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気象予報士試験 学科 一般知識 大気の流れ

地球の受け取るエネルギーについて学習しました。
低緯度は高緯度に比べて太陽から受け取るエネルギーが大きいこと、そしてその受け取った熱を低緯度から高緯度に運ぶために海流や台風などがあることに触れました。
ハドレー循環などの大気の流れを今回は紹介します。試験にもよく出ています。

https://www.jma-net.go.jp/haneda-airport/weather_topics/rjtt_wt20130930.pdf
東京航空地方気象台第32号(2013年9月30日)p.1から抜粋

 大気の南北の動きとして、低緯度側から、ハドレー循環、フェレル循環、極循環があります。
 ハドレー循環と極循環は直接循環と呼ばれ、フェレル循環は間接循環と呼ばれています。
🟢ハドレー循環(直接循環)
 ジョージ・ハドレーさんが提唱しました。赤道付近で太陽光線によって温められた空気が上昇し緯度30度付近で下降する流れがあるということ。コリオリの力で高緯度から低緯度方向への風は偏東風になります。赤道付近の偏東風は貿易風と呼ばれます。
🟢極循環(直接循環)
 極付近の空気は放射冷却によって沈降して低緯度方向に流れ出た流れが緯度60度付近で上昇して極上空に戻る流れを極循環と言います。コリオリの力で地表付近では偏東風になり、極偏東風と呼ばれています。
🔵フェレル循環(間接循環)
 フェレル循環が観測される緯度30度から60度にかけては、相対的に気温が高い低緯度で上昇気流となり、相対的に気温が低い高緯度で上昇気流となるもので、ハドレー循環や極循環のように実際にある流れではありません。これは温帯低気圧による熱の運搬により統計上現れるもので、恒常的にこのような循環があるのではありません。

🟡寒帯前線
 極地方の冷え切った空気の低緯度への移動と、相対的に暖かい中緯度の空気がぶつかるところが寒帯前線です。前線とは性質の異なる空気が接するところを言います。
温帯低気圧の進行方向前面にできる温暖前線や進行方向後面にできる寒冷前線も高温湿潤空気と低温乾燥空気という異なった性質の空気が接したところにできます。

🟣亜熱帯ジェット気流 Subtropical jet stream
 大気が受ける力学を学んでからの方が理解が深まるのですが、紹介する順番が逆になってしまったと少々反省です。
 赤道付近の空気は地球の進行方向に合わせて動いています。地球の自転の速さは赤道上では時速1700kmというスピードです。地球の赤道付近の1周が約4万kmですから時速は24で割った数字です。
 回転している物体では、角運動量保存の法則に従います。回転している中心地点から遠くなるとスピードが遅くなるというものです。
(回転軸からの距離)✖️(速度)=一定
 亜熱帯ジェット気流が吹いているのは緯度で20〜30度付近となります。赤道に比べて緯度が高い地点は中心軸からの距離が短くなりますので、速度は増加します。
 亜熱帯ジェット気流が東向き(偏西風)になるのは気圧傾度力やコリオリの力などの説明が必要なのですが、ここでは触れず、別の機会に。
 亜熱帯ジェット気流は強い西風ということを覚えておきましょう。風速は80ノット以上にも達しています。実技試験では、高層天気図で強風軸を作図させる問題が出ることがあります。日本付近では2〜3本の強風軸がある場合があります。

🟡寒帯前線ジェット気流  Polar front jet stream
 寒帯前線付近は南北の温度傾度が大きくなっています。地表面の影響を受けない対流圏中層以上の高度では温度傾度が大きいところ、即ち気圧傾度が大きいところでは強い風が吹いています。この強い西風を寒帯前線ジェット気流と言います。風速は80ノット以上に達していることもあります。
 実技試験では亜熱帯ジェット気流のところで書いた通り強風軸の作図問題が出ることがあります。

対流圏界面高度は赤道付近が最も高く、高緯度に向かうにつれて低くなっていきます。ジェット気流は対流圏界面高度のやや下側の高度にあります。
 このため、亜熱帯ジェット気流の方が寒帯前線ジェット気流よりも高い高度にあります。

https://www.jma-net.go.jp/haneda-airport/weather_topics/rjtt_wt20120330.pdf
羽田空港 WEATHER TOPICS 定期号 第18号から 引用 

学科一般知識では、上述の知識で十分です。ただ、専門知識や実技試験では、気象衛星画像や高層天気図をもとに強風軸を解析して答案用紙に記入するという問題が出題されています。

対流圏界面の高度が低緯度ほど高いということが上図で復習できましたね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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