憧れるのはやめましょう。
どうも。
KONGです。
桜の前に、花粉が舞い散るこの季節。
中学生の頃は花粉症と無縁だったKONGも、気付けば花粉症に悩まされているこの頃。
くしゃみと鼻水に、さらに目の痒み等も追加され、新学期目前の春の匂いがするこの時期が最近どうも苦手である。
『最近』と言う事は、少なくとも学生時代の頃はこの時期が苦手ではなかったのだ。
本日は中学生のKONGの話
過去のnoteにも記してある通り、KONGの部活動(バスケ部)は顧問の先生が厳しく、バスケ自体は好きだったが、部活動の練習は毎日自分との戦いだった。
そんな顧問に、ある弱点があった。
『花粉』
顧問の先生は酷い花粉症体質の為、この季節になると、外練習の時は外に出て来ないのである。
用件がある時は、校内放送で
『バスケ部キャプテン。職員室前まで来るように。』
と呼び付け、練習内容の変更や要件をキャプテンに伝える。
練習後の最後の号令も職員室の窓越しと言うぐらい、外に出る事がなくなる。
しかしだからと言って、サボる部員もいなかったのも事実。
顧問の監視の目がない分、むしろみんな伸び伸びと充実していたのだ。
KONGもまた、この練習時間がとても好きだった。
そんなKONGには、春の時期だけ、帰り道に会話をする同級生がいた。
バドミントン部のフジモト(仮)と言う男子だった。
彼は少しナルシストな所もあり、桜を見ると
『わずか数日だけど、帰り道が賑やかになるのは嬉しいね。』
など、中学生らしからぬ言葉を節々に使う。
例えるなら『エヴァンゲリオンの渚カヲル』。
あまりの落ち着きと、詩的な丁寧口調により、思わず
「オマエ、渚カヲル好きだろ?」
と、聞いた時には
少し間を置き
「…ナギサ…カヲル?
あぁ…。
エヴァンゲリオンだね?
嫌いじゃないよ。」
と、あまり詳しくはない様子で、スマートに答えてくれた。
そんな彼のラケットには、『渚カヲル』のキーホルダーがぶら下がっていたが、そこに触れる事はしない。
フジモトもまた、花粉症に悩まされている人間の1人だった。
彼の様子を見れば、花粉が飛んでいるかがすぐに分かるくらいに。
つまり、
彼がくしゃみをしている
↓
花粉が飛んでいる
↓
顧問が外に出て来ない
↓
楽しいバスケが出来る
という事である。
その日も楽しい練習後に、フジモトの姿を見かけて駆け寄るKONG。
「やぁ。」
駆け寄ったKONGに、フジモトから軽く挨拶をしてくれる。
「よ!今日も花粉は凄かったか?」
「やっぱり僕はこの季節が苦手だなぁ。」
フジモトは、ぼんやりと遠い目をしながら答えた。
あまりに遠くを見ているのか、会話もいまいち成立していない。
(いや花粉について知りたいんだけど?)
そんなフジモトの目線を追うと、KONGの目に何かが飛び込んできたのだ。
「あ!」
2人が歩く道の数メートル先に、毛虫が糸を垂らしながらぶら下がっていた。
(あぶねえ!)
スマートにヒラリと躱わすKONG。
フジモトもそうすると思っていた。
しかし。
フジモトは、あまりにも遠くを見過ぎていたせいか、目の前に糸を垂らしながらぶら下がっている毛虫に気付かず、
ペチョン。
肩に飛び乗った毛虫に気が付いたフジモトは
「ィズァム!!!!!」
(IZAM??)
予想外のリアクション。
「ゔぁわぁ!っちぃぃ!!」
触れるのが怖いのか、決して手で振り払わず、肩の揺さぶりだけで毛虫を肩から落とそうと動いている。
(この動き!獅子舞ではないか!)
等と思う余裕はなかったが、KONGはフジモトの肩にぶら下がって着地した毛虫を『渚カオル』がぶら下がっているラケットを借りて、"ちょん"と毛虫を落とす。
一戦終えた戦の兵士のように、息を切らしているフジモトは再び歩き出し、気まずい空気が流れる。
(虫嫌いなのか?)
(シャズナとか聴いてるのか?)
沈黙を破るようにフジモトが口を開く。
「だから僕はこの季節が苦手なんだ。
それじゃあ、また。」
(花粉は…?)
見てはいけない物を見た気がしたKONG。
こうして、余裕のあるスマートとな行動は『憧れ』だけでは難しいのだと知る中学2年最後の春でした。
それでは!
また!
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