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【CHC】2023トレードデッドラインまとめ

お疲れ様です、イサシキです。

2023年8月2日午前7時(日本時間)をもって幕を閉じた今年のトレードデッドライン。全体を見ればレジェンドクラスのマックス・シャーザーとジャスティン・バーランダーが揃ってメッツからトレードされたり、レンジャースやエンゼルス、マーリンズの積極的な買い姿勢などが印象深かった一方、愛する家族のためにドジャースへと決まった取引を拒否権行使でタイガースに残留したエドゥアルド・ロドリゲスの存在売却確実とみられていたカージナルスの外野手が誰1人としてトレードされなかったことなどもデッドラインを盛り上げました。

当初マーカス・ストローマンやコディ・ベリンジャーら有力なトレード候補を有して市場から注目を浴びていたシカゴ・カブスは、デッドライン手前で2016年以来の8連勝を決め込んで貯金生活に復帰すると、それまでの売り手ムードから一転して買い手ムードに。結果的にはコーナーポジションでソリッドな活躍を期待できる内野手を1名弱点であったブルペン陣にゲームチェンジャーとなりえるリリーバーを2名獲得し、シーズンにおいて更なる飛躍を目指す形となりました。

今回はデッドラインで獲得した選手の印象やカブスで期待される働き、さらにはトレードに出されたプロスペクトの選手たちについて、同じくMLB30球団ファン合同noteでカブスを担当されているMasatoさん(X:@GoCubsGoMarines)のご意見ご感想を交えて執筆していきたいと思いますので、是非最後までお付き合いいただけると幸いです。

トレードのファーストインプレッション

今TDLの内野の目玉選手であったキャンデラリオを傘下14位16位のプロスペクトで獲得できた点はレンタルだとしても評価できます。同じく獲得を狙っていたであろうマーリンズやエンゼルスではなくまさかカブスに戻ってくるとはと驚きました。

変則右腕のクアスもベラスケス出すならもう少し良いの貰えたんじゃないの? とは思いましたが、しっかりとリリーフの補強に動いた点は評価したいです。

直近の快進撃によって一気にバイヤーになったカブスですが、しっかりと課題ポジションをダメージの少ない対価で補強できたのは良かったのではないかと感じます。
(Masatoさん)


TDLが近づいてきた7月上旬ごろにはチームが10近い借金を抱えており、コディ・ベリンジャーやマーカス・ストローマンといった選手たちのトレード話で持ち切り。選手のバリュー的にもカブスは今夏注目を集める選手となっていました。

ところが7月下旬にチームは8連勝で借金を返済するどころか貯金生活に。ここでカブスの編成総責任者ジェド・ホイヤー氏はTDLまでにベリンジャーらを残留させる決断をし、リリーフ投手中心に買い手の姿勢を見せることになりました。

残り2日間という短い時間ながらも、弱点となっていたコーナースポットの内野手と台所事情の苦しいリリーフ投手を補強できたのは非常に良かったと思います。特にキャンデラリオの獲得については、売り手市場になっていた今夏だとそれ相応の見返りを要求されてもおかしくないかと覚悟していましたが、比較的妥当な見返りに抑えたことも〇ではないでしょうか。

ただ買い手としてのムーブをする時間にしてはあまりにも短く、カブスの鉄壁内野陣を活かしたグラウンドボーラーのリリーフ投手を獲得することには失敗。あくまでもリリーフには支配力を求めた結果でしょうか。

ソリッドな補強劇となった今夏のTDL。カブスは2020年以来3年ぶりのコンテンダーとしてディビジョン制覇またはワイルドカード獲得を目指して8月以降を戦うことになりますが、その代償を抑えて失敗した際のリスクヘッジもできたかなあとは思っています。
(イサシキ)

獲得選手

Jeimer Candelarioジェイマー・キャンデラリオ 1B/3B/DH ワシントン・ナショナルズ

2017年以来6年ぶりの古巣復帰です。

キャンデラリオは今シーズン、ナショナルズで99試合に出場し、打率.258・16本塁打・OPS.823、fWARは3.1を記録するなど完全復活を遂げ、今TDLの目玉として多くの球団が獲得を目論んでいたなかでのまさかのカブスが獲得。これは驚きました。

コーナーの内野手に課題を抱えていたカブスにとって、現在攻守ともに好調な彼を獲得できたことはカブスの地区優勝、PS進出に向けてのキーになることは間違いありません。
(Masatoさん)


かつてのカブスプロスペクトがリグレーに凱旋しました。

今季のキャンデラリオは攻守ともにオールスタークラス。ナショナルズでは主に3Bとして出場し、持ち前のヒッティングツールでwRC+129を記録。守備でも堅実な動きでOAA+6をマークするなど、攻守でのソリッドな活躍が見込めます。またカブスでは3Bに同じく守備の良いマドリガルを起用しているため、ベリンジャーをCFに戻してキャンデラリオを1Bとして起用するプランも考えられるでしょう。

今夏は野手市場が不作気味で、このキャンデラリオは筆頭銘柄として各球団での争奪戦となっていましたが、見事に後から介入したカブスが掻っ攫う形となりました。あれ、この流れどっかのブラジリアン獲得の際に見たことがあるような...

残り半年の選手ですが、割とペイロールがカッツカツだったカブスにとって1年$5MMの契約はお買い得。対価に出したプロスペクトも球団内14位と16位という形で大出血にならなかったのもgoodでしょう。

既にカブス加入後から打ちに打ちまくっており、移籍5試合で21打数11安打、.579/.619/.947 OPS1.566 と大暴れ。今季MLB屈指の攻撃力を誇るカブス打線に大きな戦力が加わったとみて良いでしょう。

写真はChicago Cubs公式Xより

そして写真のこのポーズ。キャンデラリオが持ち込んだ塁上でのパフォーマンスはカブス全体に浸透し、チームでの一体感を演出する素晴らしいケミストリーが生まれそうですね。

このキャンデラリオが主力として、古巣カブスへと貢献してくれる日々を見ることになると思うとワクワクが止まりません。
(イサシキ)

Jose Cuasホセ・クアス RHP カンザスシティ・ロイヤルズ

課題ポジションの1つであったリリーフに右の変則派 ホセ・クアスを獲得。

クアスは今シーズンロイヤルズで45試合に登板し、防御率4.54・WHIP1.61をマーク。K/9=11.52と非常に優秀な奪三振能力を持っている反面、BB/9=4.59と制球が課題な所と、Barrel%=14.6% と驚異の数字。HR/9=1.31と高く、リグレー本拠地で大丈夫? と不安要素は少なからずあります。
ただ貴重なリリーフであることは変わらないのでカブスでは頼れるリリーフになってください。(Masatoさん)


弱点だったブルペンにやってきたのは元野手!?

ということでロイヤルズから獲得したこのクアス、独特なサイドハンドから繰り出される力強いシンカーと縦に大きく割れるスライダーを武器に奪三振を量産するゲームチャンジャータイプのリリーフです。

現在ではカブスにとって貴重な変則派になり得るポテンシャルを持つクアスですが、元は将来を嘱望された大型内野手。そんな彼に投手転向を命じたのはなんと同地区のブルワーズ傘下マイナーリーグのチームでした。

投手転向後すぐにリリースされてしまいますが、その後独立リーグに移籍し、かつてメジャーを代表するクローザー、F-Rodことフランシスコ・ロドリゲスにサイドハンド転向を薦められたことが転機となり、ここから好投するもののコロナが直撃して所属していたダイヤモンドバックスマイナーリーグからリリース。一時期は配達員の仕事をするなど、野球選手として現役を続けるかさえ迷ったクアスでしたが、昨年ロイヤルズでメジャーデビューを果たし、そのままメジャーに定着した苦労人でもあります。

カブスで求められるポジションは、接戦時の火消し役。流れを変えるピッチングを披露して、カブスの苦しい台所事情を支えるリリーバーとなることはできるでしょうか。

対価は既にMLBデビューを果たしているネルソン・ベラスケスでした。彼の寸評は後ほど。
(イサシキ)

Josh Robersonジョシュ・ロバーソン RHP タンパベイ・レイズAAA

レイズ傘下からジョシュ・ロバートソンを獲得。メジャートレードではなくマイナートレードとなります。

彼の投球を見たことがないので知らない部分が多いですが、スタッツを見ている限りですと、今年のレイズ3AではK/9=10.75と非常に高い奪三振能力を持つ一方で、BB/9=5.50と高め。
三振は奪えるけど四球多いし被打率高いよという選手ですね。
(Masatoさん)


もう1つ飛び込んできたこのトレード。正直カブスにとっては獲得したロバーソンのMLBデビュー、そして定着を図れなければただのダンプトレードになってしまうかもしれません。

今年で27歳となるロバーソンは、今季レイズ傘下AAAでリリーフとして31試合に登板し、36イニングを投げて奪三振43と支配力のある投球を披露していましたが、同時にイニング数を超える被安打や制球難からの四球でランナーを溜める投球が目立つ場面も多く、正直ここからカブスのAAAで活躍をしなければコールアップすら厳しいのではないかと思えてしまう内容です。

一方カブスが放出したのは、2021年のフューチャーズゲームにも出場したマニュエル・ロドリゲスと7月下旬にアウトライトで40人枠から外れていたエイドリアン・サンプソン、そしてインターナショナルFAのボーナスプール金の一部。既にDFA経験をしているロドリゲスやアウトライトされたサンプソンを40人枠に入れておくスペースがないのはわかるにしても、明らかに出し過ぎです。サンプソンのサラリーを実質帳消しにするようなものかもしれませんが、このトレードでカブスが得をしているとは少し言い難いです。

既にサンプソンはトレードから2日後にレイズ傘下AAAからリリース、ロドリゲスはそのままAAAに配属されています。
(イサシキ)

惜別人 ~支えた者、光り輝く者~

Davidjohn Patrick Herzデービットジョン・パトリック・ハーツ 通称:DJ Herz LHP CHCプロスペクトランク14位

ハーツは強烈なインステップからバンバン三振を奪う気迫のピッチングスタイルが光るスターター型プロスペクト。

数年前まではトップ30にも入らないようなほぼ無名に近い選手でしたが、2021年にカブスのマイナー年間最優秀投手に選ばれたのをきっかけに一気にトップ30にランクインするなどブレイク。

彼の武器はとにかく奪三振能力で、今年はK/9=12.2、マイナー通算でも13.2とその数値は支配的。
しかしフォーム所以制球が安定せず、BB/9=5.64と高い点が難点。今のところの完成型はパワーリリーバーといったところ。

彼もまた今年ルール5イリジブルになるということもあり、放出するなら今だったのかなと。

ハーツとメイドでキャンデラリオを獲得できたと考えれば悪くないパッケージだったかなと感じます。
(Masatoさん)

Kevin Madeケビン・メイド SS CHCプロスペクトランク16位

ケビン・メイドは2019年に$1.5Mで契約したドミニカのSSプロスペクト。
彼の武器はやはり広い守備範囲とBAの20-80スケールで70評価を得た強肩を合わせた守備です。Low-A, High-Aでも幾度となくビッグプレーを見せていたのを思い出します。

一方で打撃では伸び悩んでおり,今年はHigh-Aで70試合・打率.240・3本塁打・OPS.683などといまいちな成績。選球眼はさほど悪くないものの、GB%=75.0%ととにかく打球が上がらず、難しいコースのボールにも手を出すなどMLBで今後活躍するためには打撃が弱いです。まだ20歳ですしまだここから打撃を向上させられるかを期待したいところ。

今年ルール5イリジブルであること、Matt ShawのドラフトやInFAで契約したCristian Hernandez, Jefferson Rojasらといった同胞のSSプロスペクトもそれなりにいたことなどから放出は仕方なしという感想です。
(Masatoさん)

Nelson Velazquezネルソン・ベラスケス OF

ベラスケスがついにトレードチップとして放出されました。
カブスの外野はハップ、ベリンジャー、鈴木誠也、控えでもトークマンがいたりとどうしても彼にとってカブスでの出番が少なくなってきていたのは事実としてありました。
そんな中、リビルド球団であるロイヤルズにトレードされたのは個人的には良いトレードだったのかなと思います。

4月11日のマリナーズ戦ではなった豪快なグランドスラムは忘れません。ロイヤルズの主砲として活躍する日を夢見ています。
(Masatoさん)


個人的に思い入れのあるプロスペクトだったこのベラスケス。特に目立つプロスペクトではなかった選手ですが、2021年オフのアリゾナフォールリーグで26試合9本塁打と長打力を見せつけ、見事MVPを獲得。同年はルール5ドラフトイリジブルでしたが、この活躍が認められて40人枠に登録されるというまさに「すんでのところ」での活躍でした。

その後2年間は鈴木誠也やベリンジャーの加入、ハップとのエクステンションもあって出番はかなり限られている状況でした。それでも試合に出場した日には印象に残る活躍を見せることが多く、特にカブスファンには今年の4月、マリナーズ戦での逆転グランドスラムは、ベラスケスのトレードが決まった際にTwitterに惜別動画として多く流布されている様子もありました。

さらにシーズン前にはWBCプエルトリコ代表にも選出。ストローマンと共にチームの8強入りに貢献するまで成長した、個人的に思い入れの深い選手です。

ただ今後数年カブスの外野が埋まりそうなこと、プロスペクトも豊富ということを考えれば当然ベラスケスもトレード候補になり得てしまうのは周知の事実でした。

新天地のロイヤルズは絶賛再建中のチーム。外野手にはドリュー・ウォーターズ、カイル・イスベル、MJ・メレンデスなどブレイクを狙う選手も多いですが、まずは40人枠に登録されているのでマイナーで結果を残し、MLBで活躍する日を心待ちにしたいと思います。

かつてウェイド・デービスとのトレードでロイヤルズへと移籍し、19年には48本塁打でア・リーグ本塁打王に輝いたホルへ・ソレアのような活躍を期待していますよ!
(イサシキ)

Manuel Rodriguezマヌエル・ロドリゲス RHP


マニュエル・ロドリゲスは最速100mphの速球とスライダーを武器に2021年,22年にメジャーでも活躍しました。
しかし、制球がなかなか安定せず、右肩炎症などの故障にも苦しみ、メジャーで安定して活躍することができませんでした。
そんな中で投手育成に定評のあるレイズに放出されたことは、彼の今後を考えても非常に良かったのではないかと思います。
レイズで魔改造された姿を見たい。
(Masatoさん)


100MPHを超えるファイヤーリリーバー。
21年には力強い速球を武器にAA〜AAAで20試合に登板し、ERA1.31、20.2イニングで27奪三振と支配的な投球を披露していたことが認められてフューチャーズゲームにも選出されました。

その後メジャーへとコールアップされ、通算34試合に登板。通算ERAは4.88でした。

今オフにメリーウェザーをクレームしたことに伴ってDFAを喰らうなど、決して期待されていたような成績を残せたわけではありませんでしたが、これからはレイズで花開くことを祈っています。
(イサシキ)

Adrian Sampsonエイドリアン・サンプソン RHP

現在トークマンがカブスを救う野手であるのなら、苦しい時期の先発ローテの窮地を救ってくれたのはこのサンプソンと言えるでしょう。

サンプソンはボールをコーナーへ丁寧に集めるバックエンドスターターとして21〜22年のカブスローテを支えてくれました。特に21年はトレードデッドライン後からロースターに加入し、5試合の先発を含めて10試合に登板。ERA2.80と好投しました。翌年も100イニングを消化してERA3.11。見れば見るほど打たれそうなのに、なぜか抑えてくる、そんな投手でした。

今季は開幕ローテ5番手争いに敗れて3年連続AAAからのスタートでしたが、シーズン途中の5月に怪我をしていた右膝半月板の手術を行い、その1ヶ月半後に実戦復帰すると、7月24日にアウトライトを喰らいながらもAAAのアクティブロースターに戻ることとなっていました。

既にサンプソンは獲得から2日でレイズAAAをリリースされています。韓国球界などを経験した苦労人ではありますが、今後獲得に名乗りを上げる球団は現れるでしょうか...。
(イサシキ)

結びに

カブスにとって明確に「買う」というわかりやすい選択をしたのは、2019年のトレードデッドラインにニック・カステヤノストニー・ケンプデレク・ホランドマーティン・マルドナードらを獲得してきた時以来に思えます。
決して今年の補強が派手なものではなかったにしても、弱点であった内野のコーナースポットをソリッドな選手で埋め枚数が足りても不安だったリリーフ陣にはゲームチェンジャー型のスリル満点な投手を獲得して支配力を高めようとする割と堅実寄りのムーブメントは少し好感も持てます。
そして停滞気味だった古参のプロスペクトや、ベラスケス、サンプソン、M-Rodのように使いどころがない選手たちを他球団へと売りさばいたことも、トレードされた本人たちにとっては良い刺激になるのではないでしょうか。

新たにカブスの一員となった選手も、新天地で頑張る選手にもこの言葉を贈って締めくくりたいと思います。

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