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90年代、深夜番組黄金期の思い出

それはまだフジテレビが超絶元気だった90年代。
バブルの名残もあったのか、深夜番組がとにかく豪華だった。
代表的な番組といえば「バナナチップスラブ」「カノッサの屈辱」「BEAT UK」など枚挙にいとまがないのだけど、ゴールデンタイムより深夜の番組を貪るように見ていた記憶がある。

そんな深夜帯で、どうしても忘れられない番組がある。きたろうとセクシー女優の松阪季実子が声を担当していた官能バラエティ。いや、バラエティではなく、物語だった。記憶はおぼろげだけども、生身の人間が情事を交わすのではなく、切り絵や人形劇、写真で構成され、セクシー女優の松阪季実子ときたろうが声のみで色事を展開させていくという内容だった。AVではなく官能。深夜のエロ番組といってしまえば簡単だけど、そんな稚拙な言葉で括れないほど、崇高なエロ番組だった。

なぜか年1単位で突然思い出し、あの番組なんだっけと記憶の糸を手繰り寄せるのだけど、番組名だけがどうしても思い出せない。男女のまぐわいが時に影絵や人形で、くんずほぐれつな様子に、子どもだった私はひとり、テレビの音量を最大限に小さくして、生唾をごっくんと飲みながら息をひそめて見ていたのである。

今日もなぜか突然思い出し、Google先生に「きたろう 松阪季実子 深夜番組」とたずねてみたら、まさかのヒット。「週刊切り絵小説 村は七色」「いとしのファブリオ」「曼陀羅図鑑」という名の三部作で、1989年から1991年にわたってOAされていたという。

思い出した。「曼荼羅図鑑」の「曼荼羅」という言葉。当時は意味がわからかったが、まんだら、という読み方や、やたら字数が多いこの文字の並びに、訳も分からずエロスを感じとっていたのだ。番組の中で松阪季実子が切ない声をあげればあげるほど、曼荼羅という言葉がどうしてもエロく聞こえて、見えてしまうのだ。曼荼羅という言葉を見かけるたび、パブロフの犬のごとく、あの声を思い出し、一人不純な気持ちを抱えていた。

曼荼羅。今こうしてパソコンで打っていても、本来の意味とは全く異なるのだが、やはり意味深く感じてしまう。

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