「機動戦士ガンダムUC:re-rise」



オルフォイスへのソネット第二部・4

おお、これは存在しない獣。
人々は、実際には知らぬまま、それでもやはりこの獣を――その歩み そのたたずまい そのうなじ、
またその静かなまなざしの光までを――愛してきた。

なるほど、存在してはいなかった。だが人びとが愛したから生じたのだ、1頭の純粋な獣が。人々はいつも、その空間を空けておいた。そしてその澄んだ 取っておかれた空間の中で、それは軽やかに頭をもたげ、そして、殆ど存在する必要がなかった。

人々は、穀物ではなく、いつもただ存在の可能性だけでそれを育んだ。そしてその可能性が、この獣に強い力を与え、それは、自分の中から額に角を作りあげたのだ。

1本の角を。

一人の生娘のところへそれは白い姿で近寄ってきた。すると、それは、銀の鏡の、そして、彼女自身の内部にあった。

「現在、グリニッジ標準時23時40分。いま、ひとつの世界が終わり、新しい世界が生まれようとしています。まもなく、首相官邸ラプラスにおいて、地球連邦政府主催の改暦セレモニーが執り行われます」

「私たちは、母なる地球の外に自らの世界を築く時代に足を踏み入れました。今宵、私たちは歴史の目撃者となります。この幸運をすべての人と分かち合い、去りゆく西暦の時代を感謝と感慨をもって見送ろうではありませんか。そして新たなる世界――宇宙世紀の始まりを笑顔で迎え入れましょう。さよなら西暦。ようこそ、宇宙世紀!」

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