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私の嫌いな16項目のひとつとしての「成功した友人」

イギリス北部の街、マンチェスターは今日あたりはさぞかし冷え込んでいることだろうな想像する。

文学青年、しかもトレンドじゃないオスカー・ワイルドに心酔し、自身お気にいりのスター、アクターなどの写真を雑誌から切り抜いてはコレクションしていたという。ジャン・マレー、テレンス・スタンプ、トルーマン・カポーティ、ジェームス・ディーン、ビリー・フューリー・・・。そんな、ひねくれた引きこもりだった文学青年。嗚呼、パーティに着て行く服もない。

THE SMITHS BY LAWRENCE WATSON

オスカー・ワイルドで思い出すのは幼い頃「幸福の王子」を読んで私は大変ショックを受けた。主題は、自己犠牲の尊さ、虚しさか、またもっと深いメッセージが込められているのかは無知な私には今でも分からない。
ただ、自信をもっていえることは、人間は、自己犠牲に関して、率先もしていないし、かといってムシを決め込むスタンスにも消極的であるといったところである。つまり、それらはを空に浮いている、にも関わらず、人はこの「幸福の王子」に強烈に惹きつけられるのだ。

オスカー・ワイルドの有名な言葉としてまたこんな発言もある。
「善人はこの世で多くの害をなす。彼らがなす、最大の害は人々を善人と悪人に分けてしまうことだ」

肉食、マイク・ジョイス、ジャーナリスト、イギリス王室、弁護士、ジェット・コースター、レコード会社、犬、カナダ、成功した友人・・・。
その偉大なるカリスマの「嫌いな16項目」というリストを読んだが、そのなかの”成功した友人”という項目に思わずニヤリ笑ってしまった。

このカリスマを語るに、その守護神たる壁に貼られしスターたちへの忠誠的な愛、まさに王子に身を捧げともに死んでゆくツバメのような、そして、て、肉食、王室に関する燃えさかんばかりの増悪へ炎。そう、このカリスマこそが、悪人でもないが、善人でもないのだ。

権力に関して、あからさまな嫌悪をしめすのではなく独自のニュアンスで揶揄する。揶揄し返す・・・。
きっと、それらは、憧れのスターの切り抜きが所狭しと貼られた引きこもり部屋、ベットルームで日々、怨念のごとく日々養われ磨かれたものだろう。成功した友人の噂話にイラッとしながら。

きっと、どんな人間の血にも、このモリッシーたる成分の何パーセントは流れているのではないだろうか。
その血の濃い人間ほどこのカリスマ性に強烈に引き寄せられていく。これは、まるでオレじゃないか、ぼくじゃないか、と。若いころから、本を読み漁り、同世代の誰もが関心をしめさないような古い映画に心をときめかせ、雑誌を切り抜き、学校や社会を呪い、悪態をつき、とはいえ、立派な不良にもなれなかった私。だけど、何かが変わるのを、訪れることを持っていたあの頃・・・。そう、これはまるで私だ。

カリスマが十代の頃、ジョニー・マーと出会わなければ、どうなっていただろうかと考える。
きっと、今ごろマンチェスターの人気のないパブで、生ぬるいギネスを飲みながらバーテン相手に辛辣なジョークを飛ばしていることだろう。


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