プライスレスな新体験

 工場で発生する不良とそれに伴うあれやこれやな話。

 私の勤め先は、大阪ではよくある機械部品製造系の工場だ。まあ主に車の部品とか、他の製造業の設備の部品とか、あれやこれやを作ったり作らなかったりしている。普通の町工場を数軒束ねたグループ的な体裁で、規模としては中小企業としてはなかなか?くらいで、毎月数千件の受注、細かいのも合わせると1万点以上の部品を出荷してると思われる(工程管理や営業職じゃないので具体的に総数がどのくらいかは知らない)
 で、毎月それだけの製品が流れてると、当然、月に20や30は不良が発生するわけだ。
 不良といっても内容は様々で、ごく単純な作業者のポカミスもあれば、設備の経年劣化や工具・刃物の不具合によるものもある。レアなものだと停電や漏電が原因で機械が異常動作したりなんてケースも稀にあったりする。
 不良の内容にもよるけど…だいたい現場にいる同僚や現場に近い課長クラスは同情してくれたりするのだけど、営業や上の方の重役、ユーザーからは「ミスはミスだろう。経緯がなんであれそれはそっちの都合だ」というありがたいお言葉をいただいて、始末書と再発防止策を用意するハメになる。再発防止策なんて言っても『同じ不良を二度と起こさないようにする対策』なんてロハで簡単に出るはずもなく、とりあえず客先に説明しやすい「やった感」を出すために使われるのが
「確認/検査を追加しました」
「チェックシートを作りました」
「ダブルチェックを実施します」
これだ。

加工する製品1個につき検査が追加され1分。チェックシートに記入してさらに2分。ダブルチェックなんぞやろうものなら5~6分。部署によっては「同じ機械を扱うオペレーターが複数人常駐してないのでダブルチェックどうしよう…」なんてことすらある。当然、これらの追加時間はタダ働きだ。(こんなん価格転嫁できるわけないものね)1個の製品に余分に数分かかるため、1日20個できてた製品が1日15個になる。上から「怠慢」と詰められる。減った分を取り戻すために休憩時間を使い、残業時間を使い、土曜日、日曜日……そうだ、検査にかかる時間をなるべく減らそう。5分を4分に、3分に、1分に……あっ

ダイハツの検査偽装トラブルは、何もダイハツに限った話じゃなくて、製造業ならどこでも起こりえた話だと思う。むしろダイハツのような大手企業だからこそ明るみになって国が動くことになったけど、中小企業では今も当たり前にそこら中でよく似た事案が告発もされずに常態化してるんじゃないかなあ?
製造系の中小下請企業なんて、おそらく半分以上が労働組合もろくにないし、労基に駆け込むにしても、よほど念入りに証拠を集めて、絶対勝てるくらいの準備をしないと取り合ってもらえなさそうだし。さらにいえば「内部告発者が報復される事例」も、調べれば色々出てきて「ヤバイと思ったら全部告発しろ!」って世の中そんなに簡単じゃないよ、という現実もありありと見せつけられる。

どこぞのマーフィーさんも言っていたけど「起こる可能性のあることは、いつか実際に起こる」
工場の生産工程に人の手が入る限り、不良がなくなることはない。
同じ不良を二度と起こさないように注意することは大事だけれど、もうできることは正直あらかたやりつくしてると思うし、ネタがないからお茶濁しのつもりで検査を増やせばこういう事にもつながる。
ある程度の不良はあらかじめ計算に入れておくとか、とにかく何か別のアプローチが必要なんじゃないかなあ?

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