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-Team Drunk Dragon- 机の価値は①

「おい、宮川!お前paypayダンス踊れ!」

リーダーのいつもの無茶ぶりが始まった。
また、変なことをさせられるのか……。

「俺がですか? 今年でもう36歳ですよ?」
「お前、顔そっくりやし、踊れるやろ?ほら、早よ踊らんかい。踊らんかったら今日の会費払わんぞ!」
「分かりましたよ……」

俺は半ば諦めて踊ることにした。
こうなるともう誰にも止められない。

「paypay ♪ paypay ♪ 」

そう言って俺は踊り始めた。
そして、1分後くらいには、俺は完全に出来上がっていた。

「おーい!みんな見てみぃ!!めっちゃおもろいで!!」

リーダーが大声で叫んだ。
すると、他のメンバーも集まってきて、いつの間にか店内にいた全員が俺に注目していた。

「えっ!?何これ?ww」
「うわぁ~!恥ずかしいわwww」
「宮川さんヤバいっすねwww」

皆が口々に言いながら笑っている。

「おっし!じゃあ次は全員でやるぞぉ!!!」

リーダーの掛け声と共に、全員が一斉に踊り出した。

「paypay ♪ paypay ♪ 」
「paypay ♪ paypay ♪」
「paypay ♪ paypay ♪ 」
「paypay ♪ paypay ♪ 」

こうして、深夜2時までずっと俺達は歌い続けた。

これが日常。俺たちは酔いどれの龍。

2016年5月23日(土)


起きると頭が痛い。
昨夜飲みすぎたようだ。
ズキズキと響く頭を押さえながら、携帯に目をやった。
すると、ロック画面に着信10件の文字。
すべて前田からだった。
俺は恐る恐る電話をかけた。

「もしもし……」
「おお、宮川。どうした?こんな時間まで寝てたのか?」
「まあ……色々とあって……。」
「そうか。とりあえず今日店に来たら話したいことがあるから早く来てくれ。待ってるゾ。」
「分かりました。すぐ行きます。」

電話を切り、急いで準備をして家を出た。
電車に乗りながら俺は考えた。
あの前田がわざわざ呼び出すなんて珍しい。
一体何があったんだろうか? 何か重大な事件でも起こったのではないか? あるいは……
俺は嫌な予感を振り払いながら店に向かった。

「おつかれっす。」

挨拶をしながら店内に入った。
いつも通り何人かのメンバーがお気に入りの席に腰掛けながら談笑している。
そして、最奥には前田の姿。

「おう、来たか。そこ座れ。」

俺は言われた通りに席に腰掛けた。
そして、しばらく沈黙が続いた後、前田の方から口を開いた。

「なあ、宮川。最近お前、調子に乗ってないか?」
「はぁ!?」

俺は思わず声を上げた。
まさか前田がこんなことを言うとは思わなかったからだ。

「俺さぁ、お前が他の奴らを馬鹿にしてるところを見る度にイラついてたんだよ。」
「はぁ……」
「だから今日はそれをはっきりさせておきたくて呼んだんだ。」
「……はい?」

何を言っているのか分からなかった。
俺が調子に乗っているだって?どこがだよ……。

「お前はいつも自分より下の人間を見下してる。それが気に食わないんだよ!!」
「その証拠はどこにあるんすか?」

俺は冷静さを装いながら聞いた。

「ある。今がそうだろうが!」
「いやいやww それはあんたが勝手に言ってることでしょ? 俺は別に見下したりなんか……」
「うるせぇ!!いい加減認めろよ!!お前のそういうところが腹立つんだよ!!」
「……」

俺は黙った。
確かに俺はメンバーのことを内心、全員馬鹿だと思っているし、見下してもいる。
だが、それをアホの前田に指摘されるのは不愉快だ。
しかし、前田は曲がりなりにもグループのNo.5。
俺は何も言い返さず、ただ黙って俯いていた。
すると、閉まっていた店の扉が開いた。
武田だ。

「武田さん!ちょっとこっち来てくれ!」

前田が嬉しそうに声をかけた。

「どうした?」

武田が前田の隣に立った。

「いや……その……こいつが……調子乗ってて……」

前田が俺を指差した。

「宮川が?お前の気のせいだろう?」

武田はそう言うと席に座って煙草を咥え、火をつけた。

「え……?」

前田は驚いた表情をしている。
予想外の言葉だったのだろう。

「俺たちはファミリー。そうだろ?」

武田はそう言いながら煙を吐き出した。

「はぁ……」

前田は何とも言えない返事をした。

「仲良くしろよ。」

武田はそう言いながら立ち上がり、他のメンバーに話しかけに行った。

「宮川。お前、武田さんの弱みでも握ってんのか?」
「なんすかそれ?知りませんよ。」

俺は笑いながら答えた。

「嘘つけよ!!じゃあなんで武田さんはお前を庇ったんだよ!?」
「武田さんは優しい人だからっしょ。」
「ふざけんなよ!!武田さんはなぁ!お前みたいなやつが大嫌いなんだよ!!」

前田はそう叫ぶと、テーブルを強く叩いた。
すさまじい音が店内に響き渡った。
あまりの迫力に俺は思わず目を瞑ってしまった。
恐る恐る目を開くと、大理石柄のテーブルが前田の拳状に凹んでいる。
とんでもないパワーだ。

「キャー!!なんの音!?」

遠くからママの悲鳴が聞こえる。
前田に目を移す。
意外につぶらで可愛いと評判の瞳が真っ赤に染まっていた。

「フゥー!ハァー!フゥー!ハァー!」

前田の呼吸が荒くなっていく。
俺は慌てて立ち上がった。
逃げないと殺される。や・ば・い!         

続く


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