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ハッピーバースデー、トゥーミー。

誕生日は、みんな浮き足立つと思う。
そわそわしない?だって年に一回のお祝い。この世に生を受けた日。

今回は誰からおめでとう言われるかなとか期待しちゃう。
家族や大切な人からおめでとうって言われる、時別な日。
いっぱいお祝いしてくれる、優しい日。




生まれて来なければって、どうして生きてるんだろうって思う
バースデーブルーだとしても、結局は嬉しくなっちゃう日。






そんな日に、嫌でも思い出すことがある。








中学生の頃、毎月誰かの誕生日になると、いつもより早めに教室に来て、
クラスメイト達は黒板に大きく誕生日の子の名前を描いていた。

白のチョークを使って、真ん中にその日誕生日の子の名前を大きくかいて、
文字を縁取って。周りにいろんなものをみんなが描いていく。

お祝いして喜んでもらえたら良いなあって思いながら私もチョークをもって、
ハートなんかを描いてみたり。

なにもなかった黒板は、数十分で可愛く、
その頃の年相応な可愛さとアイデアで埋め尽くされていった。

クラスの人気な子であれば、それにプラスしてお菓子類をロッカーの中に詰め込んでみたり、ちょっとしたサプライズをしてみたりっていうのもある子もいた。

黒板におめでとうって名前を描くのは、分け隔てなく毎月のように描かれていた



クラスには、私と同じ誕生日の〇〇ちゃんがいた。

クラスの人気者で、明るくて優しくて面白い子。
いつも何かに選ばれて、中心のグループにいた子。
対して私はそうじゃない。…まあ、それは、良いとして。


誕生日になった。

今回も、クラスメイト達は黒板に大きく誕生日の子の名前を描いているはず。
だって、同じ誕生日の別の2人の時も、きちんと2人分描いていたんだから。

〇〇ちゃんがメインで全然良いし、私は小さくても、
描かれてれば良いや!だなんて思っていた。
おめでとうがなかったとしても、黒板描かれてれば良いやって。



期待をしてしまった。







私は一息ついて、
教室のドアを開けた。










黒板には同じ誕生日の子だけ。私の名前はなかった。



クラスメイトがびっくりしたような顔をしている。
少し時が止まるけどすぐに動く。でもなんだか動きがぎこちない。

悪意があるのかもわからない。

誰かが私を見てヒソヒソ言っている。
口元が笑っているような、気がして。
でも、本当かどうかはわからない。

気づいたら、担任の先生が来た。とりあえず席に着く。
その合間の記憶はあまりないのだけれども。それでも良い。


「あら、今日は、〇〇さんのお誕生日なんだねえ」

 そうなんだよー!って嬉しそうに笑う、その子。

「みんな拍手〜」

 次々に送られる拍手。おめでとう!の声。
 私ではない。その子に向けられた拍手。


「はいはい、盛り上がらないの(笑)」



 …ねえ、先生。
 先生も、人だもん。
 忘れるよね。先生。



 「…はい、それじゃあホームルームを始めま」

 「先生」

 思わず、手を挙げてしまった。
 みんなと先生の目線が私に向く…その前に。

 できるだけ明るく。悟られないように。

「私も、今日、〇〇ちゃんと同じ誕生日なんですよ〜」
「あら、そうなんだね、おめでとう〜!はい拍手〜」


拍手は鳴っていたと、聞こえていたと信じたい。
でも、あまりうまく思い出せない。










その日、学校終わって帰ったら、
家族や大切な人からおめでとうってしてくれたよ。
いっぱいお祝いしてくれたの。


だから、ね?

生きてて良いよね。私。


ハッピーバースデー、トゥーミー。





創作だと思った?



ノンフィクションです