSwanson。同年から4年契約を結んでいるJameson Taillonの5名で、その他相互オプションやオプトアウト、クラブオプションを保有する選手が複数名います。
上記に個人名を挙げた選手に共通しているのは、Swanson以外2026年に契約が満了してFAになるという点です。
Taillonは満了時に35歳を迎えるシーズンになるので更なるエクステンションの可能性は低いと思いますが、Hoernerは29歳、Happと鈴木誠也は32歳とまだ主力として計算できる可能性の高い年齢でFAを迎えることになります。
Hoyerが見据えているのは、この2026年までにコンテンダーの地位を確立してワールドシリーズ制覇を目指すチーム作りをすることではないでしょうか?
現に先日エクステンションした2選手についてHoyer氏が語った際には明確に「(Swanson、鈴木誠也と共に)2026年まで保有できることに喜びを感じている」といった趣旨の発言をするなど、チームのコア4として彼らを扱っているようにも思えます。
またインタビューの中にもある通り、Hoyer氏は以前よりHoernerとHappのメークアップを非常に高く評価しており、オフシーズンにも再三に渡って2選手とのエクステンションを進めたい考えを示していました。
そしてHosmerやManciniといった選手も以前所属した球団ではメンターとしての役割を果たしていた存在。クラブハウス内の秩序を作り上げ、チームとしてのあり方、そしてシカゴカブスという球団をまた一から作り直していこうとする考えが透けて見えるムーブと言えるでしょうか。
かつてはKris Bryant、Anthony Rizzo、Javier Baez、Kyle Schwarberらを擁して2016年に108年ぶりの世界一に輝き、5年後もナ・リーグの覇権争いのトップに君臨し続ける王朝、いわゆる"Dynasty"を築くであろうと言われたチームでも、その後はワールドシリーズ進出すらできなかったという現実を見てきたHoyer氏。その後前任のTheo Epstain氏からチームの長期的舵取りを任され今年で3年目。自身の思い描く「コンテンダー」の形が今年だとすると、明確にわかることは
”Dynasty”を築く礎は走塁とセンターラインの守備にあり
ということかもしれません。
走塁に関してはすでに昨年より積極的な盗塁やケースバッティング、スクイズでの得点が増加しており、中でも盗塁数はリーグ2位の111。まるで今シーズンからのルール改正で3インチ大きくなったベース拡大を予期するかのように機動力を売りにしたチーム作りに励んでいました。というよりそうせざるを得なかったと言った方がいいでしょうか。
しかし今年は明確に積極果敢な走塁と盗塁が見られる日々。盗塁はMLBでもトップ争いをするHoernerを中心としてナ・リーグトップの21個(4月20日時点)。BsR(総合走塁指標)は0.6とMLB全体で見ると平均的ですが、昨季-1.6を叩き出していたころに比べると1.0↗できているのが現状です。
そして守備も決して優れた指標とはなっておらず、UZR、OAA共にマイナスで守備範囲の狭さなどが気になる内容となっています。しかしDRSは4とプラスの値。結果的に失点を防ぐ守備というのが実践できている証拠ではないでしょうか。
そしてそれを支えているのは間違いなくセンターライン。ショートのSwanson、セカンドのHoerner、センターのBellingerはそれぞれDRS、OAA共にプラス指標と盤石の体制。
キャッチャーもYan Gomesを正捕手に位置付けてFA加入したTucker BarnhartとノンテンダーFAになっていたところを拾って開幕ロースターに入ったLuis Torrensの3人体制を維持しており、技巧派投手が先発する時にはGomes、本格派の投手が先発するときはBarnhartという棲み分けをきっちりとしています。この部分の采配はさすが元捕手のDavid Rossといったところでしょうか。
というように、打撃を軸に据えてチームを作ることから守備のリズムを整えて打撃に活かすという狙いも見て取れるかなあと思います。
まだ4月なので
とはいえシーズンが始まってまだ3週間程度。これからのカブスがどんな戦いをするか、そしてHoyer氏の見据える先にどんなチームビジョンがあり、それをどのように遂行していくのか、注目してみたいと思います。
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