見出し画像

この世界は「糞」なんかじゃない。この世界は、すばらしい――『アイドル勉強できなさすぎ問題』について



話題となったブログ


先日、こんなブログがtwitterのトレンドにあがりました。

アイドルの仕事を辞めた。この世界は本当に糞。ファンも糞。「推し」は糞。
https://anond.hatelabo.jp/20210628015845

そんなに長い記事ではないので、さっと目を通していただきたいのですが、ざっくり説明すると、

「男性アイドルと女性アイドル、両方の舞台演出とかマネージャーとかをやっていた。」筆者による、『アイドル勉強できなさすぎ問題』が書かれた記事です。

ひとつ付け加えるなら、筆者は匿名でこの記事を公開しています。よって、すべてが嘘の可能性もありますので、そこを踏まえてご覧ください。

筆者はアイドルの深刻な学力低下に際しての問題点を挙げ、最後にこう締めくくります。

『多くの場合、お前達の推し活が作り上げるのは、かけ算もできない、自分の名前も漢字で書けない、歌って踊れる学習障害者だ。』

つまり、アイドルが勉強できないのはファンのせいだと結論付けたのです。



横暴な結論でかすんだ真実

この記事の後味の悪さは、救いがないからです。勉強のできないアイドルが、「悪い大人達の最高のカモ」にされている現実を突きつけるばかりで、それじゃファンになにができるのか。その答えは書いていません。探させる気もない文章です。言葉遣いも悪い。ただただ、「悪いのはお前達だ、お前達が悪いんだ」と呪いのように繰り返して終わる。

その救いのない文章によって、記事の論旨である「アイドルビジネスの闇」がかすんでしまいました。

もし冷静に、『アイドル勉強できなさすぎ問題』を白日の下に晒したのなら、業界の発展やファンの意識を変えるきっかけになったかもしれない内容です。なのに、文章の荒さから、みっともない記事になっている。とても惜しいです。

でも、本人に業界を良くしようなんて思いはなかったのかもしれません。行間から、ぽろぽろと嘆きのようなものを感じます。勝手な推測ですが、誰かに責任を転嫁しないと耐えられなかったのではないでしょうか。強い言葉は、虚勢。弱い心を隠して、あえてあんな乱暴に書いた気がしてなりません。そう考えると、同情心すらわいてきます。

けど、です。

筆者は、記事内で一度だけですが、アイドルを「やつら」と書いています

たとえ今は芸能界から身を引いていたとしても、憎むべきファンだけでなく、ともに歩んできたアイドルをそうやって見下すような書き方ができてしまう。そこにこそ、業界の闇が隠れているように思います。



アイドルビジネスの闇


暴言によりかすんだ、「アイドルビジネスの闇」についてですが、記事の文章を引用します。

なあ、芸能界を引退して、いい歳して、かけ算も出来ないような人間が急に世界に投げ出された時、面倒を見る人間がいるのか?
顔もそこそこ良くて芸能界に繋がりがある、学のない無職って、誰が利用したがると思う?
悪い大人達の最高のカモだよ。いくらでも騙せるよ。だって1人じゃ書類も読めねえんだからな。笑えるだろ。

この文章を信じるなら、いまも大人達のカモにされるアイドルが大量生産されています。そしてそれを防ぐことができていない。

まず言えるのは、ファンにはどうしようもない問題です。

ファンはアイドルとしての姿を応援するのであって、プライベートまでは踏み込めません。踏み込んではいけないと思います。「学び」の部分はとてもプライベートです。ひとりの人生を左右する大事な要素です。

そんな踏み込んだ場所を管理するのが運営であり、親ではないでしょうか。

もし運営がそこまで責任をもてないというのなら、そもそもアイドルビジネスをやるべきではありません。ひとりの人間をあずかる覚悟もなく、ただ甘い蜜を吸いたいがためにひとりの人間の人生を背負うのなら、その罪深さを重く知るべきです。

そしてその責任を転嫁する罪を恥ずべきです。転嫁している限り、前進はあり得ず、常に同じ失敗を繰り返すだけですから。



ファンにできること


推しが苦しんでいるとき、ファンって、なにができると思いますか。なにもできないんです。隣で支えることも、一緒に苦しむことも、ゆっくり話を聞くことすらできない。推しが苦しめば苦しむほど、もどかしいぐらいの無力さを感じるんです。

今回の学力低下の件にしても、「ああ、そうなのね。まあ自業自得だよね」と切り捨てるファンは少ないと思います。多くのファンは、どうすればいいんだろうと頭を悩ませるのではないでしょうか。なんとかそこから救いたいとも思うはずです。

でも、そこでぶつかるんです。自分の無力さに。だから運営を信じるんです。信じるしかないんです。隣で一緒に苦しむ苦労もあると思いますが、隣で一緒に苦しめない苦悩もあるんです。

ファンはどこまでいってもファン。踏み込めない場所がある。そこを運営に任せているのに、その運営が相手にすべき「敵」を間違ってしまったら、いったい誰がアイドルを守るんですか。

誰も「推し」が不幸になることなんて願っていません。できることなら守りたい。その意識はアイドルを管理する運営も同じはずです。同じならば、敵対関係を作らず、同じ方向を向いて進めないでしょうか。

どうかファンの願いを誤解して、アイドルをつぶさないでください。



この世界は「糞」なんかじゃない


アイドルビジネスの根幹にあるのは、人と人のつながりです。

ファンの願いは、推しの幸せです。きれいごとじゃありません。真実です。それは地下アイドルであろうが、国民的アイドルであろうが変わりません。好きな人の幸せを願わない人がどこにいますか。

推しの幸せを願うファンがいる。その願いを受けて輝くアイドルがいる。そんな世界を、「糞」だと言い捨てたくはありません。

アイドルの世界は、人と人のつながりを感じる「すばらしい世界」です。


運営はアイドルなくして成り立ちません。アイドルも運営がなければ活動できない。そしてファンは、運営の管理のもとで活動するアイドルを応援する。お互いが支え合う関係でこそあれ、喧嘩する相手ではありません。

支えっていきませんか。

支え合って、人と人とのつながりを感じられる、運営のお仕事、アイドルの仕事、ファンの推し事、そのすべてがすばらしいと、胸を張って言える世界を作っていきませんか。


業界の方からすれば、そんなの夢物語、理想論だと切って捨てたくなる話かもしれません。それならそれで構いません。

ただ最後に言わせてください。

夢を見せる商売の人たちが、理想を求めなくてどうするんですか。
それで理想を、夢を求めるアイドルの卵と一緒に歩めるんですか。

このアイドル戦国時代。
すばらしい世界を求める人たちであふれることを願っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?