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極寒がもたらす、札幌味噌ラーメンとチャーハンの温もり。

「北海ラーメン札幌駅前店」2020年12年14日(月)

東向きの窓辺に、神々しいまでの朝日が降り注ぐ。
それは未来に向けた輝かしい暗示のようだ。
そうして外に出ると、裏腹に朝日は雪雲に透けていき、雪の猛威が視界を遮った。
まさにホワイトアウトの状態で、横殴りの風が緻密な雪を舞い上がらせ、少しずつ体温を奪っていった。
こういう日に限って、否、こういう日だからこそ、朝から外で立ち尽くす案件を抱え込むのは気のせいだろうか?
目的地に到着した時には、すでに指先も足先も感覚を失い、動かす程に痺れるような感覚に襲われる。
マスクの隙間から漏れる息が眼鏡レンズを曇らせた。
と思うと、世界がひび割れて見えた。
ひび割れた視界、それはある種幻想的で、世界の崩壊という禁断を覗きこんでしまった気分になった。
眼鏡を外してみる。
感覚を失った指で心許なくハンカチを持ち、眼鏡レンズを拭く。
氷状ゆえに拭くというよりも温める方が正しい方策だった。
それもそのはずである。
この日の最高気温はマイナス7度で、12月にしては尋常ではない。

そこから、約3時間だろうか?
まさしく氷の世界の只中で、ひたすら立ち尽くした。
ようやく立ち尽くす案件が終わると、足先が痛み過ぎて一歩を踏み出すことが気の遠くなるような作業に思えた。
さらに、極寒は途轍もない空腹を生む。
ゆっくりと歩み出し、札幌駅に到着した。
手と足の感覚は少しずつながら快癒しても、空腹は抑えようがない。
温かく満たされるものをゆっくりと歩み、探し求めた。

店の入口に置かれたメニューに、凍りついた胃袋が小躍りし、「味噌ラーメンとチャーハン」のセットメニューに心奪われた。
客のほとんどがスーツ姿で、昔ながらの中華料理店の風情である。
券売機で食券を購入し、慌ただしい女性スタッフに手渡した。
それにしても、妙に忙しない雰囲気だ。
しばらくして女性スタッフが慌ただしく「味噌ラーメンとチャーハン」のセットを運んできた。
日常ならば、そのボリュームの迫力に圧倒されるかもしれないが、この日ばかりは前のめりに食べ始めた。
ラーメンのスープは見た目ほど濃く感じないものの、体の暖まる実感を宿してゆく。
チャーハンも至ってスタンダードなのだが、2つの炭水化物が確実に失われた体力の回復の一助と成した。
外は極寒が続く。
白い季節の到来に嘆きながらも、温もり溢れる料理がいかに美味であるかも教えてくれる時期でもあるのだ…

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