気象予報士試験対策 一般知識 過去問 中層大気
平成28年度第1回(第46回)学科 一般知識 問10
年平均した下部成層圏のエネルギーサイクルについて述べた正誤問題。
(1)下部成層圏は大気の成層が極めて安定であるため、対流圏内の擾乱が成層圏へ伝播して擾乱の運動エネルギーを生成することは稀である。❌
👉ここは迷いました。末尾の「稀である」が誤りなのか否か。
前段の「極めて安定」の記述が誤りと判断しました。元々、成層圏という名称は対流圏よりも上空に気温減率が小さく、高度が増すについて気温が上がる「安定した気層」であることから名付けられました。その後の観測や研究によって成層圏でもダイナミックな空気の流れがあることがわかってきました。よって誤りの箇所は「極めて」という記述ということでしょうか。
後段は、対流圏内のプラネタリー波が伝播して発生する成層圏突然昇温のことを言っているのだと思いました。「稀」という頻度を示す言葉だと判断がつきにくいですね。文脈全体で判断して誤りの記述という判断になると思います。
成層圏が発見されたとき、この層では上空に向かって気温が高くなるため安定しているとされていました。安定しているということで当初成層圏と名づけられましたが、その後の研究によって、成層圏でも風が吹いていることなどがわかるようになりました。
さて、上記問題文の後段にある対流圏内の擾乱が成層圏へ伝播する現象は対流圏でのプラネタリー波が伝播して「成層圏突然昇温」が発生します。成層圏突然昇温は成層圏の上層から下層に向けて昇温現象が観測されます。この成層圏突然昇温は年中発生しているわけではないので、稀であるというのは正しいのかもしれません。
(2)下部成層圏における擾乱の運動エネルギーの半分以上は、傾圧不安定波による有効位置エネルギーの変換によって生成される。❌
👉傾圧不安定波による・・・は対流圏の中緯度帯で発生している現象です。成層圏ではこのような現象はありません。
(3)下部成層圏の気温は、赤道付近で最も高く、極域で最も低い。この水平温度傾度により下部成層圏で有効位置エネルギーが生成される。❌
👉下部成層圏の気温は、赤道付近で最も低くなります。年平均なので、極域で最も低いとは必ずしも言えません。夏半球の極上空は暖かく、冬半球の極上空は寒い。年平均の資料が無いか探しましたが、ありませんでした。逆に、1月と7月の各層の気温分布は見つけることができたのですが。色々書いてきましたが結論として「赤道付近で最も高く」の記述を見た瞬間に「誤」を条件反射で選択できるようにしましょう。
成層圏準2年周期振動、ブリューワー・ドブソン循環なども復習しておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。