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一年点検

7月19日は親父の一周忌、翌日は私の息子の誕生日。

病床で意識の無い父と息子が交わした約束は、「僕の誕生日までは頑張ろうよ。」だった。

父はまるで孫との約束を果たすかのように息子の誕生日前日に息を引き取り、この世に残った亡骸は誕生日に荼毘に付した。

息子と私は、爺ちゃんやるな!と話していたことを昨日のように思い出す。


最近は私も体の衰えと共に運動神経の衰えを感じるようになってきた。55歳って見た目は若いけど体は確実に劣化している。

日頃バイクに乗る身としては、いろいろなことに気をつけなければと感じる。
体調が思わしくない時には乗らない、天候が悪い日は乗らないなどなど。

体調と一口に言っても若い頃のそれとは違い、「目がかすむ」、「腰が痛い」、「低気圧が近くて偏頭痛がする」などオヤジ臭い話である。

わずかな判断ミスが自分のみならず歩行者を巻き込んだ事故になりかねない乗り物なので、その辺りの自覚は忘れないようにしたいものだ。


さて、早いものでトライアンフでトライデント660を購入して6月で1年経過した
。距離にして15,000キロ乗った。

自動車でも1年1万キロと言われるので、かなり乗り込んだ方である。
それだけ気に入ったということなのだが、ライディングスクールに通ったりと操作の腕を磨いた相棒でもある。

トライデント660、正直言ってこのバイクは初心者には乗りにくいと思う。

Youtubeなどでは初心者に良いのではなどと解説されているが、それはサイズ感の話。実際に走らせてみると癖がない素直なバイクというわけではない。

これものちに購入したNinja250と比較できたから気づけたこと。

Ninjaは本当に素直で、自転車に乗るような感覚で操作できるバイク。
曲がる、止まるなど基本動作の際にあまり考えなくてもバイクは予想通りの挙動を示してくれる。

それに比べてトライデント660はライダーがコマンドを入力する必要がある。

倒立フォークを採用しているためかハンドルが重いので、曲がるときにハンドルが過剰に内側に切れ込み気味になる。これをライダーがRとスピードの関係を感じながら微調整しつつカーブを曲がることになる。これって初心者には難しいと思う。

私も当初はライディングスクールでこの辺りの感覚、いわゆる人馬一体感を徹底的に体に叩き込んだ。

トライデントは見た目がクラッシックで排気量もミッドサイズ。車重も189kgと軽量であることから操作が簡単と思われるようだが、中身はストリートファイターに近い味付けなので、単なる街乗り単気筒やツインのクラシックバイクのそれとは違う。

これもトライデント660の1年点検の際に代車として使用したストリートトリプルRSの乗車経験からわかったこと。

トライアンフミッドサイズストリートファイターであるストリートトリプルRSはMoto2に供給されている765ccエンジンを搭載したモデル。車重も車格もほぼトライデント660と同じだが、エンジンレスポンスは鋭く調整されている。

少しアクセルを捻るとたちまち吹き上がるエンジンは乗り手を興奮させる魅力を持つ。

そして、トライデントよりさらにライダーの入力を要求するバイクなので、楽しいいが疲れる。高回転エンジン特有の低速トルクの薄さは交差点での低速進入時の右左折の際してライダーに格段の気を使わせる。

2速でうっかり減速しすぎると容赦なくエンストする。

ストリートトリプルRSは、ピーキーな味付けを短時間楽しむのであれば非常に面白いバイクだと思う。ただ、長時間、長距離ツーリングは私は自信がない。

ここまでとは言わないが、トライデント660もほぼ同じ生まれのエンジンと車体構造をもつ。ドライバーが操る楽しみが随所にあるが、長距離、長時間操り続けるにはそれなりに集中力が必要になるのだ。

疲れは操作ミスを招き予期せぬ事故へとつながる。
従って、バイク初心者にはハードルが高いと思われる。

反面、Ninja250は「操る」必要はないのでライダーの腕があろうがなかろうが関係なく長距離、長時間ライディングができる。

日本車の優秀性とも言えるし、乗り手に負担を一切かけない手間無しバイクと言える。

個人的にはこういう国産バイクを初心者向けというのではと思う。


横道に逸れたが、トライデント660の1年点検に話を戻そう。

ディーラーに依頼したのは以下の2点。
1、長距離、高速移動後に下道で右左折時にクラッチを切るとエンストするので調整してほしい。
2、アイドリング時、走行時の吸気音がしなくなってしまったので調整してほしい。

1に関してはステムバルブシールドにオイルの痕があったので清掃してもらった。一般的には「オイル下がり」という現象だが、マフラーから白煙が出るという独特の症状はなかったので通常のオイル下がりではない。エンジンの構造上の問題もあるかもしれないとのことで様子見となった。

2に関して、納得がいっていない。エンジニア曰く、エンジンが馴染んできたために吸気音がなくなったのではという話。

3気筒エンジンには独特のサウンドがある。ヒュルヒュルという吸気音だ。特にトライアンフの3気筒といえばヒュルヒュル音というくらい目立つ音。これがなくなるってどうよ。(同じ3気筒の代車ストリートトリプルRSはヒュルヒュルしまくりだった)

むしろ購入時の決め手は3気筒のヒュルルヒュル音だったわけだ。

ドュカティのスクランブラーナイトシフトというバイクのデザインに惚れ込んで迷いに迷って決めたトライデント660。決め手はヒュルヒュル音だっただけにこれがなくなるということはこのバイクに乗っている理由が消えてしまったということ。

極めて残念。

もちろんそれら理由は仮説でしかない。トライデント660という新型バイクのために用意された新型エンジンなので長期データがなくはっきりとした理由がわからないのだ。

タイヤはミシュランロード5だが、これが優秀で、1.5万キロ走行したにも関わらずまだ摩耗量がスリップサインまで達していない。あと5,000キロくらいは走れそう。次回交換することがあればまた同じタイヤにするつもり。

各所点検整備、オイル交換でしめて4万円。外車の割には安いのではないだろうか。

トライデント660を1年間乗ってみての感想。

操縦する楽しさを教えてくれるバイク。人馬一体感を得るために練習して使いこなす必要があるが、その分一体化した時に余計に嬉しさを感じる。

独特な吸気音がもっと聴きたかった。これを聴きながらのロングツーリングがご機嫌だったから残念。

最後に、一見とっつきやすくて簡単そうに見えるバイクだが、大型で低速トルクもあるので、免許取り立ての初心者が簡単に操れるバイクではないと思う。

しかし、ライディング教室に通ってこいつと人馬一体となった時の嬉しさはひとしおである。

楽しいバイクライフを。

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