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粗品に勝ったら10万円【ライブレポ】【ネタバレ有】

 2022年1月19日(火)にルミネtheよしもとで開催された「粗品に勝ったら10万円」。
 超豪華メンバーが霜降り明星・粗品とネタバトルを行い、観客&審査員投票でランキングが決定。粗品より上の順位だったコンビには粗品が賞金10万円を渡さなければいけないという、粗品主催の粗品だけが損をする可能性があるギャンブルライブだった。

 幕が開くと、司会のミキ・昴生が登場。粗品から前日に突然司会を依頼されたという昴生は、年末に結婚を発表した粗品に楽屋でご祝儀を渡したそうだが、後から登場した粗品が「それがそのまま賞金になります」と昴生の祝儀が対決相手の芸人に渡る可能性を示唆したことで、昴生は「粗品には絶対に勝ってほしい」と応援体制になっていた。

 審査は観客投票と審査員によって行われる。気になる審査員1人目は吉本社員、そして2人目は平成ノブシコブシ・徳井。「徳井さんは後ろの席に座っています」と昴生が言うので振り向いてみても、徳井は一言も発さず存在感を示さない。私はかなり席が前だったこともあり、最後まで徳井を目視することは叶わなかった。

 そして対決芸人がステージに登場。パンプキンポテトフライ、ママタルト、真空ジェシカ 、トニーフランク、20世紀、茜250cc、オダウエダ、フースーヤ、ストレッチーズ、軟水、10億円、cacao、ゼロカラン、ロンゲストスプリングの次世代若手芸人総勢14組。お笑いファンには刺さりすぎるメンツだ。

 出番順を決めるための抽選会が開始されるも、この時点で少し時間が押している様子。「ボケ無しでお願いします!」と昴生は言うが、そんなことを言ったくらいでボケを控えるメンバーではない。全員思い思いのボケを繰り広げ、昴生を困らせ続けた。
 オダウエダ・植田が抽選の紙を引いたと思いきや、取り出したのはしわくちゃのティッシュ。「出番抽選の紙じゃなくて、楽屋のほんこんさんのシコティッシュでしたー!」と声を張り上げると、「そんなもの持ってくるな!」と総ツッコミを喰らっていた。このボケでもうチケット代を回収できたと思うほどの満足度だった。
 抽選が後半に差し掛かるとトニーフランクが引く番になり、箱に手を入れ取り出したのはコンドーム。ボケを用意しておらず、周りがボケるのを見て焦って財布から取り出したそうで、"財布にコンドームが入っている"という事実を「キモすぎる!」と周囲からイジられることとなっていた。

 トップバッターは茜250cc。よしもと漫才劇場のメンバーで、まだ結成1年。ほとんどの人に存在を知られていないアウェイな東京という地で、トップバッターにも関わらず爆笑をかっさらった。ツッコミが「そこ?」というポイントばかり突いてくるのが面白い。少しの違和感を残したボケをして、その違和感をしっかり刺すが肝心なボケは放りっぱなしというのが斬新かつ気持ちいいスタイルだ。スタイルを理解してくると、このボケに対してはどんなツッコミをするんだ……!? とワクワクしてしまう、非常に楽しい漫才である。

 ここからは私が特に面白い! と思ったコンビのみ感想を書いていく。

 まずはママタルト。もう大人気と言っても過言ではないコンビだろう。大鶴肥満のデカさは生で見ると物凄く迫力があり、遠近感が狂ったのか?と思うほど舞台のスペースを独占してしまう。ルミネtheよしもとのステージを狭いと感じたのは後にも先にも大鶴肥満を見たときだけであろう。
 ネタは「マクドナルド」。こんなに面白いネタがあるのかというほどの大爆笑で、私もマスクのせいで酸欠になってしまうほど笑った。やはり檜原のツッコミがたまらない。声の通りが桁違いで、会場がバカウケしていてもハッキリと声が聞こえてくる。近くで見るとじわじわ汗をかいてくる大鶴肥満の様子が見られるのも良いところだ。

 続いて軟水。今年のM-1グランプリで存在を認識したコンビなのだが、コントが抜群に面白かった。もうこのボケがピークだろうと思っても、どんどんそれを超えるボケを放出してくる。ボケ・大川内の飄々とした感じが、より一層混沌を極めていて全ボケで爆笑をかっさらっていた。中でも先生のカーディガンを引っ張りながら投球フォームの確認をしているくだりではひっくり返って笑ってしまった。私は漫才派なのであまり普段コントは見ないが、最近見たコントの中で1番面白かったと感じる。軟水を見るためだけに劇場に足を運ぼうかと思うくらいだ。

 続いてフースーヤ。一発屋として旬を終えたかと思われたが、どんどん進化を遂げ最近また期待値が高まっているコンビ。M-1グランプリ2021の準々決勝で披露した「料理番組」のネタをこの場でも披露したのだが、導入部の「料理番組がやりたいんですよ」というセリフだけで会場は大爆笑。会場にいた全員が(中華コレクションだ…)と確信したからこその爆発が起き、観客のお笑いオタクっぷりがうかがえた。"回鍋肉のロングスカート"が優勝した時の拍手たるや、感動に近いものであった。

 続いてオダウエダ。M-1グランプリ2019の決勝観覧に行った人々が言う「ミルクボーイで後ろからの笑いの風圧を感じた」という感想を、私はこの時オダウエダに抱いた。本当に凄かった。凄いと言うより、もうおぞましいの域に近い。ルミネが揺れていたなんて言葉では言い表せないくらい、東京が揺れていたと言っても過言ではなかった。
 掴みで小田が叫んだ「うわぁ〜! 反社の人やぁ〜!」だけで会場は大爆発。小田の声はどうしてあんなにも良い声なのだろう。あんな声でそんなことを言われたら笑うほかない。不可抗力だ。オダウエダの魅力はぶっ飛んだ設定のコントだが、THE Wでの彼女らは随分一般視聴者に寄せたネタをしていたのだと感じた。可笑しすぎる。チラチラと植田が着ていたド派手なキラキラドレスが見えていたのだが、それを使うのはほんの一瞬で、けれどその一瞬にとんでもない爆発力がある不思議なドレスだった。
「時間が余ったのでもう一本やります!」と始まったコントは「借り物競走」というシンプルなショートコントだったが、そのたった一撃で会場を揺らす爆発力があった。この時点で私は笑いすぎて頭が痛くなった。

 続いて真空ジェシカだが、彼らは凄い。完全に客層を理解していて、客が何を求めているかを瞬時に当ててくる。東京ホテイソンがやっている、サンパチマイクの位置をズラして「い〜やまえだまえだの位置!」「い〜や囲碁将棋の位置!」などと例える掴みをオマージュして披露したが、それが「い〜やTCクラクションの位置!」。これで大爆発が起きる会場、どうなっているんだ? この掴みでルミネが揺れることなんて未だかつてなかったであろう。M-1グランプリ2021の決勝を終えて間もない公演で、初めて生で真空ジェシカを見るという観客もいただろうが、この日の彼らは良い意味でいつも通り。非吉本の楽しい地下ライブを彷彿とさせるパフォーマンスだった。
 M-1決勝YouTubeのコメント欄に「頭の隅にある知識をくすぐられている感じで気持ちが良い」と書かれていたが、彼らのネタは本当にその通りである。「屈葬」なんて単語は久しぶりに聞いたが、確かに誰の頭の中にも置いてあった言葉だろう。ゆるっとオチを迎え、とても楽しいネタだった。

 続いてパンプキンポテトフライ。安定して面白い。M-1準々決勝のネタで何度も何度も繰り返し見た覚えがあるのに、新鮮に大口を開けて笑ってしまった。こちらも谷の声が良い。声が良いとやはり何を言っても面白いが、谷に関してはトーンや間も完璧でそりゃ笑うしかないわというツッコミである。山名の感じも、なんだろう、言い表せないが、とにかく何か面白い雰囲気を醸し出しているし、実際にちゃんと面白い。ずるい。負けた気になった。

 最後に粗品。この勝負をふっかけた張本人である。とてつもない毛量でパジャマを着ている粗品を久しぶりに見た。このメンツに1人で挑むだなんて流石ギャンブラーと思っていたが、それはもうしっかり面白い。本気のネタで挑んでいた。フリップの途中に"NGKの香盤表"のくだりがあるのだが、それがこのライブの最大瞬間風速だったのではないだろうか。内容は伏せるが、出演者の名前を並べ「おもんなすぎる! こんなん1000円でも行かんわ!」と叫ぶ粗品で会場が揺れていた。のちに昴生は「あれで笑った皆さんも悪いですからね」とチクリ。間違いない。

 全組が終了し、集計タイムへ。入場の際に配られたアンケート用紙に記入し、それをスタッフが回収に来るスタイルなのだが、スタッフが持っているのは虫取り網。ブロックの中央に座っている観客に向け虫取り網を伸ばしてくる。昴生いわく「これが吉本が必死に考え出した"1番効率的な集計方法"です」とのこと。もっと他にあるだろとツッコミたくなってしまったが、実際に目の前に虫取り網が伸びてくると確かに紙を入れやすいなと感じてもいた。小学校の運動会を思い出した。ちなみに私が投票したのは、ママタルト、軟水、オダウエダである。

 集計している間に出演者での大喜利タイムへ。このメンツでの大喜利を見られるなんて思ってもいなかったので、私は粗品への感謝が止まらなかった。あまりに私たちの求めることを理解しすぎている。最高だ。ありがとう。
 ステージにまずは粗品が登場。続いて真空ジェシカ・川北が出てくるも、どこに座ればよいのか分からず一旦退場。大喜利のお題は決まっていなかったが、この時に昴生が発した「川北くん大丈夫?」がそのままお題となることに。昴生が「川北くん大丈夫?」と聞いた後に回答するという笑点スタイルの大喜利となった。
 ここでママタルト・檜原が「川北くんは知りませんが、ダイヤモンドの野澤さんは今日退院しましたね〜」と柔和な笑みで回答。会場は大爆笑だったが、昴生は「ダイヤモンド入院してたん?」とポカンとしてしまう。若手芸人事情を知らない昴生は、回答しようと手を挙げている芸人に「君は誰や?」と聞いてしまったり、その場についていくのに必死な様子だった。

 スペースの関係でステージ上に立てるのは10名ほど。ある程度回答した芸人は袖で待機している芸人と入れ替わるのだが、粗品と入れ替わりで出てきたのはcacao・高橋。ここでも昴生が「君は誰や?」と聞き、高橋が「cacaoの高橋です」と丁寧に答えると、それを見ていた川北がお題チェンジの際に「cacaoの高橋です、みたいに言うな」を提案し、またまたそれがそのまま採用されることに。最高のライブ感である。
 後半に進むにつれお題と回答がどんどんグチャグチャになっていくのだが、粗品が「Wordで書いた藤原弘、」という「藤原弘、」の下に波線が引かれたフリップを出すと、これまた昴生はポカン。換気休憩中に「若者の話や例えについていけない」「霜降りミキXITでもポケモンの話題に置いていかれる」と話していた昴生が、実際に置いていかれる場面を目撃することが出来た観客は大爆笑だった。
 集計が終了したというところで、川北が「ケビンスを呼んだはずなのに、警備員が来ちゃった。警備員ッスって言っちゃったんや〜」と回答。これはママタルトM-1準々決勝ネタにある「4ケースって頼もうとしたのに4京ッスって言っちゃったんや〜」のオマージュで、その回答を聞いた檜原は瞬時に「一本くらい電話くれよな〜!」と叫び、会場は大盛り上がり。まず川北が"ケビンス"という単語を出した時点で会場がざわついていたので、私はそこで客の大半がラジ父(真空ジェシカのラジオ父ちゃん、Podcast)リスナーだなと確信した。チケット即完の吉本ライブでこんなに他事務所芸人を愛する客たちが集まっている事実がもう面白かった。

 そしてようやく結果発表。1位は真空ジェシカ。2位はパンプキンポテトフライ。順当な順位だ。だが私はオダウエダが圧倒的だったと感じていたので、オダウエダが粗品に勝たないとこのライブは全部嘘だと思っていた。なんとか呼ばれてくれと願っていると、3位はオダウエダ。3組はそれぞれ台に置かれたお金を10万円ずつ受け取った。
 そして4位が見事、粗品。悲鳴に雄叫びを上げながらステージ上に置かれたお金に駆け寄っていく。30万円の損失で110万円は死守することが出来たが、勝手に勝負を仕掛けて勝手に30万円も損をしているという事実は変わらない。昴生には「ずっと何してんねん」と言われていた。最後は「ほんまに面白かった。負けました。おめでとう!」と上位3組を称賛した。

 ちなみに5位以下の順位も昴生から発表され、5位はママタルト。舞台袖から大鶴肥満の「うわー!」という叫び声が聞こえてくる。6位のフースーヤは名前を呼ばれると、袖からは「あーん」「いやーん」とセクシーな声が。すかさず粗品が「桃鉄のRボタンか!」とツッコむとその場は大爆笑。後日その場にいた芸人のラジオでは粗品のこのツッコミを喰らったという感想が相次いだ。確かに笑いを通り越して感心までもをしてしまう瞬発力だった。

 このライブはとにかく豪華なネタライブ。チケットの値段的にも開演時間的にも、1時間半公演の予定だったのだろうが、終演後に時計を見ると2時間半も経過していた。このメンツのネタ&大喜利ライブが3000円で2時間半。破格すぎる。今をときめく、今後賞レースを沸かせるであろう芸人たちが、今出せる1番強いネタで勝負に挑んでいた最高のライブだった。私の2022年開幕ライブがこのライブで本当に良かったと感じる。また粗品が最強若手芸人たちにギャンブルを挑む日が来るならば、是非その時も見届けたい。先輩を相手に戦う様子も見てみたいと感じた。

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