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The Power of Dreams

プロスポーツの世界では、貧しい環境から世界のトップレベルに成り上がり、成功を掴むというストーリーが往々にして起こります。ブラジル代表のサッカー選手たちは、そういった境遇の選手が多いような印象があります。

しかし、同じスポーツでも最初の段階で金銭的に恵まれた環境にいなければそもそもそのスポーツを始めることすらできないこともあります。

モータースポーツ(四輪)はその最たるスポーツであるといえるのではないでしょうか。

モータースポーツの入り口はカートですが、カートで全日本レベルの戦いをしようと思ったら、それだけで年間数百万、へたをすると一千万以上のお金がかかるそうです。

その時点で選ばれた人間しかそもそも競技をすることすら許されないですよね。

四輪モータースポーツの頂点と言われるのはF1ですが、F1では1チームを運営していくのに年間何百億円という経費がかかるそうです。当然金銭的な体力のあるチームが開発等の面でも有利になります。

2000年代前半には日本の自動車メーカーの雄ともいえるHONDAとTOYOTAが参戦していましたが、リーマンショックをきっかけとした世界的な景気の悪化のあおりをうけ、両メーカーはF1からの撤退を余儀なくされました。

その後、HONDAがパワーユニット(いわゆるエンジンを含むハイブリットの動力システム)のサプライヤーとして2015年にF1復帰を果たしました。そのパワーユニットの供給先は名門マクラーレンでした。

マクラーレンとホンダのコンビといえば、1980~1990年代にかけてかの英雄アイルトン・セナをドライバーとして黄金時代を築き上げたコンビです。当然周囲も期待していました。

しかし、HONDAがF1から撤退していた数年間の間にF1のパワーユニットははるかに複雑なものとなり、参戦当初はかなりの苦戦を強いられていました。

当時マクラーレンホンダのドライバーだったフェルナンド・アロンソがレース中の無線でピットに向かって「GP2エンジン、GP2」と言ったのは今でも忘れられない屈辱です。GP2とはF1の1つ下のカテゴリーで、アロンソはホンダのエンジンは下のカテゴリーのものだと言ったのです。それ以来、彼のことが大嫌いになりました。

そして、マクラーレンと袂を分かつことになったHONDAは、エンジンの供給先が決まらず、再びF1撤退の危機に陥ることになりました。そこでホンダに救いの手を差し伸べたのがトロロッソです。トロロッソとのすばらしい協力体制のなかでパワーユニット開発をすすめることができたHONDAは結果を残し始め、エンジン供給先はトロロッソの母体のチームともいえるレッドブルにまで拡大しました。

そして2019年のオーストリアグランプリで見事優勝を成し遂げます。

さらに2021年シーズンは、レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手が総合優勝を狙える位置にいるのです。

ここ数年は、総合優勝はメルセデスのルイス・ハミルトンが独占している状況に風穴を開けられるかもしれません。

残念ながら、HONDAはこの2021年シーズンをもってエンジンサプライヤーからの撤退が決まっています。理由はカーボンニュートラルの実現、平たく言えば環境対策に取り組むためとのことです。

非常に残念ではありますが、今年で撤退するからこそ、フェルスタッペン選手にはがんばってもらって、ぜひHONDA F1の花道を飾ってほしいと切に願います。

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