空嘘

ほんのり甘い粉の匂いのするおしろいを塗って眉を引いて紅をさす。
襖から顔を覗かせた僕の姿は鏡台に座る姉からは見えているはずだ。それでも表情を崩すことなく、黙々と化粧を施していく、化けていく。体が折れてしまいそうに細い事は開かれた後襟の首でわかる。だけど本当はねぇねが家の中で一番強い事を僕は知っていた。
時折背後から聞こえてくる父様の呻き声。

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アバラ通信

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