SNSの片隅でAIを叫ぶ

　以前に画像生成AIのことで私見を書いたけど、少し時間が経って状況と心境に変化があったので書き残しておこうと思った。

　画像生成AIの是非については、もはや嫌と言っても止めようがないなと、あらためて見ていて思う。
　あと、いわゆる反AIとされている界隈でも過激な人たちを見ていると「私もAIは好きじゃないけど、こんなことやってる連中と同類と思われるのはちょっと……」と思う事も少なからずある。
　なので、AIについては、ある程度は容認するしかないというのが、今の私の考えだ。

　ただ、それでも言いたいのは、「自分の手で絵を描けないまま、AIに呪文を唱えて描かせた絵でもって『AI絵師』を名乗り、手描き絵師を見下す連中」はやはり受け入れがたいな、という事。
　もう少し掘り進めて言うと、「画像生成AIを使って好きな絵を出力するのも、販売するのも止めはしないが、せめて絵師を名乗ったり、手描き絵師を見下すような発言をするのはやめたら？」というのが私なりの意見だ。

　はっきり言って、わざわざ他人にマウントをとったり、自称絵師を強調しなくても、画像生成AIで絵を生成したり販売したりするのに支障はないはずで、それでもなおそういったアピールを続けるのは、逆に自分が持っていない「手書きで絵を描くスキル」を持つ絵師に対してコンプレックスでも抱えてるのかな？　と勘ぐってしまう。
　もっと堂々と「私はAIイラスト出力屋です」でいいんじゃないの？

　それでもなおAI『絵師』を名乗りたいというなら、手書きで絵を描く技術を習得すべきだ。
　『自称AI絵師』が蛇蝎のごとく嫌われている要因の一つは、絵を描くことのつらさや苦さを知らない、絵と絵描きに対するリスペクトのなさという側面も非常に大きいと思うので、せめてイラストレーターや同人作家になれるレベル……とはいかずとも、自分の手で絵を描くスキルや大変さを学べば、見えてくる世界があるんじゃなかろうか？（『AI絵師』アンチの常套句である「お前ら自分の手で絵描けないじゃん」に対する特効薬にもなる）もっとも、絵を描く苦労を知るならそんな態度はとらないと思うけど。
　もちろん、AIで出力する絵に満足していて「いまさら使いもしない技術なんかに割くコストはねえ！」と思う人もいるかもしれないけど、本当に『絵師』を商売や仕事にしたいというなら、手書きで絵を描く技術のない『自称AI絵師様』はほぼ相手にされない。AIイラストを１万枚生成したAIイラスト生成の達人だけどペンで絵は描けません、なんて人間を業界は求めてない。
　仕事で依頼される絵なんて、「ネックレスを首輪にしてください」とか「ダブルピースをコルナサインに」みたいなリテイクや修正だっていくらでも起こりえるのに、貴方は今そこにある『貴方の描いた絵』を修正も改変もできないの？　ってことになりかねないし。その都度、希望する絵がAIから吐き出されるまで呪文を唱え続けるのかな？（まあ、AIがこのまま進化したら、できるようになるんだろうけど。私が知らないだけで、実はもうできたりするのかな？）

　さて、逆に自称AI絵師に怒りを燃やしている、手描き絵師の皆様にも提案がある。
　AIが自分よりもクオリティの高い画を吐き出す、自分のスキルが無用になるのではと感じている絵描きの皆さんは、今からでも遅くはないからAIを『使う側』を目指してみるのはどうだろうか？
　別にAIに全乗っかりで出力屋になれ、と言いたいわけじゃなく、AIに自分の絵柄を学ばせるとか、自分の作業を楽にする方向でAIを活用するのは、それこそが画像生成AIの本来求められていた使い方なんじゃないのか、と思うのだ。
　そもそもAIイラストが出始めてからそろそろ２年くらい？で、AIが全ての絵描きや漫画家の需要を食うほどのものではないこと、得意や不得意なんかもまあまあわかってきた。自称AI絵師が不快なのはその通りなのだけど、AIそれ自体に罪はないし、何なら絵の本流に触れてきて、構図や違和感に気付く『センス』が磨かれており、そこにできた絵を修正することもできる（そして手描き絵師に対するリスペクトもある）絵師がAIを駆使するようになるのなら、少なくとも生成AI＋素人よりも圧倒的なアドバンテージを得られるんじゃないだろうか？
　元々アナログ絵描きだった先達たちも、デジタルお絵描きツールを手に取るようになって、色々な恩恵を受けたりもしただろう。
　自称AI絵師が声高に叫ぶ「画像生成AIはお絵かきソフトと同じでただのツール！」というのは、スクリーントーンとゴーストライターを混同するような暴論だと思うけど、それはそれとしてAI自体はツールにすぎないという意見にも一理はあると思う。

　画像生成AIはすでに引き返せないところまで出回ってしまっているし、禁止しようがどうしようがもはや悪い連中が手放すことはないだろう。デジタルだって受け入れて武器にしてきた手描き絵師の皆さんなら、AIも敵ではなく便利なツールとして乗りこなしていけるんじゃないか、と期待したい。
　……書いてて思ったけど、私自身もAIに関する知識がだいぶ薄っぺらいので、ちょっと自分でも触ってみないとなあ。