声劇台本「コンビニ」

某所にてハロウィン企画の際に作成した台本です。
キャラと題名「コンビニ」を考えてもらって、使用して書きました。
9人劇です。

■キャラクター
●グレムリン
 小人系。イタズラをする気は無いモノの、自分の意思とは関係なく、機械に近付くと勝手に壊れてしまう。常に風船ガムを膨らませている。

●デュラハン
 ビビり。常に愛馬の心配をしている。首を起点に頭と胴体が離れている(乗せておく事は可)

●レプラコーン(クルラホーン)
 靴職人(裁縫全般得意)。イタズラ好き。酔うとクルラホーンになり手が付けられない(この状態を仲間内で「クルった」と言われている)

●ガンコナー
 チャラい。異性を見ると口説かずには居られない。パイプを吹かす喫煙者であるが、近年肩身が狭い(電子タバコに乗り換えようか切実に悩んでいる)。口癖は「連れないなぁ」

●プーカ
 色黒。性格が悪い。黒馬・黒山羊・鷲に変身できる

●シーオーク
 歌とダンスが好き。客引きが天職だと思っている。(禁止行為なのでストレス)

●リャナンシー
 男好き。アゲマン。京美人。不意に出てしまう口癖「~どすえ」がコンプレックス。※男性が演じる場合はオネエ

●ケット・シー
 猫。喋るも喋らないも、四つ足も二本足も気分次第。手下の猫を駒の様に扱う事も有れば、身を挺して守る事も有る。気分次第。口癖は「そういう気分ニャ」

●エサソン
 小人系。心優しい。無類のキノコ好き。キノコの事になると目の色が変わる。口癖は「はにゃ~♪」

■本編
グレムリン:だから、マジでアレ最悪なんだって。トマト缶とビネガー混ぜてれば、人生が全部上手くいくって思ってる。
デュラハン:……んなわけねぇって。
グレムリン:そう! そんなわけない! つーか、トマト缶なんて、すき好んで食うとか信じらんないって!
デュラハン:ちげぇよ、別にそんなとこ、どうでもいいって。
グレムリン:はぁ!? なに、アンタ、トマト食えるわけ!?
デュラハン:食えるわ……だから、そうじゃなくて……バイト中に来んなって。
グレムリン:なに? いつ来たっていいでしょ。こっちは客だぞ。
デュラハン:どこがだよ、何十分もギャーギャーわめきやがって。いい迷惑だって。
グレムリン:別にいいでしょ、客いないし。
デュラハン:俺がいるって。
グレムリン:知らねーよ、んなの。
デュラハン:はぁ?
レプラコーン:てろろんてろろろん。(入店音)
デュラハン:あ、客来たって……いらっしゃいませー。
グレムリン:だいぶ夜遅いけど、来んだね、客。
デュラハン:少ないけど来るわ、夜働いてる人もいるだろって。
グレムリン:大変だなー、なんで昼に働かないんかね?
デュラハン:夜働いてる俺に聞くなって。
グレムリン:いや、夜働いてる奴に聞かないと、わかんないっしょ。
デュラハン:まぁ、そうか……あ、どうぞー。……温めます?
レプラコーン:大丈夫です。
デュラハン:はい。
グレムリン:……なんで夜働いてるんすか?
レプラコーン:え?
デュラハン:お前、バカっ、やめとけって!
グレムリン:別に、いーじゃん。あ、てか、働いてて起きてるんですか?
レプラコーン:あぁ……いや、仕事終わりですね。
デュラハン:あの、すみません、こいつバカで……相手しなくていいですからね。
グレムリン:バカって言う奴がバカなんだって知らんのか?
デュラハン:マジで黙れって!
レプラコーン:あはは……いいですよ、あと帰って、飯食うだけなんで。
グレムリン:イートインで、それ食いながら話そ……しましょー。
デュラハン:お前、だから……いい加減。
レプラコーン:大丈夫ですよ。話しましょうか。
デュラハン:いや……そこ、この時間、使えないって。
グレムリン:よいしょ。席おろしたんで、どーぞっ。
レプラコーン:ありがとうございます。あ、すみません。やっぱりこれ、温めてもらっていいですか?
デュラハン:……はい。
ガンコナー:ぺぽぺぽぺぽん。(入店音)
デュラハン:あ、いらっしゃいませー。
ガンコナー:うい。お兄さん、トイレ借りていい?
デュラハン:あ、はい、そっちです。
ガンコナー:あざすあざす。
グレムリン:えー、じゃあ靴作ってんの?
レプラコーン:まあ、直す方が主な仕事だけど。たまに作りますね。
グレムリン:革からぁ?
レプラコーン:革からってのは……まあ、仕入れた物を型に合わせて裁断するとこからは、やりますね。
グレムリン:やばぁ、職人じゃん、かっけぇー……それも?
レプラコーン:いや、このスニーカーは流石に……ほら、知ってるブランドでしょ?
グレムリン:あ、そういうなんか、下請け的なのじゃないんだ。
レプラコーン:オーダーメイド……っていうのか、ハンドメイドっていうのか、そんな感じですよ。
グレムリン:うへー、どんなの作ったとか、写真ないんすか?
レプラコーン:あー、ちょっとお待ちを……。
デュラハン:コミュ強すぎんだろって……あ、やべ。ホットスナック補充しないと……。
プーカ:たりらりたりーら、たりらりらー。(入店音)
デュラハン:今日、客多いな……いらっしゃいませー。
プーカ:……やあ。
デュラハン:げっ。
プーカ:げっ、だって? なんて古典的な嫌悪感の出し方をするんだ君は。頭と体を切り離せるんだから、もっと先進的なリアクションをしてみせるべきだろう?
デュラハン:……いや、関係ないだろって。古典的で悪かったな。
プーカ:べつに、悪いとか、良いとか。評価や批評をしたい訳でも、してる訳でも、無いじゃないか。古典を貶めたい訳じゃ無いんだよ、君がイマイチ自分の個性を活かしきれて無いことに、ちょっとしたジレンマを感じたんだ、それだけだよ。
デュラハン:うるさいって……相変わらず、よく喋る奴だな。何か買いに来たんじゃないのか?
プーカ:あぁ、そうだった。あまり君に構ってる暇は無いんだ、すまない。少し見させてもらうよ。
デュラハン:何がすまないなんだ……さっさと帰れって。
グレムリン:まーた、喧嘩してんのか。これくれ。
デュラハン:いや、別にそんなんじゃないって……酒買うの?
グレムリン:おー、呑みながら話そうと思って。
デュラハン:……なんで盛り上がってんだって。
グレムリン:いや、おもろいよ? あ、ガムも。
デュラハン:酒呑みながらガム食うなよ?
グレムリン:意外と合うやつなんだよ、この味は。
デュラハン:そんなガムなんてねえって……ほら、お代。
グレムリン:ほいよ。
デュラハン:俺に渡すんじゃないって。そこの前にある機械に入れ……あっ、やっぱ。
グレムリン:あ、そうか、ここね。
デュラハン:あー、いいって、俺が……あーっ!
グレムリン:お、おぉ? なんだ、硬貨が挟まって止まったぞ?
デュラハン:ぐぁ……やらせんじゃなかったって。
グレムリン:あー……金は一応全部入れたから、ごめんけど、後は、よろ。
デュラハン:……最悪だ、って。
ガンコナー:いやー、奇遇ってか‥‥運命じゃね?
プーカ:じゃ、無いな。そんな軽々に運命などと仰々しく表現するんじゃないよ。単に利用するコンビニの範囲が近いのと、時間が噛み合ってしまっただけだ。不幸にもね。
ガンコナー:つれないなぁ。もっとキラキラした日常を生きようよ、俺ならそういう世界……見せてあげれるかもよ?
プーカ:お前に出来るのは精々、安い電飾でも体に巻き付けて、コンセントの半径をうろついて見せるくらいの狭い世界だろうに。
ガンコナー:しんらつー! でも……そういう所も、魅力的ぃっ。
プーカ:お前のような、短絡的で、節操も知性も無い輩を、極めてスマートに言い表す、良い言葉があるんだ、教えてやろう。キモい、だ。
レプラコーン:だぁめだっ! 靴なんてのは、大した金にならねぇんだからよぉ! テキトーにブランドっぽいバッグとかぁ、コピー品みてぇなの作りまくってた方が、よぉっぽど儲からぁ! ガハハハハハ!
グレムリン:アハハハハ! 突然どしたんっ! 職人の誇りどこやっちまったんだよ! 急におっさんくせえし!
レプラコーン:誇りなんてなぁ……嫁が掃除機で吸い取っちまったよ! いねぇけどなぁ! ガハハハハハ!
グレムリン:ふぅー! 独身貴族ぅー! アハハハハ!
デュラハン:な、なんだ、みんな突然めちゃくちゃ大声で……うるさいって!
シーオーク:てぃりらりらーん。(入店音)
リャナンシー:とぅとぅとーんとぅん。(入店音)
シーオーク:マジなんすって、俺のパフォーマンスで、すげぇ場があったまったのに、アイツら……って、うるさっ。
リャナンシー:なんや、えらい騒がしいなぁ。あんたのライブより、盛り上がってんのちゃう?
シーオーク:いやいやいや、そりゃないっすよ、ネーサン! さすがにさすがに!
デュラハン:あー、い、いらっしゃいませぇ……。
グレムリン:おーいっ、酒くれ酒ー! 追加だぁ!
デュラハン:おわっ、強くないくせに馬鹿みたいに呑もうとすんなって……あ、レジに近寄んな!
レプラコーン:ゔぇー、足りんぞー酒ぇー! あ、あとだし巻き玉子も。
デュラハン:居酒屋じゃねぇって!
プーカ:おぉい! 君、この迷惑で不愉快でクソでゴミでカスなコイツをどうにかしてくれ! 客の管理も君の仕事だろう!
デュラハン:えぇ……とぉ。
ガンコナー:ひでぇっ! ちょいちょーい、照れ隠しも程々にしよーよー。ごめんねぇ、絡んじゃって。ほら、続きは俺の家ででも、さっ!
プーカ:誰が行くかっ! キモ男!
ガンコナー:くぅーっ、つれないねぇ! でも……燃えちゃう。
プーカ:キモい! 本当に、鍋底の焦げ目みたいな奴だなっ!
デュラハン:あ、はは……。
シーオーク:あぁ……? この周り別に呑み屋街ってわけじゃなかったよな。
リャナンシー:そこそこの住宅街やなぁ。まあ、儲かっとるんはええことや。
シーオーク:そうっすかねぇ……。
デュラハン:全然よくねぇって……なんで俺一人の時にこんなことに……。
リャナンシー:……あんさん、困ってはるん?
デュラハン:え? ええっと……困ってるっていうか。
リャナンシー:何やの。はっきりせんと、何もわからんで?
デュラハン:う、す、すみません。
シーオーク:あー、ネーサン、あんま圧かけないであげて下さいよ。お兄さん、ネーサンは、ハッキリしない奴とかウダウダしてる奴、嫌いなんでね。あんま悩まないで、スパッと答えてあげてよ。ね?
デュラハン:は、はぁ……。えっと、どちらかというと、困ってます。
リャナンシー:いらん。
デュラハン:え?
リャナンシー:どちらかとか、えっととか、いります? イエスかノーか、でええ思いますけどね。
デュラハン:……すみません。
リャナンシー:なんやの、さっきから謝りはって……アタシが悪いみたいやないの。ねぇ?
シーオーク:ネーサン、勘弁してやってくださいよ。きっとシャイなんすよ、お兄さん。
リャナンシー:……まあ、それは失礼しはりました。
デュラハン:……いえ。
リャナンシー:でもなぁ、自分で何とかせんと、ツライ状況変わらんよ? ビシッと、いさめる時はいさめんと。何の為にいはるん? ……って、言われてまうで?
デュラハン:……そうです、ね。
シーオーク:ネーサン、それくらいにして、買う物買っちゃいましょうよ。
リャナンシー:あぁ、せやね。こんなとこ長くおったら、何されるかわからんしなぁ。
ガンコナー:そうですね。ここは少し騒がしいですし、静かになれるとこ……ご案内しますよ?
リャナンシー:……誰?
シーオーク:おいおいおい、流れるようにネーサンの手を取るなボケ!
グレムリン:うぇーい、ハイヒール魔改造してくれるってよぉー。よかったじゃーん。
プーカ:やめないか! せっかく、あのゴミから解放されたっていうのに、何なんだお前たちは! 靴に触るな!
レプラコーン:あぁん? 俺の靴がっ、履けねえってかぁ! ガハハハハハ! こーらっ、動かないのっ。靴が脱がせられないでしょっ。ガハハハハハ!
グレムリン:ひゅーっ、えっちだぁ! アハハハハ!
プーカ:やめんかぁー!
シーオーク:おいっ、気安くネーサンにアプローチすんなっつってんだろ!
ガンコナー:なになにぃ? 自分で道を切り開かないと、人生上り坂ばっかだよ?
シーオーク:あ? なんだそりゃ?
ガンコナー:下らないってこと……さっ! ばきゅーんっ! ねぇ、いまカッコよかったっしょ! 惚れた?
リャナンシー:んー、にいさん、おもろいこと言いはるなぁ。
ガンコナー:でしょっ! やった、好印象っ!
シーオーク:バカっ、皮肉だよそりゃ! 何わけわかんねーこと言ってんだボケって意味だっつの!
ガンコナー:何わけわかんねーこと言ってんだボケっ!
シーオーク:おめーだよ!
デュラハン:も、もう……マジで、静かにしてくれーーーって!
ケット・シー:バリーンッ!(入店音)
エサソン:どごごぉーんっ! キキィーッ!(入店音)
デュラハン:だぁああああああ!
ケット・シー:……すまんにゃ、アクセルとブレーキを同時に踏んだら、アクセルが勝ったにゃ。
エサソン:はにゃ〜、許せよガキども〜。
デュラハン:な、ななな、なんだってんだって……。
ケット・シー:おぉ、すまんにゃ。まさか貴様以外、全員轢いてしまうとは……貴様、さては今年大吉にゃ?
デュラハン:今年……おみくじ引いてないって。
エサソン:はにゃ〜、引いてないし、轢かれもしないし。どっちつかずな奴〜。
ケット・シー:まっ、引かなかっただけで、きっと大吉だろうにゃ。でも、自分の手に入れられなかった大吉は、果たして大吉なのかにゃ?
デュラハン:……なんだって?
エサソン:はにゃ〜、読解力、ぜろ〜。
ケット・シー:にゃから、いや、だから、を、にゃから、にするのは分かりづらいにゃ……だから。
デュラハン:言い直さなくても良いのに……。
エサソン:は? 親切心だろが、てめぇ、あんま調子こくなよ?
ケット・シー:おい、キノコ食え。
エサソン:むぐっ、うっ、あっ、あっあっあーっあーーーーっ、ばくもぐむしゃもぐばぐっ……はにゃ〜。
デュラハン:こわい……こわいって……。
ケット・シー:……食うかにゃ?
デュラハン:や、良いですって!
ケット・シー:そうか……にゃ、気を取り直して……いや、じゃ、を、にゃ、にしたら分かりづらいか……じゃ。
デュラハン:だから良いって、言い直さんで。
エサソン:はにゃ〜、親切心だろが〜、あんま調子のんなよ〜。
デュラハン:キノコ食っても食わんでも大して言うこと変わってないって……。
ケット・シー:じゃ、気を取り直して……轢き直すにゃ。
デュラハン:は? えぇっ、なんでっ!
ケット・シー:えっと……そういう気分にゃ。
デュラハン:どういう気分だって!
エサソン:…………つらい、おわりだ。
デュラハン:キノコ切れてダウナー入ってるっ! こええって!
ケット・シー:まあまあ、貴様がおみくじを引かず、大吉かどうか分かんなかったあの日あの時に戻ったつもりでー……轢き直そうにゃ。
デュラハン:それ、うまいこと言えてないってー!
ケット・シー:轢き直そうや、の、や、を、にゃ、にするのはー!
エサソン:……僕なんて生まれなきゃよかった。
デュラハン:言い直さんでいいし、ダウナーすぎてこええってーーーーーー!
ケット・シー:ぶおおおおおおおん!(車のエンジン音)
グレムリン:……ぱぁんっ!(フー船ガムの破裂音)
デュラハン:はっ! ……俺の部屋……えっ……ゆ、夢……だった、って……?
グレムリン:違うよ。
デュラハン:わぁっ、なんでいんだって!
グレムリン:あれは夢じゃない。組織の亜空間干渉によって生じた、平行世界を閉じ込めた領域で起こった……計画的犯罪。
デュラハン:ん? え? は? な、なんだって? てか、組織って?
グレムリン:それに答えてる時間はない。急いで出る準備して。
デュラハン:えっ、はっ、えっ? ど、どこに何しに行くんだっ?
グレムリン:決まってるでしょ……アンタの顔を取り戻しに行くんだよ。
デュラハン:壮大……って、えっ? いつから無かったの!?

END

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