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『告白小説、その結末』を観た

 ロマンポランスキー監督の『告白小説、その結末』を観てきました。

 自分のことをなんでも知っているかのようにふるまう彼女「エル」が主人公のデルフィーヌの元に現れるところから物語は始まります。

 自殺した母との生活を書いた小説が大ヒットした小説家デルフィーヌ、ですがスランプに陥ってしまいます。
 そんなときに現れた彼女「エル」にデルフィーヌは心を許し、ついには一緒に住みはじめました。
 観ているほうとしては主人公デルフィーヌの隙の多さにドキドキさせられっぱなしです。デルフィーヌが小説のネタを書き記していたノートがなくなったのも、年代順に並べられていたはずの彼女の日記が漁られた痕跡があったのも、詳細には描かれないけれど、きっとエルの仕業なのだと思う。
 エルは謎多き女で、詳しいことはなにも語らない。けれどデルフィーヌの良き理解者であり、理解しているがゆえに時には目を逸らしたいことも指摘してくる。

 一言で言うと、怖い話だった。
 どんどん似てくるんですよ。エルの髪型や服装が、デルフィーヌに。
 いつかデルフィーヌがエルに乗っ取られてしまうんじゃないかと観ている誰もが思ったと思います。

 次回作はフィクションを書こうとする主人公デルフィーヌに対して、エルは「あなたにはほかに書くべきことがあるはずよ」と大きな瞳を見開いて言う。

 ここからは想像の話になってしまうが、きっとエルはデルフィーヌ自身なんだと思う。
 デルフィーヌはどこかで隠したい過去を文章に起こさなければならないと思っている。けれど、その思いから逃げてフィクションを書こうとする。
 けれどもけっきょく逃げられずにエルに半ば軟禁のような状態で死ぬ間際まで追い詰められてしまったのだと思う。

 もうずっとどきどきするというか「大丈夫なのか?!」という気持ちで観なければならない作品でした。穏やかなスリルというかじわじわと殺されていく感じ。実際、デルフィーヌは毎日のスープで少しずつ毒を盛られていたわけだし。

 文章をよく書く人や、ありきたりなスリルに飽きてしまった人におすすめです。

告白小説、その結末
https://kokuhaku-shosetsu.jp/


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