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耐震ビル免震ビルでもビルから強制退去の可能性

こんばんは、リスクマネージャーの見上です。
今日は首都直下地震に対する政府業務継続計画を読んでみたら気になった点について書いてみます。
ちなみに、被害想定や継続計画には民間の建物についての具体的な記述はありません。けれども、政府が計画している業務継続計画に書かれている「最悪の想定」から、勤め先などのビルがどのように環境となるか考えてゆきましょう。

政府が計画している業務継続計画を確認

政府が考える最悪の想定には以下の項目が並んでます。
※政府業務継続計画(首都直下地震対策)

①停電、商用電話回線の不通及び断水は、1週間継続
②下水道の利用支障は、1か月継続
③地下鉄の運行停止は、1週間継続。JR及び私鉄の運行停止は、1か月継続
④主要道路の啓開には、1週間を要する

311の日、首都圏で停電は無かった

東日本大震災が起きたあの日、首都圏では停電は発生しませんでした。
鉄道は安全確認のため停止していましたが、オフィスビルやマンションで電灯は灯り、暖房も使えました。道路の信号機も動作しており、一時的に停止したエレベーターも順次動作を始めました。そのため、現在ある避難計画(緊急対応計画)の多くが1週間の停電を前提にしていないものが作られているように思います。

国は計画作りの前提を「1週間の停電」と想定しています。そこで私たちも1週間停電することを前提に「留まるか、動くか」考える必要があります。

ビル管理会社に確認したことはありますか?

国や都の被害想定、テナントビルの説明も「免震耐震」「非常電源設備」の記述はあってに、「1週間、全館停電した場合の対策」について詳しく書かれているケースを見たことがありません。

ビルの躯体(ビル本体)が震度7に耐えても、ほとんど揺れない免震ビルでも、電気が失われると、ビルの安全機能は一切動作しなくなります。

  1. ビルの入り口の電気錠、フロアの電気錠、居室内の電気錠は解放されるか、手動での施錠解錠が必要になります。

  2. 廊下にある避難灯はバッテリーがある間60分から90分程度で消えます。

  3. 監視カメラの多くはバッテリーを持っていないため、すぐに停止します。

  4. ビルの管理センターは、ビル全体をモニタリングできず安全を確保できなくなります。

  5. ビル管理会社社員も退去する可能性があります。

ビルが物理的に全館閉鎖せず、停電によりすべての電気錠が解錠され、誰でも自由に出入りできるようになった時、何がおきるでしょうか?

  • 人が外部から風雨や寒さから逃れようと侵入する

  • 電気錠が動作しないため、どこにでも侵入を許す可能性があります。

  • ビル内、オフィス内に籠城され、PCなどの金目のものが盗難される可能性があります。

  • オフィス内の食料や水目当てで、ビル内の人間が襲われるかもしれません。警察も消防も呼べません。ビルの警備も呼べない可能性が高くなります。

  • しかも監視カメラは動作しないため、証拠は残りません。

  • PCは買い換えられるかもしれませんが、PCの中のデータはお金に換えられない価値があるかもしれません。

つまり、ビルは停電によりとても危険な環境を作り出すことになります。

発電機があっても全館退去

私は以前、横浜みなとみらい地区にある有名なオフィスビル内で勤務した事があります。ビルの地下には、地域の発電機などが装備されていることで有名です。
近くの公園は広域避難所にも指定されています。

ある日ビル管理会社へ「大規模地震が発生し長期間停電した時、ビルはどのようになるか」総務経由で文書で質問をしました。回答は
「全館閉鎖、物理的施錠を実施、保安要員は退去します」
という回答でした。

発電機はテナントビルすべての電気を賄う能力はありません。
エレベーターを安全に停止させたり、避難誘導灯を長時間維持したり、最低限必要な分だけの電気しか提供されません。

消防法の関係で、燃料の貯蔵量には制限があり、多くのケースで最低限の電気を72時間維持するだけの能力しかありません。
仮に燃料を使い切ってしまうと、本当に一切の電力を失うことになります。
ビルが安全で、外部からの侵入を防ぎ、顧客の資産を確実に守れる段階で、全館閉鎖するという決定は十分に納得できるものです。

電気錠、監視カメラが無い世界

私たちはもう長いこと電気錠でのドア開閉や、監視カメラによる安全確保に慣れてしまっています。

ビルの出入口すべてを知っている人はいますか?

すべての出入口に人を配置し、鍵で開け閉めをして、エレベーターを使えず、階段で上下階の移動をしながら、パソコンも電話も使えない、水道もポンプが動かずに使えないオフィスで仕事を続けることは可能でしょうか?誰が考えても無理であることは明白です。

長期間の停電により治安は悪化する

東日本大震災の時、首都圏は停電しておらず電気を使うことができました。人は整然と列をなして帰路を歩きました。
また点検が終わるまで駅周辺で待って、深夜に運転が再開された鉄道で帰った人も多いでしょう。

首都直下地震被害想定は、あの東日本大震災発生時と違って、最悪1週間の停電が想定されています。
繰り返しになりますが、街から一切の電灯が消え、監視カメラは動かず、警察や消防を呼ぶこともできなくなります。そうなった都会で何が起きるでしょうか?

どんな悪さを働いても、警察は来ません。
そこで想定すべきなのが治安の悪化です。

施錠を怠ったビルは、雨風から身を守るだけでなく、犯罪を起こすためにも利用される可能性があります。密閉されたビル内で暴行され、大声を上げても、ビルの外に届かないかもしれません。

男女ともに、安心できる地域まで逃れるためには、慎重で、しかし迅速に、安全を確保できる場所をリレーしながら進む必要があります。

是非お勤め先で、ビル管理会社へ「1週間停電することを前提に、首都直下地震が発生した時”このビルはどうなりますか”と確認なさってください。

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