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💿『幻想交響曲』ベルリオーズ


指揮:ダニエル・バレンボイム
演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1984年
作曲:ベルリオーズ(1803〜1869)

【曲目】
1.『幻想交響曲 op.14』


ベルリオーズ『幻想交響曲』

▼ベルリオーズ『幻想交響曲』 指揮:レナード・バーンスタイン 演奏:フランス国立管弦楽団




生い立ち

ベルリオーズは1803年にフランス南部のドーフィネ地方で生を受けました。開業医だった父親はとても博識で息子にラテン語や数学、それに音楽の基礎知識までいろんなことを教えたといいます。またベルリオーズ自身はギターやフルートなどを習うなど、音楽に触れながら着々と育っていきました。

18歳の時、彼は家業を継ぐこともあり医科大学に進学します。ですが、そこで解剖学に苦手意識を覚えた彼は自身の進路について考えるようになりました。

「(あ~、明日も解剖の実習かぁ。やだなぁ。どうしようかなぁ。歯科医師にでも編入しようかなぁ。でも患者に指噛まれそうだなぁ)」

その頃、彼は趣味でよくオペラを観に行っていました。また時を同じくして、彼の通っていた医科大学が幸か不幸か閉鎖することになり、時間ができた彼は独自に作曲活動を始めて、その三年後にパリ音楽院へ入学することになりました。彼は23歳から本格的に音楽を学び始めることになりました。同時期の作曲家たちと比べるとかなり遅めの一歩になります。ですが、彼はローマ賞を目標にせっせと作曲を続けました。


運命の出会い

1827年、彼はパリでシェイクスピア劇団の「ハムレット」を観劇しました。その劇中でヒロインのオフィーリアを演じ、当時人気女優だったハリエット・スミスソンに一目で恋に落ちてしまいます。それから猛アタックの日々が始まります。手紙を何通も書いたり、面会を申し込むなど、その行動はストーカーの当落線上をひた走っていました。しかし想いは届くことなく、彼は失恋。心に深い痛手を負ってしまいます。ですが、転んでもタダでは起きないのがベルリオーズ。その失恋の傷みを作品に昇華させ、後世に残る名曲『幻想交響曲』を作り上げました。


幻想交響曲と標題音楽、そして…

この曲は五楽章構成になっており、それぞれに標題がつけられています。
第一楽章:夢と情熱
第二楽章:舞踏会
第三楽章:野の風景
第四楽章:断頭台への行進
第五楽章:ワルプルギスの夜の夢
(ワルプルギスの夜とはヨーロッパで4月30日の夜から翌日未明にかけて行われるお祭りのこと)

それまでは音楽というものは絶対音楽であり、音楽で音楽以外のものを表現するという手法は用いられていませんでした。ですがベートーヴェンが交響曲第6番≪田園≫で各楽章に標題をつけたことに端を発し、ベルリオーズはその流れを汲み取り自身の創作にあてました。そのような音楽を標題音楽といい、音楽で情景やイメージ、心情などを言葉による説明で付け加えることを意味します。この作品は標題音楽を確固たるものにしたという点で、長い音楽史の中におけるマイルストーン的な役割を果たすことにもなりました。

結果的に彼はこの曲で目標にしていたローマ賞を受賞。さらに、幸運の女神はまたしても彼に微笑み、この曲を作るきっかけとなった女優ハリエット・スミスソンと再会、そしてその勢いのまま見事ゴールインを果たすことになりました。

「(どうだ見たか、ボクの執念を。ようやく射止めたぞ。ああ、やっぱり君は美しい。君はなんて美しいんだ!)」
「(すごい見られてるわ。すっごい見られてる。目から手でも出てきそうなほどだわ。私がスリだったら、今なら身ぐるみごといけそうだわ)」


まとめ

『幻想交響曲』には、ベルリオーズの有り余る感情がそのまま五線譜に投げつけられたような、魂の震えと生々しさがあります。彼はその一つ一つに名前をつけて、作品という化身に仕立て上げました。彼に音楽があって本当によかったと思わずにはいられません。そして、その音楽が今日私たちの耳に届くことも、感謝せずにはいられません。ぜひ一度、彼の魂の震えに触れてみてはいかがでしょうか。


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