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【東京六大学野球】RC27で見るプロ入りに必要な成績(野手・2022年版)【ドラフト】

 こんにちは、宜野座パーラーです。オフシーズン中に「自由研究」的なノリで、何本か書いてみたいと思っています。

 ここでは、ちょっとマニアックですが「RC27」という指標に着目し、東京六大学の野手がドラフト指名されてNPB入りするためにはどの程度の成績を残す必要があるのかを書いてみました。

1.結論:RC27「6」以上が目安、守備力がウリならば4以上でも可能性あり

 詳細は後述しますが、2010年以降のドラフト指名野手を対象に集計した結果、NPB入りするためにはRC27「6」以上がひとつの目安になろうかと思われます。RC27という指標の定義上、守備力は考慮されないので、守備に定評があるならば4以上でも指名される可能性があると言えそうです(図表1)。

図表1:NPB入り選手RC27ランキング(赤字は2022年指名選手)

 もっとも、かなりざっくりした分析なので、

・ そもそもRC27で評価するのが有効なのか(他に良い指標はないのか)

・ ドラフト指名されなかった選手でも高いRC27を残しているんじゃないのか

といったあたりまでは検証できていません。その前提で読んでいただければと思います。「こういう指標だとどうなるの?」といったご意見もいただければ、分析してみたいと思っています。

2.下準備:RC27とは

2-1.RC27の概要

 RC27とはざっくり言うと、「その選手だけで打線を構成したときに1試合で何点取れるか」という指標です。後述の式の通り、長打や四球だけでなく、盗塁や犠打も考慮に入れて計算しているので、強打者タイプであっても俊足巧打タイプであっても並べて評価できるという利点があります。

2-2.RC27の定義

 RC27の定義を紹介する前に、「RC(Runs Created)」というものを説明します。RCはその言葉の通り、その選手がどの程度得点を創出したのかを示しています。

 RCは以下の式により求められます。

RC=(A+2.4C)×(B+3C)÷9C-0.9

ここでA~Cは元データの都合もあり、正式なものよりやや簡便に以下のように定義します(正式には、Aでは盗塁死と併殺打を減算します)。

A=安打+四死球

B=塁打+0.26×四死球+0.53×犠打飛+0.64×盗塁-0.03×三振

C=打数+四死球+犠打飛

やや複雑な式ではありますが、コンセプトとしては「出塁能力A×進塁能力B÷出塁機会C」が出発点になっている指標です。ただし、RCは打席数が多いほど大きくなる傾向があるため、打席数に差がある選手間での比較には向いていません。

 そこで、打席数に差がある選手間でも比較できるように応用されたものが「RC27(Runs Created per 27 outs)」です。RC27の概要は前述の通りですが、以下の式により求められます(RCと同じく、元データの都合でTOをやや簡便にしています。正式には、盗塁死と併殺打を加算します)。

RC27=27×RC÷TO

TO=打数-安打+犠打飛

2-3.RC27を採用した理由

 一般に、得点との相関が高い指標としてはOPS(=長打率+出塁率)が有名ですが、OPSでは走塁能力が考慮されないという欠点があります。RC27ではその定義の通り、盗塁や犠打も考慮されており、タイプの異なる選手間の比較がしやすいという利点があります。この利点に着目し、RC27を採用しました。

3.集計結果:最大で11.20、最小で3.67と幅のある結果に

3-1.集計対象

 ここでは2010年以降のNPBドラフト会議で指名された東京六大学出身の野手を対象としています(育成指名を含む)。また、社会人や独立リーグを経由せず大学から直接NPB入りし、かつ大学通算100打席以上の選手を対象としています。

3-2.集計結果

 対象となる35選手の集計結果は図表1(再掲)の通りです。2022年のドラフトで指名された4選手の中では、萩尾匡也(慶大ー2022年巨人2位)が9.44で頭一つ抜けた値となっています。

 最高は11.20、最低は3.67と幅のある結果となりました。35選手の平均が6.65であることからも、個人的には6以上が一つの目線になると感じました。プラスアルファで守備力が高く評価されるような選手であれば、4以上でも指名の可能性はあると言えそうです。このあたりの目線感はかなり曖昧なので、もう少し見るデータを増やして固めていきたいところです。

図表1(再掲):NPB入り選手RC27ランキング(赤字は2022年指名選手)

4.考察

4-1.RC27全体トップは現楽天・島内の11.20

 RC27の全体トップ5選手の詳細を見てみると、それぞれタイプが異なることが分かります(図表2)。トップは島内宏明(明大ー楽天)の11.20で圧倒的です。通算2本塁打ながら出塁率.485は全体1位で、高い出塁能力が大きく寄与しました。

 一方、3位の岩見雅紀(慶大ー楽天)は通算21本塁打のスラッガーで、長打力が反映された結果となっています。出塁率が3割台にとどまったこと、盗塁や犠打飛による加算が少ないことがマイナス要因でした。

 残る3選手はいずれも通算10本塁打、打率3割台前半と、島内と岩見の中間的なタイプでしょうか。この3選手で比べると、萩尾の9.44が最高です。打力のみならずスピードも活かしたプレースタイルで、長打や盗塁が多かったことが寄与したのでしょう。伊藤隼太(慶大ー阪神ー四国IL・愛媛)と茂木栄五郎(早大ー楽天)は、最終的には出塁能力の差が影響したように見えます。とはいえ、茂木は12盗塁、7犠打飛と進塁能力の加点要素で全体5位に食い込んだとも言えるでしょう。

図表2:上位5選手

4-2.西武1位の蛭間と中日2位の村松は僅差

 2022年ドラフト指名の蛭間拓哉(早大ー2022年西武1位)と村松開人(明大ー2022年中日2位)はタイプこそ異なりますが、結果的には僅差で全体10位と11位に並びました。

 蛭間は現役トップタイの通算13本塁打の強打者で、一方の村松は高い出塁能力・走力を有するリードオフマンです。蛭間は長打力を活かした進塁能力の高さ、村松は15盗塁、9犠打飛と小技を絡める進塁能力の高さがそれぞれ反映された結果になりました。また、盗塁や犠打飛に比べればその重み付けは小さいですが、村松の三振率(=三振÷打席)は4.76%と対象選手の中で最も低く、三振による減点が少ないこともプラスに働きました。

 単純にOPSで比較すれば、蛭間の.916に対して村松は.841とかなりの差がありますが、RC27を用いて総合力で見れば同程度の実力だと結論付けることもできるでしょう。

図表3:蛭間vs村松

4-3.RC27が6未満の選手は守備力も評価されての指名か

 RC27で見たときに「6」以上を目線に結論づけましたが、6未満でも11選手がドラフト指名されました(図表4)。この11選手の大半がセンターラインを守る選手です。高い守備力が求められるポジションで、かつ高い守備力があれば、この6を下回っても指名される可能性はあると言えそうです。

 特に、上本崇司(明大ー広島)はRC27が対象選手の中でワーストの3.67ながら、今では内外野を守るユーティリティプレイヤーとして欠かせない選手になりました。プロ9年目の今年は自己最多の300打席で打率.307と、ここにきて大きく飛躍しました。やはり1年春からレギュラーとして出場を続けたそのセンスは本物だったのでしょう。

 「守備力が高ければRC27が低くてもドラフト指名される」というのはある程度もっともらしい理屈ですが、実はこれに当てはまらない選手もいます。それは、佐野恵太(明大ーDeNA)と宇草孔基(法大ー広島)です。佐野は今や言わずと知れたDeNAの中心選手で、2020年に打率.328で首位打者に輝くと、今年は最多安打のタイトルを獲得しました。宇草は今年が3年目のシーズンでしたが、45試合に出場し徐々に出場機会を増やしています。大学時代の成績が決して輝かしいものでなかったとしても、伸びしろを見抜かれて指名された事例でしょう。

図表4:RC27が6未満の選手

5.おまけ

5-1.RC27の欠点

 前述の通り、RC27では守備能力を考慮できていないという大きな欠点があります。しかし、私のような一般人が得られるデータから守備能力を表す指標を計算するのは非常にハードルが高いですし、さらに守備位置が異なる選手を同じ土俵で比べるのは実質不可能でしょう。

5-2.RC27とOPSの相関

 参考までに、集計対象35選手のRC27とOPSの関係を見てみます。おおまかに言えば、RC27は得点能力に走塁能力を加味したような指標なので、得点能力を表すOPSとの相関はそれなりに高いことが想定できるでしょう。

 結果は図表5の通りですが、やはり想定通り右肩上がり(RC27が高ければOPSも高い)という傾向が読み取れます。また相関係数も0.94と、強い正の相関があると言えそうです。

図表5:RC27vsOPS

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