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都道府県別罷免要求率マップ 相関係数に滲み出る党派性

導入

日本では衆議院選挙と同時に、最高裁判所裁判官の国民審査が行われます。本記事では、去年のハロウィン、2021年10月31日に行われた国民審査での、罷免要求率の都道府県別マップを作りました。

ある回のvideonews.comにて、沖縄県では罷免を可とする割合(以下、罷免要求率と呼びます)が全国平均と比べて2倍近く高い、ことを知りました。リンク先の動画のPart2、6:15頃にこの説明があります。そこで、罷免要求率の都道府県別の分布や、政党得票率との相関が気になりました。

都道府県別マップ

総務省のデータをもとに、エクセルで分析をしました。2021年には11人の裁判官の国民審査が行われましたが、各都道府県で単純に平均を取り、罷免要求率により都道府県を色塗りをすると以下の図のようになります。

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図1 罷免要求率の都道府県別マップ

日本地図は白地図ぬりぬりのものを使いました。各都道府県の罷免要求率を表にまとめると以下のようになります。衆院選の比例ブロックに従った区分けになっているのは作者の趣味です。

表1 都道府県別罷免要求率


分析

罷免要求率が最低の都道府県は福井県(3.70%)、最高は沖縄県(14.80%)です。二番目に高いのが東京都(9.94%)であり、唯一10%を超えている沖縄県では際立って罷免要求率が高いことが分かります。おおまかな傾向として、都市部と北海道、沖縄県では罷免要求率が高く、地方部では罷免要求率が低いと言えるでしょう。

表1中の全国平均は全国の投票のうちの罷免を可とした票の割合を指しています。一方、表中の数字を単純に足して47で割ると5.84%となります。「全国平均」の6.78%よりも低くなるのは、人口の少ない地方の都道府県の罷免要求率が低い傾向があるためでしょう。

地方と都市での罷免要求率の違いは、内閣支持率の違い、政党支持率の違いによるものではないかと予想します。自民党を中心とした内閣への信任の度合いが、内閣が任命する裁判官への信任の度合いと相関しているのではないでしょうか。これを検証するため、政党得票率と罷免要求率との相関を調べました。

政党得票率との相関

政党得票率は、罷免要求率と同じく総務省のホームページを参考にしました。各都道府県の国政政党の(相対)得票率と、罷免要求率は以下の表の通りです。選挙時に国政政党は、自由民主党、立憲民主党、公明党、日本維新の会、日本共産党、国民民主党、NHK党、れいわ新選組、社会民主党の9つありました。11の比例ブロックのうち、北海道ブロックと東京ブロックではこれら以外の政治団体も候補者を擁立しました。結果として、9党の得票率の合計が100%をわずかに下回り、各国政政党の得票率が若干小さくなっています。そのため、北海道と東京都については9党の得票数の合計を母数とした割合を算出しています。

表2 各都道府県の罷免要求率と政党得票率1
表3 各都道府県の罷免要求率と政党得票率2

表2、3中の47都道府県のデータから罷免要求率と政党得票率の相関を取ると、以下のようになります。

表4 罷免要求率と政党得票率の相関係数

自民党と強い負の相関を示していることが最も特徴的であり、日本共産党、れいわ新選組とのやや強い正の相関も目立ちます。それ以外の政党との相関は比較的弱いです。相関関係のため解釈には慎重になる必要がありますが、以下のように解釈できると思います。自民党を中心とした内閣が任命した裁判官であるため、自民党を支持する人が多い都道府県ほど、裁判官の罷免を望む人が少ないと言えるのではないでしょうか。また逆に、左派色が鮮明な日本共産党、れいわ新選組を支持する人が多い都道府県では、自民党への批判的姿勢が裁判官罷免要求につながっているのかもしれません。
罷免要求率は普段あまりクローズアップされませんが、党派性を含みうる選挙データです。自民党支持や内閣支持の程度を考えるためにも、選挙データの一つとして罷免要求率も分析の余地があるのではないでしょうか。

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