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地理院地図の破線に希望を見出してはいけない

⚠️注意:
この記事は素人が山に入って死にかけた記事です!
山に慣れ親しんだ人からすると呆れ返るような内容が含まれますがご容赦ください!
あと絶対に真似しないでください!

まずは以下の記事をご覧ください

三行で纏めると?

日本最大の砂丘は
猿ヶ森砂丘では
ない

猿ヶ森砂丘を見に行きたい

猿ヶ森砂丘を見に行きたい。

というかあんな記事書いちゃったからには行かなくてはいけない。

あと、普通に下北半島に行きたい。東通村に行きたい。

まあ、尻屋崎(※12月〜3月)とか恐山(※11月〜4月)とか冬季閉鎖のところが多いし行くとしたら夏かな……


!?!?!?!?


佐井村、2023年3月29日

来ました。

ちょうど同じタイミングで青森〜脇野沢〜佐井を結ぶシィラインも廃止になるらしいのでついでに葬式しました。寂しい。

旅程を組む

さて、来たはいいものの旅程を確定させないといけない。(確定してなかっただけで行く前から考え始めています)

考えてみた結果、廃止になる野牛線、蒲野沢線および大減便になる尻屋線は同じ日に乗れることがわかった。

大利線はまあいいとして(おい)、猿ヶ森砂丘の北端である尻労へと向かう尻労線は翌日に回すかな……ただちょっと旅程が美しくないな……。

尻屋・尻労周辺の地形図(地理院地図より)

ここに道があれば、尻屋から尻労まで歩いて同じ日の尻労線に乗れるんだけど……。

拡大版(地理院地図より)

あるやんけ。

尻屋バス停、2023年3月30日

来ちゃった💕

突撃

地理院地図の実線部分

というわけで、尻屋周辺を少しぶらぶらした後、問題の地理院地図の破線へと突撃する。

実線部分は思いのほか歩きやすく、車の轍もあった。

なんだ、思ったより楽そう。勝ったなガハハ。

この先ちょっと登るらしいけどずっとこんな感じだといいな。

実線から破線に切り替わるあたり

あれ?道、なくね?

おかしいな、見失ったか……。

まあいいや。とりあえず進んでみよう。

道らしきもの

あった!

いやこれ獣道だわ。

道、どこ?

まあ大した坂ではないし、GPSで現在地もわかってるし、事前に読み込んである地理院地図の通り進めば迷うことはないだろう。

懸案事項は通信制限なことくらいかな。通信制限はゴミ。

あちゃー、沢だ。

沢の位置(地理院地図を加工して作成)

地理院地図だとこの沢沿いに登っていくことになってるけど、これ降りたら戻れなくなるやつだな。

一応沢に降りなくとも、それに沿って斜面を登れないわけではない。

うーん、どうしようか……。

出口戦略

さて、この時点で選択肢が尻労線の終バス(14時45分)に乗ることしかなかったわけではない。

尻屋着時点で11時で、尻屋から田名部へ戻る終バスの時刻が13時なので、この時点で引き返しても普通にこの日の宿泊地である田名部へと帰ることができた。

また、近くの桑畑山にはヤマレコがあったので、最悪下山くらいはできるだろ……という見通しはあった。

ただ、何よりこの時の筆者は地理院地図の破線を舐め腐っていたので、「別に大したことはないだろう」ととても軽い気持ちでいたし、なんならちょっとワクワクしていたし、装備もほとんど宿に置いてきてしまっていた。

そしてこの後、筆者は大いに後悔させられることになるのだった。

なんで登ったの?

坂、というか崖

助けてください。死にかけています。

登ってみたはいいものの下りられる気がしない。

これってあれだな、遭難。

今まで「四万十川の源流を見に行こうとして雪のある坂を登り、下りられなくなって遭難」という友人のエピソードを馬鹿にして笑ってたけど全力で謝罪したい。

僕も遭難しちゃった。助けてくれ。

そんな時、ふと足元を見ると……

ちっちゃな石灰岩

この辺の地質は石灰岩なので、こういうところでもちっちゃなカルスト地形を見ることができる。

こういうのを見ると、地質についてのある程度の知識を持っていてよかったなと実感する。

じゃあないんだよ。助けてくれ。

幸い藪や灌木のお陰でちょっと足を踏み外してもすぐに落ちることはないが、それでも余裕で落ちたら死ぬような場所である。

それでも今更下りることはできず、登った先に活路を見出すより他にない。

登るしかなかった

さて、筆者はこの時何も無策に登っていたわけではなかった。

赤矢印は筆者が実際に登った経路(地理院地図を加工して作成)

というのも、地形図を見る限りこの山は台地状になっているため、登ってさえしまえばあとは楽。

登りきってから桑畑山のヤマレコの通りに下山すれば生還できる。まあ通信制限だから今は見られないが。

ともかく、今は山を登りきった先にあるかもしれない登山道の存在に望みを賭けるしかない。

そう思って上を見上げる。

大岩

あれ無理じゃないか?

近くから見た大岩

とりあえず近くまで登ってみたが、これ無理じゃないか?

足を踏み外したら今度こそ死なないか?

死ぬかと思った

登った先は無駄に景色が良かった

登れちゃった。Chu! 健脚でごめん。

登れたはいいものの、ここまで来てしまったらいよいよ引き返せないな。

こんなところで写真を撮るな

今から考えても、よく自分は生きていたなと思う。


「死」というものに直面したとき、生き物というものは「死にたくない」という気持ちがふつふつと湧いてきたり、今までの思い出が走馬灯のように蘇ってきたり……

ということは特になく、「死にかけてて草」とゲラゲラ笑っていた。

なぜか電波が入ったのでツイートする

案外、それくらいのメンタリティの方が生き物というものは生き延びることができるのかもしれない。

ただ、脳内ではアドレナリンがドバドバ出ているのを感じたため、疲れを感じにくい一種の興奮状態にはあったのだと思う。本当にそれくらいだった。

そうこうしているうちに、急坂を登りきることに成功した。

右手と右膝

棘のある藪を強行突破したため、気が付くと手は傷だらけで、ズボンもズタズタに破れていた。

本当によく生きてたね君。

ひたすらに藪を漕ぐ

さて、登った先がほぼ平坦であるからと言って、その先すべて楽に進んだというわけではない。

登った先にあったのは、背丈ほどもある一面の藪だった。

前を見ても、
後ろを見ても藪

この藪がこの先ずっと続くのか……。

そう考えると気が滅入り、先程までドバドバと出ていたはずのアドレナリンも切れ始め、かわりに途轍もない疲労に襲われる。

それでも進むしかない。そう思って足に力を入れて前に進むが、藪に手こずり思うように進めない。

しまった、藪に足を取られた。

転んで、藪の中に情けなく倒れる。

ああ、起き上がる気力が湧かない。

そう思いながら、ふと仰向けになってみる。

藪の中から

散々歩くのを邪魔してきた藪が、今度はフカフカのベッドとなり、寝る手助けを
してくれる。

ああ、気持ちいい……。

この日は笑ってしまうくらいに晴れていたので、藪の中でもポカポカと暖かく、本当にこのまま眠ってしまおうかとすら思った。

それほどまでに気持ちが良かった。


だが、ここでポニャポニャしていても死ぬだけである。

そう思い直し、再び起き上がり藪を漕ぎ始めた筆者の前に、突然何かが見えた。

謎の道

これは……
道だ!

道だ。道があった。

しかもただの道ではない。車の轍のある道だ。

これがどういうことを意味するか。

生きて、帰れる。

体から再びへなへなと力が抜ける。

本当に、死ぬかと思った。


だが、冷静になって考えてみる。なぜこんなところにこんな道があるのだろうか?

赤矢印は筆者が実際に登った経路(地理院地図を加工して作成)

地理院地図を確認しても、この道は「破線」である。

筆者がこんな目に遭っているのは、地理院地図の破線に希望を見出したからである。

同じ破線なのにこんなにしっかりしてるのはおかしいだろ。

そう思ったが、とにかく死なないためには進むしかないので、筆者はその道を歩き始めた。


……うーん、こうも単調な道だとちょっとダレる。

そんなこと思ってる場合かとも言いたくなるが、生きて帰れる見込みが出て心に余裕が出てきたということなのであろう。

そういえば、遭難経験のある友人曰く、こういう時にはあの歌を歌うといいんだったな。

そういえばあいつ社会主義者だったわ。


そうして歩いていると、ふと見晴らしのよい場所に出た。

そこで筆者が見たものとは……

猿ヶ森砂丘

猿ヶ森砂丘だった。

うん、「猿ヶ森砂丘を見に行く」という当初の目的は達成!

よーし、あとは生きて帰るだけだ。


そんなあとは生きて帰るだけの筆者であったが、ひとつ心配なことがあった。

飲み水が尽きかけていたのである。

もともと舐め腐って麦茶をペットボトル一本しか持ってきていなかったので、水分の確保は死活問題であった。

このままだと脱水症状になってしまうおそれがある。

そう思ってふと道端を見る。

除雪されて纏められた雪

ああ、まだ3月末だから雪が溶け残ってるのか……。

……。

麦茶です(大嘘)

ヨシ!

あとは体温で溶かせば天然水になる。

このあと若干お腹の調子が悪かった気がするが、まあ気のせいだろう。

で、この道は結局何だったの?

さて、この道は一体どこに続いているのか。

程なくして見えてきた景色によって、筆者はその答えを知ることになる。

露天掘りの鉱山

その道は、鉱山へと繋がっていた。

尻屋鉱山(地理院地図を加工して作成)

この辺りの地質は石灰岩であると前に述べたが、山の反対側には石灰石鉱山である尻屋鉱山があるのだ。

筆者の歩いていた道は、尻屋鉱山の敷地の中へと続いていた。

おそらく鉱山関連の何かの道なのだろう。

……あれ?ってことはもう鉱山の敷地の中?つまみ出されるのでは?


……いや、つまみ出された方がいいのか。

立入禁止だった

つまみ出されました。

ここからどう帰るの?

無事車の通る道まで戻ってきたものの、ここを通るバスは先述の尻屋線なので、終バスは13時台である。

そして今は既に15時。

思わず、あの台詞が口からこぼれる。

「終バス……無くなっちゃいましたね……」


地理院地図を加工して作成

「待って!諦めるのはまだ早いよ!確かに尻屋線の終バスはもうないけど、8kmくらい歩いて野牛口バス停まで行くと18時台の野牛線の終バスに間に合う、野牛線は利用者が少なくてほぼ出入系統みたいなダイヤになってるからこの時間でもまだ終バスに間に合うんだ」


野牛口バス停


宿

こうして生きて帰ることに成功しましたとさ。バスオタクでよかった。

まとめ

地理院地図の破線に希望を見出してはいけないが、地理院地図の破線に命を救われることもある。


地図ねこ


⚠️注意:
この記事は素人が山に入って死にかけた記事です!
山に慣れ親しんだ人からすると呆れ返るような内容が含まれますが、どうかお気持ち表明はご容赦ください!
あと絶対に真似しないでください!大事なことなので2回言いました!

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