タイムリミット

その出来事はあまりにも突然だった自分の余命を知らされ、長くとも半年だということを知ったからだ。幼い頃から体が弱く外で活発に遊ぶことは無かった。だから私は彼に惹かれたのかもしれない。私にない活発さを持っていたから。
そして念願叶って私は彼と付き合い同棲をしていたのだが、このような事が起こってしまってはどうすればいいかわからず目の前が真っ暗になった。私には時間が無い。だからこそ彼に最後の愛と別れを告げなければいけないと思った。これは私のそんな別れの物語

「あのさ、最近俺にたいして冷たくない?」
彼にそんなことを言われ私はドキッとしてしまった。
「そ、そんなことないよ私が君に対して冷たくする理由がないじゃん」
嘘だ。私は余命を告げられた時から、前のように彼に接することができなくなってしまった。
「嘘つかないでよ。もうだいぶ長い付き合いでしょ、俺に話せないようなことなの?」
そう言い彼はとても悲しそうな顔をした、私は胸が辛くなった。でもこの事実を伝えると彼をもっと悲しい目に合わせてしまうような気がして言い出すことが出来なかった。
「嘘なんかついてないよ、嘘なんか…」
と言い淀んでしまった。
「そっか…俺ちょっと外の空気吸ってくるわ。」
そう言い彼は出ていってしまった。
「ごめん…なさいいつか、いつか話すから。」
そう私は1人呟くのだった。だがそう言ってられるのもそう長くは続かなかった。私は出かけた先で倒れ、緊急搬送された。
「余命が長くてもあと1ヶ月半になりました。」
そう告げられ私はあの日のように目の前が真っ暗になった。緊急搬送されたことで彼の耳にも私が倒れたことが伝わり、彼が病室に来たので私は全てを打ち明けることにした。
「ごめんね…私長くてもあと一ヶ月半の命なの、最初は半年だったんだけど今回倒れて、1ヶ月半になっちゃったの早く伝えられなくてごめんね…」
「なんで言ってくれなかったの?俺ってそんな頼りない?」
「違う!君に余計な心配かけたくなかったの…」
「余計な訳ないじゃん!彼氏だよ!彼女に何かあったら助けるのが普通でしょ!」
そう言われ私の目からは涙が溢れてきた。
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけとこれから私に縛られて生きて欲しくないよ…だから…だからさ私たち別れよ…」
「なんでだよ!別に縛られたっていいよ!君と入れるならそれでいいんだよ!」
そんなこんなをしている内に面会時間が終わり彼は帰らざるをえなくなった。
「私だって君と一緒にいて一緒に生きたかった。でも、これ以上君に辛い思いをしてほしくないんだよ。」
1人、病室にいる私は彼への手紙を書きながらそう呟きながらペンを走らせるのだった。
次の日から彼が面会に来ることは無くなった。辛いけれど仕方の無いことだと思った。私の命のタイムリミットまで残り数日となったある日、彼は白いタキシードを着てまた私の前に現れた。
「2人だけの結婚式をしよう」
そう言われウェディングドレスを着ることになり、式も誓いのキスと愛を誓うだけの私に配慮したものになっていた。
「お義母さん達からメッセージ貰ってきたんだ。」
そう言い彼はスマホで撮った動画を私の前で流した。全てを見終わったあと私の顔は涙でグチャグチャになっていた。
「今日は、こんなものだけどさ。病気を直したら本当の結婚式を挙げようよ!みんな呼んでさ!」
「うん!」
そう私は彼にかえした。

彼女と俺の願いは叶うことは無かった。1度は持ち直した彼女も完治することはなく亡くなってしまった。病室の手入れをしていた看護士さんから手紙を渡された。
「彼女さんの枕の下に置いてあったのどうやらあなた宛のようだから読んであげて。」
「ありがとうございます。」
そう言って俺はその場で手紙を読み始めた。
書いてあったのは、一緒にいられて幸せだったこと 急にあんなことを言ってごめんということ 大好きだということ。俺は人目も憚らず病室の前で自分の声が枯れるまで泣きわめいた。
何とか落ち着きを取り戻し家に帰り部屋の棚の中にある一つの小さな箱を取り出しこう呟くのだった。
「結局渡せなかったな…」
そう言い重くなった体を引きずり涙を流しながら広くなったベッドに寝るのだった。

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