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今日は何の日、気になる日

 2023年、日本--------
この年、日本は過去最悪の治安水準であった。
 同年二月二日、最近対立が激化していた「きのこの山」「たけのこの里」の二大勢力が東京都中央区にある製菓企業•株式会社 明治の本社前にて武力衝突、警察や自衛隊を巻き込んだ戦後初の内戦が始まった。数年経った四月一日現在も内戦は終結しておらず、死屍累々となった本社前はさながら地獄絵図である。
 二月十日には日本国内にある全ての製菓企業がチョコレートの製造•販売を止め、さらには全てのスーパーマーケットやコンビニなどからチョコレート菓子を回収し始めたのだった。これにより二月十四日のヴァレンタインデー当日、日本国民の一部の“シアワセ”人間は甚大な被害を受けた。“残念”ながら、大半の人間は一切の被害を受けなかったという。
 三月一日には香川県にて約32万人のゲーマーによる暴動が起き、高松市では火災•暴行•強盗などが横行し住民は避難を余儀なくされた。この年の三年前、香川県ではついにゲーム関係の機器類の購入が禁止され、既にゲーム機器を持つ家庭は条例に基づき即刻処分命令が下されていた。それでもなお隠れてゲームをしていた住民は秘密警察による逮捕や、大衆の前でのゲーム機破壊、そのほか警官による現場での処刑が行われていた。全ての家庭のネット環境や電子機器は監視され、少しでも不審な場合は特殊部隊による突撃も余儀なくされた。香川県から他県に引っ越すことは一部の汚職人間を除き全面的に禁止され、亡命しようとして捕まった県民は数知れずという有様である。また二年前には県内専用のスマートフォン、パソコン、テレビが配布され、ネットワークも独自のものである「うどんねっとわーく」意外使用できず、検索エンジンは「ため池知恵袋」に限定された。またテレビにはローカルテレビの番組しか映らない状態で、香川県民は完全に外との繋がりが絶たれてしまったのだという。
 三月十七日にはコロナショック以降発生した二大派閥「マスク常着派」と「マスク廃絶派」の代表による『マスク派閥決着⁉︎ 第一回 チキチキじゃんけん大会 〜究極の3回勝負〜』が国会議事堂前にて開催され、三日間の激闘の末「マスク常着派」が勝利を収めた。これによりマスク着用は今後も個人の判断に委ねられることになったのだ。


 …というウソ歴史を4月1日だからと少しお馬鹿な補習生たち(春休み中だが呼び出されている)に歴史の教師という立場から教えたのだが、六人いる補習生たちは誰一人としてこの話を疑っていなかったようだ。六人もいて、だ。この話をしてやるよりもその後の誤解を解く方が時間がかかってしまった。そもそもの話として、「エイプリルフール」のことから教えなければならなかったのだから余計にである。
 「今日は何の日か知ってるだろ?」と問い掛ければ「今日は何の日、気になる日〜♪」「名前も知らない日ですから〜♪」と返ってくる。この歌を知ってるくらいなら知ってるだろ、とツッコミたくなる。
 いや、待てよ…。もしかしてこれ、補修生たちによる「俺たちこんな頭悪いから、勉強したって無駄だよー」という高度なウソなのか?

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