屁という漢字には、比べるという字がある。

昼過ぎ、会社のトイレに行った。
5つある個室のうち、奥からふたつ目だけ閉まっており、小便器は誰も使っていなかった。
チャックをおろし、いざ出さんとしたその時、個室から「ぷり」と音がした。

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一瞬の静寂。おそらく、屁のこき手はやや汗をかいていたことだろう。
そこでおれはすかさず、「ぶり。ぶりり」とやや大きめの屁を返した。

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先ほどよりやや長めの静寂。
だが、彼がおれの屁によって救われたことは、その場の空気が伝えてくれた。もはや空気と呼ぶより大気と呼ぶ方が相応しい。大だけに。

おれと彼の友情は、その大気中に、たしかに満ち満ちていた。

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