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技術士建設部門【選択科目】の傾向と対策/【選択科目Ⅲ】求められる資質能力・コンピテンシーとその対策

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【当ページ掲載記事の要旨】--------------------■
・【選択科目Ⅲ】過去問から見る問われる資質・コンピテンシー
・【選択科目Ⅲ】問われる資質能力①:専門的学識
・【選択科目Ⅲ】問われる資質能力②:問題解決
・【選択科目Ⅲ】問われる資質能力③:評価
・【選択科目Ⅲ】問われる資質能力④:技術者倫理
・【選択科目Ⅲ】問われる資質能力⑤:コミュニケーション
・【選択科目Ⅲ】対策A:社会的に重要なテーマの絞り込み
・【選択科目Ⅲ】対策B:知識の蓄積
・【選択科目Ⅲ】対策C:論文のロジカル的な構成
・【選択科目Ⅲ】対策D:文章力の研鑽

注記)👉記事中の図表は、当記事の末尾よりダウンロード!
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🟦過去問から見る問われる資質・コンピテンシー

選択科目に関する問題解決能力と課題遂行能力が問われるのが選択科目Ⅲである。解答は記述式であり、600字詰めの答案用紙3枚である。

問題解決能力と課題遂行能力については、「必須科目Ⅰ 求められる資質能力とその対策」の記事にて解説しているので、本記事では省略する。なお、評価項目の専門的学識、問題解決、評価、コミュニケーションについては、「必須科目Ⅰ 求められる資質能力とその対策」の記事では有料としているので、同記事と重複するが当記事においても解説する。

筆記試験における技術士に求められるコンピテンシーの位置付け

参考ではあるが、平成30年度までの選択科目Ⅲの出題内容は下表のとおりであった。

表 平成30年度までの選択科目Ⅲの内容

設問文は「課題解決能力」から「問題解決能力及び課題遂行能力」に変更となっているが、概念欄の記述内容を基本的に同じであり、出題内容もほぼ変わっていない。したがって、基本的に必須科目Ⅲで問われる資質能力は変更されていないと考えることができる。

ただし、必須科目Ⅰと必須科目Ⅱと同様に、設問文が部門・科目に係わらずほぼ同じになったこと、小問(3)が実現にあたっての留意点などではなく、「新たなリスクとその対策」のみとなったかことが変更点であるともいえる。

表 選択科目Ⅲの問題文

🟦問われる資質能力①:専門的学識

─問題全般に適用─

■【専門的学識】[問題全般に適用]----------------------
・技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。

・技術士の業務に必要な、我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を応用すること。
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建設部門等の土木事業系部門を中心に、「我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること」に関する知識が問われる出題が、近年では続いている。すなわち、建設部門や選択科目に関する社会的に重要なテーマに関わる法令政策や施策等や社会経済、最新の技術の現状といったことを十分に理解しているか、といった観点で採点されていると考えられる。

近年であれば、問題となているインフラ老朽化や担い手不足について、
・どのような事例や問題や課題があるのか
・それはどのような原因によって引き起こされているのか
・なぜ老朽化インフラの維持管理が難しいのか
・それに対してどのように対処した施策や法整備等が進められているのか
といった知識が採点されているということである。

これらを具体的にすると、
・インフラ長寿命化計画やi-Construction
・建設DX
などの具体的な取組みについて、論述されているか否かで加点に差が付くということである。

したがって、社会的に時事的で重要なテーマについて、全体像を頭に入れるだけではなく、具体的な事例や施策、法令等について、あなたの意見を踏まえて論述できるだけの知識を身に付ける必要がある。

🟦問われる資質能力②:問題解決

■【問題解決】[小問(1)及び小問2)に適用]----------------------
・業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査してこれらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。

・複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それたによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理性に基づき提案し、又は改善すること。
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この資質能力(コンピテンシー)については、「筆記試験における技術士に求められる資質能力の位置付け」に示しているとおり、課題抽出と方策提起の2つに代われているが、前者が小問(1)、後者が小問(2)に割り当てられている。

■[小問(1)(2)]-----------------------------------------------
・小問(1):【テーマ】に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

・小問(2):小問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
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ここで悩ましいのが「問題」と「課題」の言葉の定義である。「修習技術者のための修習ガイドブック (H27.01) 日本技術士会」では、

として「目標値と現状値とのギャップ」と定義付けられている。また、「問題解決のステップ例」として次のように記載されている。

①「問題発見」(問題の明確化:目標値と現状値のギャップ)
②「問題分析」(背景、要因、原因の調査・分析・整理)
③「課題設定」(問題を解決するために為すべき課題を設定)
④「対策立案」(課題に対する実施事項の立案、採否・優先順位の決定)
⑤「実行計画書の作成」(実施事項の詳細、スケジュール、実施結果の評価基準)
⑥「対策実施」(実施、結果の確認)
⑦「評価」(結果の効果の評価)→①以降のステップ

このステップに従えば、上記ステップの①②が小問(1)、③④が小問(2)であると考えられ、そうであるとすると小問(1)は「課題」ではなく「問題」と設問されるべきであると考えられるが、このあたりが非常に曖昧である。

そもそも、「課題」を広辞苑・第6版で引くと「題、また問題を課すること。 また、課せられた題・問題」とあり、一般的には目標と現状の差を埋めるために、やるべきこと、やると決めたこと、といったように解されている。したがって、「やるべきこと+やるべきことをやる」を合わせて「課題遂行」としているものと思われる。

設問文においては、
・問題:困ったことがある
・課題:困ったことに対して何とかすべきである、あるいはこうすべきである
は、特に厳密に区別しなくてもよく、混在させてもよいくらいに考えておくといいのではないだとうろか。

そのため以下では「課題」に統一することとする。ただし、2024年度の問題ではこのあたりの言葉の混乱が整理される可能性はある。また「問題」という言葉が問題文の中で使われている場合は柔軟に対応をしたいところである。

小問(1)では課題を抽出して分析する。すなわち、課題をリストアップし、その原因や機構、及び解決上の制約といったものを分析することにより、課題解決のためには何が必要なのかが見えてくるわけであり、ここまでが小問(1)へ答える内容となる。

小問(2)では、小問(1)で抽出した課題の中から最も重要と考える課題を1つ挙げることが求められる。ここでは、どの課題が最も重要と考えるかを、合理的な根拠の基に明記する必要がある。

修習技術者のための修習ガイドブック(H27.01)日本技術士会」に掲載されている右図のように、「問題」や「課題」があるべき姿と現状とのギャップであるとすると、そのギャップが重要であるか否かの指標となり、それが最も大きいものが最重要と考えることもできる。

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