感想のようなそうでないような―『舞台メディスン』―

他の方の観劇後の感想を読むにつけ
読むだけではフェアじゃないような心持ちを勝手に持ってしまったので、不肖ではあるが言語化できる範囲で読まれても(たぶん)大丈夫な範疇で、酔っぱらいの勢いであげておくことにした。ネタバレがあるのでご注意。



舞台メディスン

あ、倒れる
その倒れ方に惚れ惚れする
音は?重さは?
なんて自然に綺麗に倒れ込むのか

ジョンは2度倒れる
弾き飛ばされて倒れるのも含めると3度
倒れ方が好きだなんて
舞台の感想として相応しいのかわかりかねるが
綺麗だなと思ってしまったのだから仕方がない

舞台上ではそれどころではない熱量の渦なのに

白い指先が繊細そうに神経質そうに
世話しなく動いている
その手先が細かくふるえている
自己紹介をして握手をしている時の距離がおかしい
「男でくせ毛で色白」
そんな言葉で語る以上に雄弁に人となりを示している

困惑と緊張と期待と
パジャマの裾を両手で握りしめながら
ジョン・ケインの物語は始まっていた

観劇後はひたすら呆然としていたように思う
熱量に飲み込まれ思考も飽和状態
家に着いてからようやくあれはなんだったのかと
何だかよくわからないけどとんでもなく凄かった
という語彙力と感性の貧困さの極みみたいな感想

なんだろう
ずっとそこにいるのはジョン・ケインなのに
スポットライトの下で自分語りをしている姿も
混乱の中で忌まわしい記憶を引き出されてる姿も
剥き出しの心の悲痛な叫びを全身で放出している姿も
綺麗だなと思っていた

重ね重ね舞台を観ての感想としていかがなものかとは思う。すすり泣きの聞こえる中で、綺麗だなんて思ってる時点で、ちょっとそれってどうなん?大丈夫?な自分を自覚している。
もひとつ言うなら、ジョンがブースで着替える時は、どうしたって、生着替え♪となって意識が逸れている。下手側からガン見するのは、目の前のメアリーに失礼だと思って、顔は正面のまま、目だけそちらを向こうとしてだいぶ無理をした。反省している。

がそのあと、ジョンは何事かを呟いている。音にならない声で。かぶりを振りながら。
破り捨てられた台本に、徐々に冒頭の自己像が覆されていく。ジョンがこうありたいと思っている姿から、遠ざけられていく。そうして冒頭の場面へ。

解釈は人それぞれありそうということなので
真面目に考えてもいるが割愛
はダメかな。いいかな。
どちらかと言えば、ジョンの頭の中の出来事かなと思っていた。二人のメアリーが赤と青の衣装なのも。
だけど、メアリーの涙という感想を見かけて、優しさの在処を考えると、わからなくなってくる。

ラストの詩の風景が美しくて
暗転までの時間がやはり切なく綺麗で
不確かな事ばかりの中で
訪れた安寧が長く続けばいいのにと思う


#舞台メディスン

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