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今こそ、この本『就職しないで生きるには』

『就職しないで生きるには』レイモンド・マンゴー
『Cosmic Profit』 Raymond Mungo

この本を買ったのは、わたしが19歳の時だ、わたしはこの本にひどく感銘した。そして影響された。だが現実はきびしく、結局、わたしは企業に就職した。そして、人生の大半を企業で過ごした。この本のあとがきで訳者の中山容さんはこのように書かれている。

「ほんやら洞」の場合にそくしていえば、わたしたちの夢は、この空間の中で自然破壊につながらない生計のたて方を学びながら、体制にとりこまれないで、身売りをせずに生きのびる「生き生きした人間関係をつくりだすことだった。中尾ハジメは「もしここでおもしろいことが起きれば、ビジネスは赤字でもいい」といいきった。しかし現実はきびしく、わたしたちはなんの技術をもたない。キッサ店はやむえない現実への妥協だった。それでもわたしたちはあいかわらず実業への夢をもちつづけている。

この本の中でレイモンド・マンゴーも、そのことに気づいている。彼は、60年代からから70年代への新しい文化の進化を経験してきた人たちが追求してきたのは、体制からのドロップアウトのつぎに、それなら、どうやって生きのびるか、「生計をたてつつ、同時に自由で、たのしめるしごと、マンゴーのことばでいえば根源的利益をどうやってつくりだし、どうやって守りぬくかという問題だった。その実態をみ、それについて考えることが、この本のねらいだ。マンゴーのこの努力の成果にかならずしも楽観的ではない。「もし根源的利益なるものを発見したしあわせな人たちと出会いたいと願うなら、不振になった、あるいは不成功だったビジネスこそ調査すべきではないか」ともらしている。強い国家をスローガンに当選したレーガン政権の合衆国では、ますますマンゴーの、そしてわたしたちの憂いは深くなるかも知れない。希望にみちた60年代のカルチャーは、もはや死滅したと断言する人さえいる。しかし、いまも多くの若い人々が地球的な規模でものを考え、実践しようとしている。

『就職しないで生きるには』レイモンド・マンゴー/中山容訳


この本が日本で出版されて約40年ほどの歳月がながれたわけだが、ここで中山容さんの書かれたことは、まったく古びていないと感じる。というより、ますます深刻化を呈している。今もして、我々は、この問題を突きつけられている。
だが、レイモン・マンゴーや「ほんやら洞」があった時とは違う条件が現代我々にもたらされそうとしている。
そう、ITによる改革である。そう、「この空間の中で自然破壊につながらない生計のたて方を学びながら、体制にとりこまれないで、身売りをせずに生きのびる「生き生きした人間関係をつくりだすことだった」、その考えをIT改革がその実現に向けて手助けをしようとしている。重要なのは、企業がITを利用するのではなく、もはや忘れさられたといえる、ヒッピーカルチャー、石器時代のレイモンド・マンゴーの考え方と、最新の情報技術を結びつけることでないか。
これからは、その方法で多くの人間を幸福に導いた者が、真の勝ち組といわれる時代がくる。
そう、今こそ、就職しないで生きるにはが、バイブルとなる時である。


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