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時速140kmの加速に必要な最短距離を求めよ #俺からの虹色レター

「俺からの虹色レター」という企画がある。ハイコンテクストすぎて説明が難しいことで有名だ。
簡単に説明するなら、お世話になっているアイドルたちに向けたメッセージを音源にしてみんなで共有しようね!ぐらいの感覚か。

この記事はその企画に応募した音源のあとがきである。いろんな前提概念があるため、ほぼ個人的な覚え書きではあるけど読んでくれたら嬉しい。
今回の音源の構造上 虹色レターに限らず、個人的な概念や身の回りのコンテンツの話もしていく。

行くぜ!

1.企画参加

企画の発表から参加に踏み出すまでにはタイムラグがあった。
理由は単純で、前回参加していたから。

言いたいことはあの時言えていたような気がしたし、新しい話題が出てくるほど状況が変化したわけでもなかった。

募集期間中、状況が一変する。

オモコロチャンネルでダ・ヴィンチ・恐山がアイドルマスターの話をした。

「それで!?」と言ってる人もいるかもだが、この動画を見てどうしようもなく「アイドルマスターがしたい!!!!」と思ってしまった。(まだ見てない人は見ようね)
自分のそばにいる彼ら彼女らに「時間」を与えるのは他でもない自分しかいない事を思い出し、傍観者ではなく物語の参加者になりたいと強く願った。

2.制作に向けて

と言うのも、ある種この時期の自分はアイドルマスターに満足していた。
溜め込んでいた動画も満足のいく仕上がりで提出でき、コンテンツに不満もなく、映画を見ることが楽しく……

これがその動画。
見てもらえればわかるかもしれないが、前回の虹色レターが大いに影響を与えている。

これは動画に反応してくれたフォロワーのツイート。ジョルジュちゃんも照れた。
水星探査機を前提として作られたあの音源は「宇宙に行く未央を見送る」視点のものだった。対してこの動画は、[パワー・オブ・ノヴァ]本田未央のシナリオを中心に据え「未央と一緒に宇宙旅行へ行く」という内容になっている。
音源制作と動画制作はバッチリ時期が被っているため「背中」等引き継がれた文脈は多々あるが、虹色レターという舞台で昇華された感情が一歩進み、別の形で生み出された結果、ある種の齟齬が生まれていた。

これだ!!!!!!!!!!!ここをどうにかせんといかん!!!!!!!!!!!!
アイデアが絞り出された。


ところで、PUNPEEというアーティストを知っているだろうか?

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PUNPEE(パンピー)は日本のヒップホップMC、トラックメーカー、DJ、シンガー、サウンドエンジニアである。
映画、アメリカン・コミックス好き。制作においてもそれにまつわる作品が多い。
『水曜日のダウンタウン』 オープニング、その他のジングルを制作。

僕がヒップホップに触れ始めたのはかなり最近で、わかるのはこの音楽が「自己紹介」であるということ。

鳴り止まぬノイズは 能書き以上音楽未満
——Creepy Nuts 「ぬえの鳴く夜は」より
プロの看板下げたNo.1ファンがいいこと言うからよく聞け
——RHYMESTER「ザ・グレート・アマチュアリズム」より

引き出し無くて泣いちゃった(もっと聞こうね)

PUNPEEもまた自己紹介をするアーティストだが、そのやり方が他のラッパーとは違うように見える。
彼の音楽性は言うならば、「物語」だ。

アルバム「MODERN TIMES」。タイトルはご存知チャップリンの映画「モダン・タイムス」からの引用。
アルバムタイトルだけでなく映画 アメコミからの引用で溢れた楽曲たちが並んでいるが、それ以上にアルバム全体が「物語としての強度」を持っていることが特徴のコンセプトアルバムだ。
彼の人生を彩ってきたであろうサブカルへのリスペクトによって生まれた物語たちが、PUNPEEという人物をなぞる様で美しい。

「MODERN TIMES」は"2057"というタイムスタンプを舞台に、老いたPUNPEEが2017年を懐かしむ…という内容だ。

それから3年後、「夢追人」という楽曲が公開される。

こちらのタイムスタンプは"2037"、PUNPEEの息子が登場する。
この時期にPUNPEEは結婚を発表。息子が高校生ぐらいってことはつまり…?

このように、PUNPEEは他にも楽曲によって数々の『タイムライン』を所持している。

本当の話 俺らって一人ひとり パラレルワールドの支配人
これで君もメンバーズ会員 気が向いたら来れば
暗号はあん時のまんま
——PUNPEE「Happy Meal」より

「マルチバース」と呼ばれるアメコミ作品によく見られる設定で、同じ名前のヒーローでも世界線によって設定がまるっきり違ったりする。
同様にPUNPEEも ある楽曲では荒廃した地球を一人生きる男になっていたり、かと思ったらソファの上で大事な人と地球最後の日を過ごしていたりする。

この世界観に気付いた時、「これって……"個人"が持ってていいものなの!?」と思った。
当然持ってていい。だがその姿が新鮮で、輝かしくて、憧れた。


話を音源に戻す。
「分岐してしまった世界線」のことを考えていたら、かつて自分が時間旅行をしていたことを思い出した。

俺達の少女Aシャニマス回に投げた音源。W.I.N.G.敗退したPを過去に送る役目を務めた。
そこでモチーフをもう一度バック・トゥ・ザ・フューチャーに設定。
シャイニーカラーズが題材だったのもユニバース展開としてかなりありがたかった。
どこの時間に行こうかと考え、自分が「プロデューサー」としての意識に気付いたタイミングの『2016年4月8日』を選択した。

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3.内容について

2016年4月8日。[オンリーマイスター]本田未央実装日だ。

オンリーマイスターはこの記事で詳しく触れている。重要テキストなので知らない人は触れてね。

この日に戻って会話をしたいなと思ったのだが、一つだけ譲りたくない部分があった。
過去と未来の話はしても、未来を完全に変えてしまうことはしたくなかった。軽く音源で話してはいるが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」的未来改変ではなく、「アベンジャーズ:エンドゲーム」的世界線増幅を目指したかった。
BttFのオチは大好きだし、エンドゲーム劇中では「SFの傑作がデタラメ!?」とショックを受けた観客の一人だったが、それはそれとしてもあの時考えていた思考全てがなくなってしまうことは悲しかった。

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という訳で世界線を軽く整理し、目的を動画「ディス・イズ・ザ・ウェイ」……"未央と宇宙に行く歴史"を夢想し、叶えようとするお話で決定。

そっ…か、エンドゲーム公開前か……
—いや、「時間は戻せない」って話。
俺が何したところで俺の歴史は変わらない。何かを修正することもできない。

(自分の口から出たこと書くの恥ずかしいね)
「無かったことにしたくない」的思考から出ている言葉。事実現実世界はそう動いていて、タイムトラベルが出来たとしても歴史は変えられないらしい。バナー博士が言ってた。
そんな「現実」というルールの下にあっても、虚構や人の持つ想像力は辛く厳しい世界に勝利するために存在しているはず。

お前が諦めたら、世界は止まってしまう。
重い?未来の重力と比べたら大したことないよ。

そんな僕の想像力は「本田未央」という存在に起因していて、そのエネルギーに感謝していて。
そういう話です。

ちょっと工夫の話をすると、(放送内でも触れてもらえたけど)BGMをブツ切りして場面転換を伝えようとしている。
3分間のドライブだと詰められる情報に無理があると感じていたので、ジャンプカットを意識した台本を書き 映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を参考に編集した。
「ドラマとは退屈な部分をカットした人生である」とはよく言ったもので、バツバツカットすると情報を盛っていけるのでよかった。よかったね〜

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あと小ネタ面だとタイムマシン的時計の下段。「いつ」から来たのかが表示される。放送にのせてもらった画像では見切れてしまったが「1978年6月30日」。スターウォーズ1作目の日本公開日だ。タイムトラベルは欲を満たすためにある!

オチの話。
ただ立ち去るだけじゃ面白くないし、物語があまりにも閉じすぎているなと感じたので「続編フラグ」的にしたかった。
最近気付いたのだが、ラストシーンに『移動』が関わっている映画が好きだ。
移動とはそのまま物理的な意味でもあり、精神的な意味でもある。物語によってフラストレーションが解放され、人生が動き出す姿が幕切れになっていることに喜びを感じる。

あるかもしれない未来を思うことこそが、俺たちにエネルギーをくれるんだよ。逆に言えばそれを失ったらおしまい。
”距離と時間に対する憧れは人間のときめきのようなものだ。”
だから。
諦めるなよ、未央。

彼女たちの行き先が未来なのか過去なのかはわからないけど、宇宙の命運を握るような、楽しい旅だといいな。

4.おまけ

今回の音源もいろんな映画をモチーフにしているのだが、それを察してくれた某人が「この音源が何らかの映画の影響を受けているんだとしたら、リストにして送ってほしい」と言っていた。
オイ!!!!!ホントだな!!!?!?!?推しフォロワーに推し映画を見せるために生きてるんだぞこっちは!!!!!!!!!!!!!!!!!
そんなわけで参考作たちです。

・バック・トゥ・ザ・フューチャー
・スリー・ビルボード
・ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
・ひそひそ星
・ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
・仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER
・「MODERN TIMES」 PUNPEE

「キャプテンアメリカ/シビルウォー」で、スティーブに眠っていた間のカルチャーを教えるサムみたいだな。(伝わらない例えをしてはいけないよ)

以下作品紹介です。

・バック・トゥ・ザ・フューチャー

音源との関連度:A 見やすさ:B
言わずと知れすぎて逆に見られてないがち映画1位といえば、BttFな訳ですが…
今回の音源は完全にオマージュなので、ジョルジュちゃんの解像度向上に繋がるかも知れない。アラン・シルヴェストリの幸福な映画音楽も最高。
一作の完成度はもちろんだが、シリーズとしての存在感が強い作品でもあるので見やすさで言うならB。(そのランク付け何?)
つーかこの予告イカしすぎるからこれだけでも見て!!!!

・スリー・ビルボード

音源との関係性:C 見やすさ:B
"Three Billboards Outside Ebbing, Missouri"、「ミズーリ州エビング郊外にある3枚の看板」原題がカッコよすぎる。野暮ったいタイトルが好きなだけだろ。
娘を惨殺された母親が結果を出さない警察に対して「とある行動」を起こしたところから始まる人間ドラマ。そう聞くと重っ苦しそうだが、時折挟まるシリアスな笑いのおかげか印象はそこまでではない。人の不安や苦痛 それらの解放の切り取り方が美しく、寂しくも優しいラストが大好きな映画。
今回の音源ではなく「むかしむかし、紫煙に巻かれて。」のモチーフの一つ。だが、この映画が示した「ロードムービー」への答えは自分の作品観に影響を与えているので、そう言う意味では関係性は高いのかもしれない。

・ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

音源との関係性:B 見やすさ:C
魂映画。落ち目の元スター俳優とそのお抱えスタントマンのBL。語弊があるな。
1969年のハリウッドに取り残された彼らへのラブレターでもあり、鎮魂歌でもある。墓から掘り起こし、もう一度価値を与える『サンプリング文化』の意義を深く考えるようになったきっかけの一作。
先述の通り、ドライブシーンの雰囲気をかなり参考にした。
文脈の重ね合わせがちょい複雑なのと、血と暴力がたくさん出るので見やすさはC。でも予告の雰囲気が少しでも気に入ったら見て欲しい。見て〜〜〜!!!

・ひそひそ星

音源との関係性:B 見やすさ:C
大偏屈SF映画。
至る所で言っている「距離と時間に対する憧れは〜」の引用元。
とある要因で「憧れ」を失ってしまった人類に向けた配達物と、それを届ける配達員アンドロイドのお話。
雰囲気映画と言ってしまえば、まぁ…そうですね……となってしまう空気感ではあるので見づらい作品かもしれない。

・ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー

音源との関係性:C 見やすさ:A
人生映画。この時のためにこの動画を作っていたまであるな。
楽曲引用と言う意味で避けて通れない作品。
…………いや、それ以上のこと言うつもりないですけど………………………………

・仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER

音源との関係性:C+ 見やすさ:C
あれっ…?これもしかして、こじつけで推し映画見せようとしてるだけ……?
「虚構と如何にして向き合うのか」の一つの答えではあるので一応参考作品ではある。近々で見たし。
仮面ライダーを見ていなくてもある程度は楽しめるとは思うが、見やすいとは言えない。

「仮面ライダーは現実の存在じゃない。」「仮面ライダーはテレビの中の絵空事。」

「あの頃、本当に俺のそばに仮面ライダーは居たんだ。」

オススメです。


引用には意図がある。自らの中で消化した感情に新しい価値を与えることが引用であると考えている。
こうやってここまで読んでもらえていると言うことは、少なからず自分の作品を知りたいと思ってくれているぐらいの自負は持って……いいよね?
そうなら嬉しいし、自分が愛した作品群からエッセンスを拾っていってくれたらもっと嬉しい。
あの……一人で見にくかったら可能な限り通話繋いだりするので……声かけてくれたら………駆けつけるので…………………どうか………

見ろ!!!!!!!!!!!!!!!!



配信から2日後。

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本田未央が「昔話」をした。そんなことある?

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