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【BAL】トレードに勝ち負けは存在するのか?

公式から↑のポストが出た瞬間、心の中で「やるやないか Eliasゥ!!!」と叫びました。

どうもこんにちは。ジャンさんです。
先日発生したBAL⇆MILのトレード、衝撃的でしたね。あのESPNの記者Jeff Passan氏も"A blockbuster trade"と表現するほどのトレードでした。
ローテ最上位となるSPを求めていたBALにとって、コービン・バーンズの加入はまさに画竜点睛というべきでしょう。

そしてビッグネームが絡むトレードには必ずと言っていいほど、そのトレードの価値を"勝ち負け"という言葉で片付けるような言説が世に流れ始めます。
Win-Win,Lose-Loseという言葉がこの世に存在しているので、Win-Loseに当てはめたくなるのは自然なものなのかもしれません。(筆者もバーンズのトレードはBALが儲けてないか?と咄嗟に表現しました。)

しかしながら、今回のような現在と未来を交換するトレードを勝ち負けと表現するのはどうなん…?という気もします。

今回はトレードの勝ち負けというものはどのようなものなのか、そもそも勝ち負けと表現することは適切なのかを、BALのトレードに着目しながら探っていこうと思います。


1.Corbin Burnesコービン・バーンズ

【成立】2024/01/31 (現地時間) 
▼ BAL Receive
コービン•バーンズ(RHP)
▼ MIL Receive
ジョーイ•オルティズ(INF)
DL•ホール(LHP)
2024年CBP Round Aドラフト指名権 (全体34位相当)

① BALの意図

・バーンズ獲得
冒頭でも触れましたが、BALはかねてよりSPローテのクオリティを上げられる選手を求めていました。今オフではディラン•シース(CWS)やアーロン•ノラ(PHI)の獲得も視野に入っていたようです。
23年に192IPを投げたギブソンが退団、ブラディッシュ/ロドリゲス/クレーマーはまだ若く、ミーンズは怪我明けと、SPローテのクオリティUPどないすんねん状態になっていましたので、そこにきてのバーンズは渡りに舟だったのではないでしょうか。

・有望株2人&ドラフト指名権の放出
詳細は割愛しますが、ホール/オルティズには明確な強み(FB/守備)と弱み(制球/パワー)があります。特にオルティズは同ポジションの選手も鑑みると余剰となっており、放出もやむなし状態でした。
正直相手がシースでもビーバー(CLE)でもルザルド(MIA)でも、最低限この2人はパッケージには入っていただろうなと思います。

ドラフト指名権?バーンズのQO補償で翌年相殺されるからヨシッ!ぐらいのテンションなんじゃないですか?(適当)

② MILの意図

・バーンズ放出
本人がFA前契約延長はしないと明言していたため、24年オフに必ずFA市場に出る&代理人は"あの"ボラス氏であるので、MILとの再契約は難しい。
QO補償だけ残してFA放出となるよりは、サラリーダンプもかねてのトレード放出したほうがいい、というのがMILのバーンズ放出意図だと認識しています。

・有望株2人&ドラフト指名権の獲得
バーンズ、ウッドラフ、ハウザーを放出したので投手、特にSPとなれる選手が必要&アダメズ放出も視野に入っているため、INFが欲しい。
この二つの意図があるからホールとオルティズが求められたのではないかと思っています。
※個人的には、本職3Bかつ打撃ツールに優れたコビー•メイヨも対価に要求したのではないかと予想しています。

指名権?バーンズのQO補償が1年早くにやってきたような感覚なんじゃない?全体34位指名相当らしいし(適当2回目)

2.Kyle Bradishカイル・ブラディッシュ

【成立】2019/12/04 (現地時間) 
▼ BAL Receive
カイル・ブラディッシュ(RHP)
アイザック・マットソン(RHP)
ザック・ピーク(RHP)
カイル・ブルノビッチ(RHP)
▼ LAA Receive
ディラン•バンディ(RHP)

① BALの意図

・バンディの放出
2017~2019年にかけてフル稼働し、3年連続の規定投球回到達。まさにチームの屋台骨となる活躍でした。しかしながら17年の地区最下位、18年の開幕スタートダッシュ失敗で、18年TDLでマニー•マチャドを放出するなどしてチームは再建に舵を取りました。成績が軌道に乗ったところでのバンディ放出は既定路線だったのかもしれません。
しかしながら、TJ手術や右肩の石灰沈着性腱炎の影響か、10代でMLBデビューした頃と比べて球速が落ちていたことを鑑みると、BAL側がバンディにある程度の見切りをつけていたのではないかとも感じます。

・若手4投手の獲得
チームは再建真っ只中であるため、未来を見据えた上の獲得でしょう。
18年TDLにダレン・オデイやケビン•ゴーズマンを放出したので、足りなくなった投手の補充をしたイメージです。
ブラディッシュは当時LAA内21位プロスペクトで、彼をメインパッケージでとする投手複数人とのトレードとなったようにおもえます。

② LAAの意図

・バンディの獲得
18年の大谷翔平のTJ手術、Tylor Skaggsの19年シーズン中の急逝などあり、19年LAAの投手運用は異常なレベルで厳しい状況になっていたのではないでしょうか。最もイニングを消化したのはTrevor Cahill、なんとそのイニング数は102.1IP。2017~2019年にかけて3年連続で規定投球回に到達したバンディは、投手陣の立て直しが必須なLAAにとって格好の獲得対象に映ったことでしょう。
実際イニングイーターがチームにいると、若手起用も含めて格段に投手運用がやりやすくなりますしね。

・若手4投手の放出
LAAは18~19年にかけて多くのSP候補となる若手をMLBデビューさせています。パトリック•サンドバルやホセ•スアレスを筆頭に、現在でもLAAで投げている当時20代前半の選手が多くデビューしていました。
彼らがローテに定着し、いずれ大谷も投手に復帰することも視野に入れると将来的に投手に余剰が生まれるので、多くの投手をMLBレベルでイニングを消化できるバンディ獲得のための対価にしたと思われます。

3.James McCannジェームズ・マッキャン

【成立】2022/12/21 (現地時間)
▼ BAL Receive
ジェームズ•マッキャン(C)
金銭
▼ NYM Receive
ルイス•デ•ラ•クルーズ(OF)

① BALの意図

・マッキャンの獲得(一部NYMが年俸補償)
絶対的正捕手であるアドリー•ラッチマンの台頭によって、それを支えられるような経験値の高い二番手捕手が必要になったため。
これ以上の表現は思いつきません。捕手というポジションの負担を分散させることのできる環境を、ベテラン捕手であるマッキャンの獲得によって即座に作り出したことは賞賛に値します。

・ルイス•デ•ラ•クルーズの放出
ここに関しては恥ずかしながら、意図はわかりませんでした。強いていうならばDSLでの結果が芳しくなかったから、人員整理も兼ねてでしょうかね?
もし意図が思いついた方おられれば、ご一報ください。

② NYMの意図

・マッキャンの放出
フランシスコ・アルバレスの昇格、オマー•ナルバエスの獲得により捕手の余剰整理が必要だったから。
放出理由の大部分はこれだとおもってます。捕手にロスター3枠を割くことをしない、そのためなら年俸補償してでも放出することが、当時のNYMに必要だったことがわかります。

・ルイス•デ•ラ•クルーズの獲得
上のBAL側と同様に意図がわかりませんでした。

4.トレードの勝ち負けとは?

私の結論は、
"当事者チーム同士を比べて勝ち負けを論ずることは適切ではなく、どれだけそれぞれのチームの意図が達成されたかを考慮すべき"
です。

以前別の記事でも述べましたが、プロスペクトはプロスペクトでしかありません。
23年にブラディッシュは素晴らしい成績をBALで残しましたが、それはトレードから4年後のシーズンでしたし、24年以降も同じ成績を残し続けられるとは限りません。ピークとブルノビッチに関してはまだMLB昇格しておらず、マットソンは4試合投げただけで解雇されました。(現在はPIT傘下所属)
対してバンディは短縮シーズンとはいえ、トレード直後の2020年にはLAAが求める成績をしっかりと残しました。(その後は鳴かず飛ばずの成績でした。)

今回MILに放出したホールとオルティズは、各媒体のプロスペクトランキングTop100にランクインするほどのポテンシャルを持っている有望株です。
何年後かにMILでホールがローテ上位SPもしくは不動のCLに、オルティズが3Bのレギュラーorアダメズの後釜SSになる未来もあるでしょう。

しかしながら、同時に2024年にバーンズがCY賞を獲得するほどの活躍をし、WSチャンピオンのリングをBALで取る未来もあるわけです。
もちろん全員がろくな成績しか残さず、それぞれDFAされることも可能性としては残されています。

このような時間差で発生する未来が多岐に渡り考えられるにもかかわらず、果たしてトレード直後にチーム間で勝ち負けを決定づけることは適切と言えるのでしょうか?

バーンズのトレードは
1-1. 余剰人員と判断した面子と翌年QO補償で実質相殺できる指名権を放出して、ローテ最上位SPを獲得したBAL
1-2. 契約延長に臨めないエースSPを放出してサラリーダンプし、有望株と指名権を獲得したMIL

に分解できます。

こうしてみると、BALとMILはそれぞれ異なる意図を持ってトレードをしています。LAA,NYMとのトレードも同様です。

そういったことを念頭におくと、トレード、特に現在(即戦力)と未来(プロスペクト)のトレードは、それぞれのチームの意図を天秤に置いて、その傾きがどうなるのかを比較するかのように勝ち負けを論じることは適切ではなく、トレードの結果、それぞれのチームの意図が達成できているか、トレード前後のチーム内での戦力収支がどうなるのかに注目し、判断すべきなのではないかと思います。

5.〆

いかがでしたでしょうか。
トレードシミュレーターを用いると、トレードバリューという名の数値だけ釣り合ってて、その実片方の需要しか満たしていないようなトレード案が簡単に出来上がります。
成績や期待値はもちろんですが、数値に表れにくいチームの意図や役割も、トレード移籍する選手に求めることもあると思います。
そんな彼らに思いを馳せつつ、この記事を書きました。

22年オフに加入したマッキャンを、若手マイナー選手を放出してまで獲得した二番手捕手と捉えるか、チームやラッチマンを下支えしながら若きチームを鼓舞できる経験値の高い控え捕手と捉えるか。

”トレードというのは、どれだけそれぞれのチームの意図が達成されたかを考慮すべき”
その意味は、下の動画を見るとわかるかもしれません。


ご拝読ありがとうございました。
それではまた、次の記事で。


参考文献

ヘッダー画像はオリオールズ公式Xより引用