夏野菜…?


とある生簀に二つの影。

「きゅうーー」
パシャンと水を上げる。
「ぅなぁーーー」
また後からぱしゃんと水を上げた。

その生簀には緑色の凸凹したウナギとツルッと紫のフグが共に泳いでいた。

道ゆく作業服たちは口走る。
「いやー、あの子ら仲良いですよね〜」
「ウナギとフグなのに喧嘩しないって珍しいよな」
「いつかくる別れが惜しまれるよ」
「おい、そんなこと言うなよ!寂しくなるだろ!」
「わ、わりぃ、悪かったよ…言い過ぎた」
「でもあの子らだけでも別の、二匹だけの水槽に移してやってもいいんじゃないか?」


「きゅーう!」
「ぅなーーあ!」
「きゅっきゅーー」
「ぅなっぅなあー」
ウナギとフグはまた一緒に泳いでいる。水を上げる遊びとか、追いかけっことか、かくれんぼとか。隠れるところはそんなにないけれど。

ぽちゃん ぽちゃちゃん

二匹は同時に喜んだ。
「きゅー!」
「ぅなー!」
そして勢いよく水面に近づいた。そして、

ドンっ

他の魚達にぶつかった。
「きゅう……」
「ぅな、ぅなぁ!」
でも二匹はめげずに音の源をたどります。
何回も何回もぎゅうぎゅうに押されたりぶつかり合いっこしながらそれを目指す二匹。

しばらくして魚達がおとなしくなる頃に二匹は集う。
「きゅう!きゅっきゅー!」
「ぅなー、ぅななぁ?」
「きゅうっ!」
「ぅなー!」
二匹にしかわからないような会話を広げ、いつの間にか暗くなる。

「ぅなー」
フグはなく。返事はないようだ。
「ぅなーーーぅなぁ!」
またフグはなく。また返事はない。

フグはなく。返事が来るまで。


すっかり明るくなった頃、フグは驚いた。
「うなぁ!?ぅなっ、ぅなぁ!!」
寝る前はあんなにいたはずの魚達が一斉に消えていたのだ。
しゅばばっと探索するように泳ぐと目の前にふよふよ動く何かがあった。

ふよふよ…ふわふわ……

「ぅな、ぅなぁ……ぅなぁ!!」
そわそわとそれの周りを泳ぎつつも食いつきたい衝動がせめぎ合い、ついにそれに負けてしまった。

口の一箇所が痛くて急激に水面に連れてこられる。

ざばぁっ

フグの視界には作業服達が見えた。口々に何か言っているようだが何もよくわからない。
もしかしたら自分達を喰らうのではないか?
もうあのウナギもこの作業服たちにくわれるのでは?
色々と苦しながらに考えても何も答えはでない。

いつの間にか水の中に戻っていたようだ。
いや、別の水の中に来たようだ?

「ぅなぁー」
フグはここはどのような場所なのかをなきながら探索した。

探索しようとひとなきした後に意外な鳴き声がした。

「きゅー!」

短時間かもしれない。実際そうかもしれないが、とてもとても懐かしくきこえた。
「ぅなぁーーーー!!」

案外ここは前より狭い場所だったようで探索はすぐに終わった。ウナギと一緒だったから早く終わったのかもしれない。

それから二匹はまたいつものように早泳ぎしたり戯れたり水をあげたりして遊んでいた。

作業服達はつぶやく。
「二匹用の水槽作って正解だったな!」
「だなぁ〜慣れるのも割と早い方だし、これはこれで大成功!んで今夜成功祝いってことで飲みに行かね?」
「このぉ〜こンの酒飲みめが!ただ酒が飲みたいだけだろ?」
「いやいや、家で飲ませてくれないんすよ〜勘弁してくださいよ〜」
ギャハハと笑い合う作業服達をよそに、水槽で二匹仲良く泳いでいた。

「キュキュッ?」
「ぅなぁあ!」


おしまい

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