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「アメリカン・アニマルズ」 〜飛べない鳥は、〜

『アベンジャーズ:エンドゲーム』公開から早一月、シンデレラガール総選挙も終わり一先ずは落ち着けるかなとぼんやりしていたらちょっと凄い映画が出てきてしまった。

「アメリカン・アニマルズ」

2004年にケンタッキー州の大学生4人が大学図書館から時価1200万ドルのヴィンテージ本を盗んだ実際の事件を映画化。

この作品はクライム映画だが所謂コンゲーム "騙し"のエンターテインメントではなく『青春映画』という枠が正しいのだろう。『オーシャンズシリーズ』のような作りを想定して見にいくと肩透かしを食らうのかもしれない。

特徴として挙げるなら「実際の事件を振り返りながら「現在の登場人物」がインタビューに答えていく」という構成だろう。シーンの合間合間にインタビューがカットバックしていく。

彼らは映画の真似をしながら仲間を集め、建物の見取り図を作り、お互いを色で呼び合う。特殊メイクまで施し入念な準備と計画の上で犯行に及ぶ。わけだが、そこまでする動機はどこにあるのか。もちろん金も一つの理由だが…

「オレたちは待っていた 何かが起こる日を」「その何かが起これば最高の人生になる。」

先述の通りこの映画は実際の人物によるインタビューで物語が進んでいく。
実話を基にした作品で実際の人物を出す利点というと「彼らのリアルな記憶や感情を元に作品が出来上がる」ところだと考えていた。『15時17分、パリ行き』なんかがそうだろうか。

だが、この映画に出演する人物たちは全ての出来事を鮮明に覚えてはいない。計画の中心になる会話ですら いつ何処で誰が言い出したかも、出会った重要人物の風貌でさえ、不鮮明な彼らの記憶から物語が進んでいく。

上下反転した風景からこの映画は始まる。俯瞰から いわば鳥のように物語を見ている我々の視点なのだと感じた。

「"最高の人生"のために何か残したかった」「だが、何がしたかったのかはわからない」

何が真実だったのか、彼らの語るそれを信じるしかない我々に対して、不明瞭な未来を生きる『我々の物語』であると認識させる言葉を愛おしく そして何より哀しく思った。

『アメリカン・アニマルズ』は飛べない鳥の為の映画だ。否応無しに見せられた自分の翼に、貴方は何を想うだろう。俺は…俺は……………

「後悔して欲しくない。10年後になって "やってたらどうなってたか"。」
「"人生は違ってたか"と。」

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