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マユリカ単独ライブ「カフェイン!マユリカ!!ギラギラ光ってなんぼでしょ!?」【ライブレポ】【ネタバレ有】

 2021年12月4日(土)にマユリカの単独ライブ「カフェイン!マユリカ!!ギラギラ光ってなんぼでしょ!?」がよしもと漫才劇場で開催された。12月2日にM-1グランプリ2021の準決勝を終え、そこから2日後のこのライブに向け急ピッチでネタを完成させたという彼らは、血の滲むような努力の結晶とも言える単独ライブを見せてくれた。
 私はFANYチケットのプレミアム会員であるが、昨今のマユリカ人気を案じて家族や友人にチケット抽選を協力してもらうことに。しかしあえなく全落選。マユリカの人気の高さがうかがえる。しかし何とかチケットを譲り受け、東京在住の私は大阪へと遠征して参加した。

 開場して席に座っていると、突然始まるOPV。私はマユリカを好きになってまだ1年ほどなので、単独ライブに参加するのはこれが初めてだった。聴き慣れない曲のイントロが流れ始めると、画面に映るのは「作詞・作曲 中谷祐太」の文字。おいおいまさか……と思っていると「歌 Mrs.ヒポポタマス&MCダンボ」の文字が浮かび上がり、とてつもない高揚感と共に曲がスタート。タイトルは「NO! NO! 朝帰り。」で、Mrs.ヒポポタマス(中谷)(以下ミセタマ)が道端に座り込み花束のようもので地面を叩いている謎の映像と共に「朝帰りダメダメ 朝帰りダメダメ」と耳に付くフレーズが連呼された。場面が転換し、ミセタマが上裸で女性の肩を抱き乳首を弄り回す映像が流れると会場は大爆笑。ミセタマの舌をベロベロ回す仕草がこれでもかと言うほど気持ち悪かったが、それが良い。
 サビに差し掛かると、パラパラを踊るガン黒ギャル・阪本に囲まれ熱唱するミセタマの姿が。今までは物凄くシックにいろんな曲を歌い上げてきたミセタマだったが、この曲は激しい抑揚と共にハイテンションで歌い上げた。クラブのパーティーソングを彷彿とさせる衣装と映像、ノリノリのサウンドでとても楽しい曲だった。
 1番のサビが終わると、少し曲調が変わり道を引きずられるバットの映像に。MCダンボ(中谷)の登場だ。前回の単独ライブでもOPVは中谷が作った楽曲だったそうだが、私はそれを知らない。2番もいくの!? とあまりのボリュームに驚いていた。
 以前、ラジオで中谷と紅しょうが・熊元プロレスのラップバトルが行われていたのだが、熊プロは中谷のラップを「韻を踏みたいだけの無駄な歌詞が多い」と一蹴。OPVの曲は"朝帰りに警鐘を鳴らす"というテーマだったが、ダンボのラップには「母さん自慢の日産セレナ」という歌詞が含まれており、会場は熊プロの言葉を思い出したのか(韻を踏みたいだけの歌詞だ…)というような上質な笑いが起きていた。
 正直、OPVを観ただけでもうお腹はいっぱいだった。よしもと漫才劇場は異常なまでにチケット価格が安い。このライブも1200円である。OPVだけで1200円を回収できたと言っても過言ではないほどの満足感だった。

 OPVが終わると、この日の主役マユリカの2人が登場。単独ライブという場には当たり前だがマユリカのことを好きな客だけが集まっている。拍手はなかなか鳴り止まなかった。
 登場するなり阪本は「有難いことにオンラインチケットが数百枚売れているらしい」と報告するが、「僕たちビキニ写真集1100冊売れてるんですよ」「ビキニは見たいけどネタはいいや、という思考のカラダ目的のファンがいる」とボヤいた。32歳の男性にカラダ目的のファンがついている事実があまりに異常で面白すぎる。
 オープニングトークからネタが始まると、中谷がいつものように女役に入ろうとする「ニチッ」という笑顔だけで観客は大笑い。本当にマユリカ好きしかいない空間だ……! と、ある種の感動に包まれた。1本目のネタは、結婚して子供が産まれ、親に孫の顔を見せに行くシチュエーション。例によって中谷が阪本の母役をやるのだが、おばちゃん役をやらせて中谷の右に出るものはない。おばさんではなく、"おばちゃん"である。やはりおばちゃんの英才教育を受けてきているからだろうか。もう表情からおばちゃんである。
 私は心が小学生なので「うんこ」「しっこ」という言葉が大好きなのだが、阪本の発する「うんこ」がこの世で1番面白い。中谷扮する母親の手が臭すぎるくだりで「うんこでもこねました?」と阪本が言うだけで大笑いなのだが、その後の「こねてません。こねても意味がないから」という中谷のツッコミで、"うんこをこねる"という事象を意味があるかないかで捉えているのが面白すぎて狂ったように笑ってしまった。やはりこういうワードこそ私がマユリカを大好きな所以である。

 1本目のネタが終わるとVTRへ。「広辞苑テレフォン」という、広辞苑を開いて出た単語を使い会話しなければならないという企画。1人目の電話相手は熊元プロレスで、会話のテーマは「お金貸してくれへん?」からスタート。早速電話に出た熊プロに本題を伝えると「昨日つーこ(ニゲルベ)さんからも言われて…」とまさかの飛び火での暴露。24日の23時45分に電話をかけていた為「あと15分経ったら(給料が振り込まれるので)貸せますけど…」と一瞬悩んだ様子だったが「そんなこと言うたら阪本さんだって給料入るでしょ!」とすかさずツッコまれることに。「そもそも何に使うお金なんですか?」と聞かれ、辞書を開いて出た単語は"掴む"。「掴む為」と答えると、「掴む為ってね……お金借りる時はもっと具体的に言わんと」「ウソでもいいから、今財布落として自転車ガッチャン(撤去)されてるのを取るのにお金がなくてとか」と何故か金借りの立場から具体的なアドバイスをし始める熊プロに会場は大爆笑だった。その後開いた辞書に"練人形"(土で固めて作った人形)という単語を見つけた阪本が「お前はもう練人形や」と言うと、「練人形って。豚人形とかって言うんやったら分かりますけど」と何故か自虐に走りだす熊プロ。阪本が「お疲れさ〜ん」と熊プロのセリフを真似て電話を切ろうとすると、「腹立つ! おつかれさ〜ん」としっかり挨拶はする熊プロであった。

 2本目は「姫と忍者」のネタ。コントインした瞬間から声が上擦りまくっていた中谷(準決前に声を飛ばして通院していた)は、ネタ中盤に突如フリーズ。中谷がネタをド忘れしたことを察知した阪本は「バカ姫やん」と中谷を貶しまくるも、オチ台詞前に自分も盛大に噛み散らかして吹き出してしまう始末。ボロボロな状態であったが、賞レースでは絶対に見られないようなしつこすぎるくだりや、ネタを飛ばしたり噛みまくって笑い合っている姿は単独ならでは。2人でニコニコしたままネタは終わったが、チャック付きのポーチのくだりや、竹とんぼのくだり、駆け落ちの部分などボケにマユリカの良さが前面に出ていてとても良かった。

 2本目が終わり、1本目のVTRの続き「広辞苑テレフォン」が始まる。続いてのターゲットはロングコートダディ・兎。「兎さんはだいぶとぼけた性格やから気付かないと思う」と言う阪本は、テーマをざっくり"悩んでいる"に設定。電話に出た兎に「ちょっと悩んでて……」と言いながら開いたページには"バロメーター"の文字が。「ちょっとバロメーターが……」と話しながら、次に"酒"という文字を見つけて「酒の……酒のバロメーターです」と言うと「お酒を飲みすぎてしまうってこと? やめたら?酒」と兎はズバリ。何も間違っていない真っ当なアドバイスである。その後、開くページになかなか良い単語が見つからない阪本が唸りながら迷っていると、兎はひとりでに「俺は別にそれでも良いと思うというか、それがお前の楽しみなわけやん? 自分の楽しみなことは必要だと思う」「仕事や身体に支障が出るっていうなら考えもんやけど、まだそこまでではないやろ?」と語り出す。とても親身だ。単語を探しているだけの阪本を悩んで何も言えない状態だと勘違いし、1人で永遠と話し続ける。優しい。その優しさに隣にいた中谷も必死に笑いを堪えている様子だった。
 開いたページに"陰毛"という単語を見つけた阪本が「陰毛も悩んでるし……」と切り出すと「そんな悩むような陰毛してたっけ? ん? どんな陰毛だっけ?」と、怪しすぎる"陰毛"という単語を聞いてなお真面目に悩みに答えてくれようとする兎の優しさが面白かった。優しさと面白さは紙一重なのだろうか。兎の「どんな陰毛やっけ?」という問いかけに、阪本は開いたページにあった「"月並み"です」という回答をすると「ほな悩む必要ないやん」と即答されてしまった。確かにそうだ。最高のVTRだった。

 3本目のネタはコント。ウェディングドレスに身を包んだ中谷が登場するなり会場は大盛り上がり。大歓声。ビキニ写真集を大喜びで買うファン層なのだから当然だ。小汚い30代男性2人の女装にこれでもかというほど沸き上がる会場。これがマユリカの単独ライブだ。
 彼らは漫才師だが、やはりコントも格別に面白い。急ピッチで作ったネタだとは思えない。後半の"スマホの充電が切れていて法的にOKなのか調べられない"という細かいくだりが本当に最高で、最後にただの暴言で締め括られるのも最高だった。中谷のとぼけた顔も阪本の疑心暗鬼な表情も、全てが彼らにマッチしており面白かった。
 ちなみにこの時着ていたウェディングドレスの胸元に殺戮マシーンのような安全ピンがついていたそうで、エンディングで中谷の口元に付いた傷が披露されていた。

 続いてのVTRは、阪本が中谷の6歳の頃の写真を「今では考えられない完璧な容姿」「サラサラ髪の地元の王子様」「ハーフ顔の神戸の宝」などと持ち上げまくる映像。確かにマユリカは2人とも幼少期がとても可愛いのだが、子供はどんな容姿だって大体可愛いものである。まず阪本が中谷を褒めることなんてそうそうないので、会場全員が真に受けてはいなかったことだろう。そして待望の"中谷祐太 王子様時代"の写真が映し出されると、「まあそうだろうな」といった反応。取り返しのつかない空気である。人の幼少期の写真を見て、あんなにじわじわと笑ったことはない。普通に可愛らしい写真なのだが、よく見ると貧相な服装をしていたり、どういう状況で撮ったんだ? という直立ポージングだったりに気付いてしまい、少しずつクスクス笑ってしまった。

 4本目のネタをする為に登場した際、中谷はハードルを上げまくって幼少期写真を晒した阪本を「何してくれてんねん!」と一喝。中谷が「どこがサラサラ髪の王子様やねん」と言うと、阪本は「ざんざか頭の豚人間やったな。申し訳ない」と誠意のない謝罪をしていた。3本目のコントでカツラを被っていた中谷の髪の毛はふわふわと舞っており、それを手で優しく梳かす阪本に幼馴染を感じた。
 4本目はファミレスバイトの漫才。先述の通り私は阪本の発する小学生レベルの下ネタが大好きである。「すみません4番でうんち行ってきまーす!」と元気よく叫ぶ阪本に大笑いしてしまった。後半で阪本が例によって中谷を力強くビンタするシーンがあるのだが、やはりマユリカの暴力ほど面白いものはない。それは中谷がビンタされているのを見て"可哀想"だと感じる人がいないからであろう。凄い才能だ。ただ私は中谷が他の人にどつかれたりしているところを見ると「やめて! 可哀想でしょ!」と学級委員長マインドを発揮してしまう為、信頼関係がはっきり見えているコンビ間での暴力だからこそ笑えるのだろうと思う。
 このネタも急ピッチで仕上げたとは思えないネタで、賞レースだって戦えるのでは? と思うくらい強いネタだった。「鉄板お熱くなっておりますので是非触ってみてください」とそれに対する中谷の悲鳴を聞いて、会場は大爆笑だった。

 次のVTRは壮大なコント。医者の会議で"アナリー"という謎の単語が連発され、阪本がアナリーな世界へと巻き込まれていくストーリー。ツイッターで「世にも奇妙な物語みたいだった」と感想を呟いている人がいたが、あの独特の奇妙な空気感は確かにそれだったと感じる。"アナリスト"という単語に「びっくりしちゃった」と反応する阪本のような細かいくだりが本当に面白くて良かった。現地で見た後オンライン配信も買って何度もアーカイブを観たのだが、このVTRは本当に観れば観るほど面白い映像だった。

 ラスト5本目のネタは秘密基地の漫才。オールザッツ漫才でも披露されたネタである。「急ピッチで仕上げた」と何度も言う割には、テレビでも披露できるクオリティの漫才を何本も作ってくるあたり天才である。マユリカにしては珍しく中谷が女役ではないのだが、コントインした中谷の「ウィッス……」があまりにも男子小学生で、どんな役も演じられる彼の多彩っぷりがうかがえた。どんな役を演じさせてもちゃんとちょっとキモくてウザいのが彼の持って生まれた才能なのであろう。
 引っ越してしまう中谷は、阪本に引っ越し当日お見送りに来てほしいと頼むのだが「従兄弟に炊飯器でケーキ作るのを見せてもらう約束しててな……」と阪本はそれを断る。確かに小学生の頃ならそんな理由でも凄いことだと思って断ってしまいそうだなと、少し心当たりがあるような気持ちにさせられた。この微妙なところを突いてくるのが気持ちいい。

 最後はOP曲「NO! NO! 朝帰り。」が流れてエンディング。ここでも中谷の幼少期写真が登場。中谷が「ちびまる子ちゃんのブー太郎みたい」と言うと、阪本は「ちょっと良く言いすぎやわ」と一蹴していた。

 初めて彼らの単独ライブを見たが、たった60分に物凄い熱量が注ぎ込まれていて大満足のライブだった。やはりネタが格別に面白いし、彼らの人間性も大好きである。テレビ露出も増えてきて、もうこんな値段でこんな劇場で単独ライブをすることもなくなってくるだろうな……と感傷に浸ってしまった。忙しさに慣れたら阪本が顔を真っ白にすることもなくなってくると思うと切なかった。オンライン配信のアーカイブ期間が延長されたこともあり、自宅でも何度も何度も楽しんだが、何度観ても見応えのある最高のライブであった。今回のハードスケジュールの中でもこのクオリティだったので、余裕がある時の単独ライブにも期待したい。

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