「M‐1」と「THE SECOND」の対比とSECOND感想
2023年5月20日に行われた漫才の大会「THE SECOND~漫才トーナメント~2023」が、良かったので感想をまとめておく。
見終わってから、じわじわ良さがこみあげてくる大会だった。それはきっと、細部まできっちり丁寧に作られた番組だったからだと思う。大会の仕様の多くに「なぜこうするのか」という理屈が通っていて、それが番組全体の質を上げていたと感じる。個人的にいうと、今大会のMVPは制作スタッフである。誠実に作っている姿勢が伝わってきた。
まず、大会の構造がM‐1との対比になっているものが多いと思ったので、下記にまとめてみた。
「M‐1」と「THE SECOND」との対比
二つの大会で対比になっている要素が多いと感じたので、わかる範囲でまとめてみた。
SECONDは、М‐1を軸に作られていると感じる。M‐1へのリスペクトをもって制作したのではないだろうか。
「M-1」⇔「THE SECOND」
番組イメージカラー
赤と金 ⇔ 青と銀トロフィーの形状
金色・角が丸い・ピカピカ光る塗装あり ⇔ 銀色・角ばっている、塗装なし
その上、セカンドのトロフィーに塗装がないのはM‐1との対比だけでなく、「いぶし銀」の大会だから、だと思われる使用BGM
洋楽中心 ⇔ 邦楽中心ネタ時間
4分(短) ⇔ 6分(長)大会形式
全体と戦う ⇔ タイマン形式
M‐1は決勝ラウンドは多数決だが、ファーストラウンドでは出場者全体で高得点を競うので、SECONDのタイマン形式とは対比に感じた審査方法
プロが審査 ⇔ 一般観覧者が審査プライベートへの密着取材
あり ⇔ なし
出演者のプライベートな取材VTRは流さなかったエントリーナンバー表示・アナウンス
あり ⇔ なし
ベテランの大会なので、出場者名だけでよいという判断か?出場者の紹介写真
裸で格闘技風 ⇔ 衣装を着た出場者+センターマイク
そして、セカンドは撮影した写真だけじゃなくて、ネタ中の動画から切り出した「静止画」も使ってるような気がする。臨場感ある画が多かった司会者
今田耕司 ⇔ 東野幸治
「対比」を考えるとしっくりくる配役
思いついたものを書き出してみた。はっきりと明言されていないが、THE SECONDはM‐1の対になる存在をイメージして作った大会のように感じた。
「THE SECOND」のなぜ?には理由がある
「なぜこうするのか?」に理由をもたせたことが、大会の質につながったと感じる
制作スタッフのインタビュー等を読むと、番組の仕様にはっきりとした理由をもって決定していることがわかった。以下、いくつか要約した。正しいニュアンスで知りたい人は検索検索!
なぜ匿名の一般の方に審査を任せるのか?
「プロの審査員の方に非難が集まることを避けたいから」なぜ一般審査員に、わざわざ審査コメントを求めるのか?
「自身のいれた点数に責任感を持ってほしいから」なぜ予選の配信動画を売らないのか?
「ネタはお笑いの方たちの大事な商売道具なので、消耗してほしくないから」
他、いろんな番組に対しての「なぜ」の理由を言語化している。
番組を、ふわっとしたノリで作らないで、一つ一つの選択に「意味」を持たせたことが、上質な番組作りにつながったと思う。
「THE SECOND」の良かった部分
その他の良かった部分を挙げる。
トーナメントでのタイマン形式
これ、「あの○○と△△が対戦するんだ!」っていう、芸歴を重ねてきたコンビ同士の戦いという「熱いストーリー」が出来上がるところが良かった。決勝の対戦相手決定の抽選会とか、プロレスの調印式みたいだった。
そう、プロレス的な良さがある。M‐1はK‐1。SECONDはプロレス。テーマ曲「バラ色の日々」の選曲と、それを使ったOPムービー
テーマ曲、大会の趣旨にあってるだけでなく、「ゆったりとしてるけれどもリズムに乗りやすい」曲調で、テーマソングとしてぴったりだった。
そしてその曲に合わせた動画もすごくよかった。静止画、動画、効果音、出場者の音声、ナレーションの組み合わせのタイミングが見てて気持ちよかった。出場者紹介のあたりは特に何度もみてしまう。
一番良かった部分は「舐めてないところ」
そして一番良かった部分は、制作スタッフが、出場芸人、一般審査員、視聴者に対して舐めてないところ。リスペクトと、信頼を感じた。
舐めてないから、出場芸人を決して下げないで丁重に扱ったし、一般審査員に「生放送で得点をつける」という大役を任せたし、細部までこだわって番組を視聴者に届けたんだと思う。
相手への信頼も感じるし、制作側の「こちらを信頼してくれ!」という気持ちも感じるしで、そういう誠実な態度がとてもよかったと思う。
THE SECONDは、見ていて心が動く、さわやかで熱い大会だった。制作スタッフがMVPだったと思う。
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