お前の好きな色はなんや?覚醒

勢いよく起き上がったはいいものの、肝心の脳みそはまだ寝転んでいると錯覚しているようだった。脚がよたよたとおぼつかない。一旦ベッドに座り直して、体を重力に慣れさせる。意識と身体は繋がってなどいない。毎朝それを感じる。意識はきっと別の次元に存在していて、そこから命令を肉体に送っているに過ぎないのだ。おそらく死んだ後は、意識は宇宙のどこか遠い場所に飛ばされ、そこで現世で得た記憶が蓄えられるのだ。この人生は、何か大きな共通課題を解決するための検証の一つなのだ。無数のパターンを網羅させ、一つの解を見つける。生まれた時間、場所。出逢う人、別れる人。幸か不幸か、はたまたそのどちらでもないのか。死んだ時に、誰かと全く同じ人生なことなどありえない───。
被験者の自分だけが、今日行う検証の内容を決められる。とりあえず、今日は趣向を変えてコーヒーに砂糖を入れてみるか……。


甘ったるいコーヒーを勢いよく胃に流し込み、小さなゲップを一つした。

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