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GⅠまであと少し!不屈の闘志で走り、みんなから愛されたウインバリアシオン

あの馬がいなければ…。
ビゼンニシキにとってはシンボリルドルフ。メイショウドトウにとってはテイエムオペラオー。
そして今回の主役であるウインバリアシオンにとってはオルフェーブル。
あの馬がいなければ、たくさんのGⅠを勝てたかも。競馬にタラレバは禁物ですが、それでも言いたくなるほど相手が悪かったといえます。
たとえ相手が悪かったとしても、懸命に走る姿に競馬ファンは魅了されます。ウインバリアシオンはまさしく、多くの競馬ファンを魅了しました。

ウインバリアシオンは父ハーツクライ、母スーパーバレリーナという血統で、松永昌博厩舎に入厩します。
松永昌博調教師といえば騎手時代に、今でも大人気ナイスネイチャの主戦騎手でした。ナイスネイチャは重賞を3つも勝っていますが、それ以上に2着や3着が多くありました。GⅠで何度も掲示板に載りましたが、ついにGⅠを勝てませんでした。
判官贔屓とはよく言ったもので、あと少しというもどかしさが、多くの競馬ファンがナイスネイチャを愛した理由かもしれません。ナイスネイチャと同じ様に松永昌博騎手も、地方交流GⅠ競走の東京大賞典は勝ったものの、JRAGⅠはついに勝てませんでした。しかし調教師として、エイシンアポロンでGⅠマイルチャンピオンシップを勝利した時、「松昌がついにGⅠを勝った!」と多くの競馬ファンは喜びました。
そのような松永昌博厩舎に入ったウインバリアシオンを担当したのは竹邑行生厩務員、ラインクラフトやオグリローマンを手掛けた腕利きの厩務員さんで、ウインバリアシオンに大きな期待がかけられていたことがうかがい知れます。

ウインバリアシオンは2010年8月1日小倉競馬場芝1800m、鞍上福永祐一騎手でデビューします。道中は中段に構えて、途中から動いて最後は2着に3馬身差をつける圧勝。見事一番人気にこたえます。続く阪神競馬場芝1800mの野路菊ステークスでも、見事勝利を飾りデビューから連勝。クラシックにむけて注目される存在となります。
しかしその後重賞で4着→4着→7着ともどかしい結果となり、陣営は日本ダービーにむけて青葉賞に標準をあわせます。 青葉賞では鞍上に安藤勝巳騎手をむかえます。安藤騎手は思いきって、道中かなり後ろに位置をとり脚をためます。そこから直線に入り、ためていた脚が一気に爆発して、上がり 33秒台を繰り出し見事1着でゴール。重賞初制覇を飾ります。

素晴らしい末脚を武器に日本ダービーに臨みますが、後ろとは7馬身と差をつけながら、さらに1馬身以上前には、あのオルフェーブルがいました。ウインバリアシオンは日本ダービー、神戸新聞杯、菊花賞と全て2着となりますが、前にいたのはいつもオルフェーブルでした。オルフェーブルがいなければ、4連勝で二冠達成!しかし現実は全て2着。まさしくあの馬がいなければ…。

その後3歳馬ながらジャパンカップで5着と健闘。さらなる飛躍が期待されましたが、京都記念6着→日経賞2着→天皇賞(春)3着→宝塚記念4着。人気薄の逃げ馬に逃げ切られたり、オルフェーブルに勝てなかったりで、勝ち星から見放されます。さらに故障にも見舞われ、宝塚記念の後1年以上の休養を余儀なくされます。

休養後は日経賞で勝ち星をあげることはできたものの、有馬記念2着、天皇賞(春)2着、さらに故障の再発も重なり、ついに GⅠを勝つことなくウインバリアシオンは現役生活を終えます。

GⅠ2着4回とあと少し。故障しても復帰し、不屈の闘志で頑張って走ったウインバリアシオン。ウインバリアシオンは松永昌博調教師が騎手時代に乗っていたナイスネイチャのように、GⅠには手が届かなかったものの、いつしかみんなから応援され愛される馬となっていました。

引退後はJRA からは種牡馬に、ウインの公式サイトからは乗馬になると、異なった発表がされて、ファンはやきもきしました。さらに状況は目まぐるしく変わりますが、結果的に青森県十和田市のスプリングファームで種牡馬になることが決定しました。ウインバリアシオンを応援していたファンは、種牡馬になれたことでウインバリアシオン産駒を見ることができるのを楽しみになったのと同時に、青森で繁殖牝馬が集まるのか?という不安もありました。

しかしそのような心配は杞憂に終わり、ウインバリアシオンは青森でコンスタントに種付けをこなし、確実に産駒を競馬場に送り出しました。なかには中央競馬で4勝をあげたドスハーツ、門別競馬で活躍して道営記念2着のオタクインパクト、大井競馬B級で好走しているコンチバリアシオンなど、活躍馬も輩出しています。

現役時代GⅠまであと少しだったウインバリアシオン。故障しても復帰し、不屈の闘志で走ったウインバリアシオンの魂は、確実に産駒に受け継がれています。

さて青森で種牡馬として活躍しているウインバリアシオンが、2021 年種付けした牝馬の中に、ミスジーナという牝馬がいました。ミスジーナは牝馬を産みます。後にジナコと名付けられるこの牝馬は、数奇な運命をたどることになるのですが、それはまた次回のお話しということで。これからも東北産馬を盛り上げるべく、ウインバリアシオンには頑張ってほしいです。